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あの日、私は「何も起こらない」を守った——人知れず安全を守る「役割」

投稿コンテスト「#子どもの安全を考える」(こくみん共済 coop ×note)に参加しています。

これは、ある年の5月、
私が「PTAの旗持ち当番」で1回だけ交差点に立ったときの話です。

結論から言えば、
その日は、特に何も起きませんでした。

旗を手にして、交差点に立つ。

黄色い安全帽をかぶった子どもたちがやってきて、
手をあげて、横断歩道を渡っていく。

それだけです。

それだけのことでした。

誰かにお礼を言われたわけでもないし、
子どもと話をした記憶もありません。

今、このエッセイを書くために、

劇的なことは起こらなかったか。
感動的なエピソードはないか。

丹念に、脳内をサーチしましたが、
とりたてて特別なことはなかったと断言できます。

でも、私は、改めて思うのです。

それでも。

——いや。

だからこそ。

その日は、旗持ち当番が
「一番うまくいった日」だった、と。

自分が旗を持って立った、その役割を、
完璧に果たせたのだ、と。

「何も起こらないこと」のありがたさ

その日、私が立っていたのは、
JRの駅と学校を結ぶ、あまり広くはない、
だけど、交通量は多い、そんな道でした。

旗持ち当番をやったのは、たった1回、
そのときだけです。

たった1日の、ほんのわずかの時間。

でも、たしかに、そこには「役割」がありました。

「何かが起きる前に、そこにいる」
「何も起こらないように、ただ見ている」

——見守るというのは、
「何かをすること」ではないのかもしれません。

なぜ「7歳の5月」は事故が多いのか?

統計を見ると、
子どもの交通事故は「7歳」がもっとも多く、
中でも「5月」に集中しているそうです。

なぜなのでしょう?

・入学から約1か月が経ち、慣れてきた頃
・集団登校にも慣れ、大人の見守りが減る
・周囲の大人も、つい“油断”しやすい
・生活リズムの変化(運動会の練習など)
・気候がよく、気持ちも緩む季節
・仲良くなった友達を追いかけて、左右確認を忘れる——など

要するに、「みんなが油断しやすいタイミング」が、
ちょうどこの時期にやってくるんですね。

「7歳」ってどんな年齢?

「7歳」は“小学生1年生”にあたる年齢ですが、
そもそも、この年齢の子どもたちって、
本当に「ひとりで安全に歩ける」と思いますか?

大人の目線では「もう小学生でしょ」と思いがちですが、
彼らはまだ、「通学」という名の社会デビューをしたばかり。
地図も距離感も、空間認知も、完全じゃない。

「曲がり角を曲がる」
「歩道をまっすぐ歩く」
それすら、毎回ドキドキしながらやっている子もいます。

見た目にはわかりませんが、
「がんばって大人のふりをしている子どもたち」なんです。

子どもを「見守る」ことの意味

そんな彼らの横で、私はただ見ていました。

旗を持って、何も言わず、じっと立っていました。

でも、じっと見ているということは、
見られている側には、伝わっているのかもしれません。

私自身も、思い返せば、
子どものころ、見守りの大人が近くにいるだけで、
なんとなく“安心感”をもらっていた気がします。

ときには、何もしない誰かの「存在」が、
最大のセーフティネットになることもあるんですね。

静かな街の風景を守っているもの

あの日、私は何もしていないように見えて、
たしかに「安全な朝」を支えていたのだと思います。

だから、誰も気づかないまま、
「何も起きなかった」ことが、
一番の成果だったのです。

それは、「誇っていいできごと」だったのだと、
今さらながら、胸を張っています。

もしも次に、旗を持つ機会があったら。

たとえまた、「何も起こらなかった」としても、
それは、私が「何も起こらない」を死守したから!

——今日も、どこかで、旗を持って立っている人がいる。

その静かな存在が、
今日もきっと、子どもたちの安全を支えている。

<あとがき>
「#子どもの安全を考える」というハッシュタグを見て、
私の記憶にあった、たった1回の当番のことを思い出しました。

そして、すでに忘れかけていた「旗持ちの記憶」を、
自分の中で再定義することができました。

子どもを“見守る”という行為の、
静かだけど確かな力を、改めて感じています。

と同時に。

朝の「旗持ち当番」に限らず、

「何も起こらないことを守る」役割というのは、
確かにあるのです。

「無事」というのは、「何も無かった」ということ。
その裏側には、人知れず「無事」を守る人の存在があります。

これを読んでいる人の、自分では気づいていない「誇り」を
呼び覚ますことができたら嬉しいです。

たくさんのnoteの中から、私の記事を見つけて読んでいただき、
ありがとうございました。
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