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適材適所は「配置」で終わらない―社員の強みが生きる組織風土のつくり

【この記事を書いた人】
開業18年目の社会保険労務士/国家資格キャリアコンサルタント/
産業カウンセラー/コーチングコーチ。
労務・キャリア・心の支援の3つの視点から、
働く人と会社のよりよい関係づくりをお手伝いしています。

今日は、ある大学に研修に行きました。

そこで、中小企業診断士の先生とキャリアコンサルタントの先生のお話で勉強しました。

そのまとめです。

「この社員には、どの仕事が向いているのだろう」

採用した社員が思うように力を発揮できていないとき、経営者や管理職は配置の問題を考えます。

営業よりも事務が向いているのかもしれない。

現場よりも企画のほうが力を発揮できるのかもしれない。

もっと責任のある仕事を任せたほうが成長するかもしれない。

本人の強みを見つけ、適切な仕事を任せることは大切です。

ただ、今回のお話を聞きながら私が感じたのは、

適材適所は、社員と仕事を組み合わせるだけでは完成しないということでした。

同じ仕事を任せても、組織風土によって、その人が発揮できる力は変わります。

同じ仕事を繰り返せる人と、変化を求める人

職場には、決められた手順を守り、同じ仕事を丁寧に繰り返すことが得意な人がいます。

一方で、
同じ仕事が続くと意欲を失い、
新しい方法を考えたり、
変化を起こしたりすることに力を発揮する人もいます。

どちらが優れているという話ではありません。

安定した品質を守る仕事では、
丁寧に繰り返せる人の力が欠かせません。

新しい事業や業務改善では、変化を求める人の発想や行動力が必要になります。

問題が起こるのは、会社が一つのタイプだけを「望ましい社員」として評価してしまうときです。

慎重な社員に対して「行動が遅い」と評価する。

行動の早い社員に対して「落ち着きがない」と評価する。

率直に意見を言う社員に対して「協調性がない」と判断する。

周囲に配慮する社員に対して「自分の意見がない」と見る。

本人の強みが、見る人によって欠点へ置き換えられてしまいます。

この状態では、社員の個性を分析しても、適材適所にはつながりません。

人間関係のすれ違いは、感じ方の違いから生まれる


職場の人間関係で起きるトラブルの多くは、どちらかが悪いというよりも、大切にしているものの違いから始まります。

ある人は、正しいと思うことを率直に伝えることが、組織への貢献だと考えます。

別の人は、正しさよりも相手の気持ちや場の空気を大切にします。

ある人は、迷っている時間があるなら早く動くべきだと考えます。

別の人は、失敗を防ぐために、事前に丁寧に確認することを重視します。

両者が自分の基準だけで相手を見ると、

「どうして、はっきり言わないのか」
「どうして、そんな言い方をするのか」
「なぜ、すぐに行動しないのか」
「なぜ、確認せずに進めてしまうのか」

という不満に変わります。

しかし、違いをあらかじめ理解していれば、見方は変わります。

慎重な人には、検討する時間と判断材料を渡す。

行動の早い人には、任せる範囲と確認する地点を決める。

率直な人には、伝える順番と言葉の選び方を共有する。

周囲に配慮する人には、会議の前に意見を聞いておく。

個性を分析する目的は、人に名前を付けることではありません。

相手が力を発揮しやすい伝え方、任せ方、関わり方を考えるために使うものだと思います。

成果だけを追っても、良い組織にはならない


会社は事業を続けるために、成果を出す必要があります。

そのため、人間関係が良いだけでは十分ではありません。

誰も厳しいことを言わず、
問題が起きても踏み込まず、
責任の所在を曖昧にする。

表面的には穏やかでも、仕事の質が上がらなければ、会社は続きません。

一方で、成果だけを追い、数字が達成できればよいという職場にも限界があります。

困っている人がいても助けない。
ミスが起きたら犯人を探す。
弱音や相談を能力不足と捉える。
自分の立場を守るために情報を抱える。

短期的には数字が出ても、社員は疲弊し、協力する力を失っていきます。

強い組織に必要なのは、成果か人間関係かの二者択一ではありません。

成果に向かって率直に話し合えること。
困ったときに「助けてほしい」と言えること。
問題が起きたときに、誰が悪いかよりも、何を改善するかを考えられること。

この二つが両立して、初めて組織は前へ進みます。

良い組織ほど、自分にも原因を探せる

今回のお話の中で、特に印象に残ったのが、良い組織と悪い組織における社員の考え方の違いです。

組織に問題が起きたとき、

「あの人が悪い」
「会社が悪い」
「上司が分かってくれない」

と、原因をすべて周囲に置いてしまうと、改善は止まります。

良い組織では、

「自分の説明が足りなかったかもしれない」
「相手が理解しやすい伝え方だっただろうか」
「もっと早く相談できなかっただろうか」

と、自分が変えられる部分も考えます。

もちろん、何でも本人の責任にすればよいわけではありません。

会社側の仕組みや上司の関わり方に問題があることもあります。立場の弱い社員だけに反省を求めれば、さらに声を上げにくい職場になります。

大切なのは、誰か一人を責めることではなく、関係する人がそれぞれ、自分の変えられる部分を持ち寄ることです。

経営理念が、個性の違いをつなぐ

社員の個性を尊重するだけでは、組織は一つにまとまりません。

考え方も、得意なことも、仕事の進め方も違う人たちが一緒に働くためには、共通する判断基準が必要です。

その役割を担うのが、経営理念や会社の目的です。

意見が対立したときに、

「どちらが正しいか」

だけで決めるのではなく、

「会社が大切にしていることに近いのは、どちらか」
「お客様や働く人にとって、より良い結果につながるのは何か」
「私たちは、どのような会社をつくりたいのか」

に立ち返ります。

経営理念は、額に入れて掲示するための言葉ではありません。

採用、配置、評価、育成、会議、日々の声かけまで、一つひとつの判断をつなぐための基準です。

理念が伝わっていない状態で制度だけを整えても、人事評価や教育制度は十分に機能しません。

制度を動かすのは、人です。
人の判断を支えるのが、組織風土です。
そして組織風土の土台になるのが、日々語られる経営理念です。

明日から確認したい3つのこと

社員の個性を組織の力に変えるために、最初から大きな制度改革をする必要はありません。

最初に確認したいのは、次の3つです。

1つ目は、会社が評価している社員像が、一つのタイプに偏っていないか。

2つ目は、社員が困ったときに「助けてください」と言える雰囲気があるか。

3つ目は、成果と人間関係のどちらか一方だけを優先していないか。

会議や面談では、次のように聞いてみてください。

「あなたが一番力を発揮できるのは、どのような仕事ですか」

「仕事を進めるとき、事前に共有してほしいことはありますか」

「今の職場で、相談しにくいと感じる場面はありますか」

答えをすぐに評価せず、まず受け止めることが大切です。

社員の個性は、直すべき欠点ではありません。

ただし、個性だから何をしてもよいという話でもありません。

一人ひとりの違いを理解したうえで、会社の目的に向かって、どのように力を生かすかを考える。そこに適材適所の本当の意味があるのだと思います。

適材適所は、人を選ぶことではなく、強みが生きる場所をつくること。

社員が変わるのを待つだけでは、組織は変わりません。

任せ方、伝え方、評価の仕方、助けを求めたときの受け止め方。日々の小さな関わりの積み重ねが、社員の強みを組織の力へ変えていきます。


まとめ

適材適所を実現するためには、社員の能力や性格を知るだけでなく、その強みを発揮できる組織風土が必要です。

成果だけを重視すれば人が疲弊し、人間関係だけを重視すれば事業が前へ進まなくなることがあります。

目指したいのは、成果に向かって率直に話し合いながら、困ったときには助けを求められる組織です。

社員の個性は、会社にとって扱いにくい違いではありません。異なる強みを持つ人たちが、同じ目的に向かうための大切な資源です。

すべてを一度に変える必要はありません。

一人の社員への声のかけ方や、会議での問いかけを少し変えるところから、組織風土は動き始めます。

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smile 社労士・キャリアコンサルタント・産業カウンセラー・コーチ、複数の視点から一つの悩みを見るよう心がけています。この記事が、貴方や会社の判断を少し楽にできていたら幸いです。