統合された新しい補助金、社労士が気づいた"見落としやすい約束ごと"
開業18年目・42歳の社会保険労務士です。国家資格キャリアコンサルタント/産業カウンセラー/コーチングコーチとしても活動し、労務・キャリア・心の支援を通じて「働く人」と「会社」のよりよい関係づくりを発信しています。制度の話も、できるだけ現場の言葉でお伝えします。
「補助金、うちも使えるのかな」——その前に知ってほしいこと
最近、経営者の方から「補助金、うちも対象になるのかな」というご相談が少しずつ増えています。
2026年6月末に第1回の公募要領が公開された「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」。
実はこれ、これまでの「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が一つに統合された、新しい大型の補助金です。
ただ、私が社労士としてお伝えしたいのは、「金額が大きい」という話だけではありません。
この補助金には、**後からじわじわ効いてくる"労務の宿題"**が、しっかり組み込まれているんです。
現場でよく聞くのは「入口」より「その後」の不安
補助金というと、機械を買う、システムを入れる、新しい商品をつくる——そんな「攻め」の部分に目が向きがちです。
実際、事業計画づくりは税理士さんや中小企業診断士さんが力を発揮する場面です。
一方で、こんなお声もよく耳にします。
「採択されたのはいいけれど、後で返還って本当にあるの?」
「賃上げって、結局どのくらい上げれば足りるの?」
「よく分からないまま申請して、あとで困らない?」
不安の正体は、たいてい「入口」ではなく「その後の約束」にあります。
労務の視点で見た、この補助金の"約束ごと"
この補助金は、3〜5年の事業計画に取り組むことが前提です。
そして、いくつかの要件が付いています。労務に関わる主なものを、やさしく整理してみます。
賃上げの要件:計画期間中、従業員一人あたりの給与支給総額を年平均3.5%以上増やすこと
事業場内の最低賃金の要件:社内でいちばん低い時給を、地域別最低賃金より30円以上高く保つこと
ワークライフバランスの要件:次世代育成支援対策推進法にもとづく「一般事業主行動計画」をつくり、公表すること
子育てなどに関する職場環境整備の取り組み
ここで大切なのが、賃上げと最低賃金の要件には「目標に届かないと、補助金の返還義務が生じる場合がある」という点です。
つまり、もらって終わりではなく、"守り続ける約束"なんですね(※具体的な数値・条件は変わることがあります。必ず最新の公募要領でご確認ください)。
なぜ、こんなに「賃上げ」がセットなのか
なぜ賃上げがこれほど強く結びついているのでしょうか。
この補助金の目的は、設備投資そのものではなく、その先の「生産性を上げて、働く人の賃金につなげる」ことにあります。
「投資して稼ぐ力を高め、その果実を従業員に還元してほしい」という考え方が、制度の背景にあるわけです。
だからこそ、社労士の目線では「事業計画の中身」と同じくらい、「この賃上げ、無理なく続けられますか?」という問いかけが欠かせません。
数字の勢いだけで計画を組むと、数年後に自分の首を絞めてしまうこともあるからです。
今からできる、3つの準備
では、どう向き合えばいいのか。私がおすすめしたいのは、次の3つです。
1. まず「賃上げが続けられるか」を先に確認する
華やかな投資計画の前に、給与総額を毎年増やしていけるか、ざっくり試算してみましょう。人が増えたり減ったりすると総額も動きます。そこまで含めて眺めておくと安心です。
2. 労務の"宿題"を早めに片付ける
一般事業主行動計画の策定・公表は、思い立ってすぐできるものではありません。就業規則や賃金制度の見直しとあわせて、専門家に相談しながら進めると、申請直前に慌てずにすみます。
3. 申請の"土台"を今のうちに用意する
電子申請にはGビズID(プライム)が必要で、取得に数週間かかることもあります。第1回の申請締切は2026年9月30日18時。準備を始めておいて、損はありません。

まとめ——「もらう計画」と同じくらい「守る計画」を
新しい補助金は、たしかに魅力的なチャンスです。ただ、社労士として一言添えるなら——「もらう計画」と同じくらい「守る計画」を大切にしてほしい、ということ。
賃上げや最低賃金の約束は、会社にとっても、働く人にとっても、本来はうれしいはずのもの。だからこそ、無理なく続けられる形で設計することが、遠回りのようでいちばんの近道です。
制度は毎年のように変わり、正直、追いかけるのは大変です。でも、全部を一人で抱え込む必要はありません。分からないところを「分からない」と言える相手を持っておく——それだけで、経営はぐっと楽になります。
「うちの場合はどうなんだろう」と感じた方は、ぜひ気軽にコメントやご相談をお寄せください。
あなたの会社と、そこで働く方々にとって、いちばん納得できる選び方を、一緒に考えます。
※本記事は2026年7月時点の公表情報にもとづく一般的な解説です。補助率・上限額・要件などは変更されることがあります。申請の際は、必ず最新の公募要領・公式サイトをご確認ください。
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社労士・キャリアコンサルタント・産業カウンセラー・コーチ、複数の視点から一つの悩みを見るよう心がけています。この記事が、貴方や会社の判断を少し楽にできていたら幸いです。