台湾のモグリ
給湯室。
まだ花生酥の話題が続く中——
一人の女性社員が身を乗り出す。
「部長、鼎泰豊 台北101店は行かれましたかあ?」
食い気味。
福原は一瞬考える。
——行かなかったな…
有名らしい。
——今度百合子さんに連れて行ってもらおう
そう思いながら答える。
「行かなかった」
一瞬の静寂。
次の瞬間——
「何しに台湾に行ったんですか?」
ほぼ非難。
福原は心の中で思う。
——何しにって…
——百合子さんの旅について行ったからなぁ…
しかし次の質問が来る。
「今回結構長かったですよね?何日間いらしたんですか?」
もはや尋問。
「14日間かな」
「ええ〜!!」
一斉に声が上がる。
「長い❗️私なんていつも2泊なのに!」
福原は内心で思う。
——相方は28日間いたんだけどね…
さらに畳み掛ける。
「14日もいて鼎泰豊に行かないなんてもったいないですよ!」
「そうですよ!」
そして決定打。
「そのお友達の方、モグリなんじゃないですか?鼎泰豊行かないなんて!」
福原、一瞬止まる。
——モグリかぁ…
そしてなぜか思う。
——今度絶対に鼎泰豊に連れて行ってもらおう!
流れを変えようとする。
「彰化で肉圓は食べたよ」
女子社員たち、
一斉に反応。
「バーワンてなんですか?」
「それに彰化ってどこ?」
「面白いものあるんですか?」
福原、少し戸惑いながらも続ける。
「北港で鴨肉のとろみスープも飲んだし」
すると——
「え、台湾人て鴨肉食べるんですか?」
さらに。
「台湾と言えばガチョウよね?」
「鴨肉は聞いたことない」
福原、完全に止まる。
——ああ…
思い出す。
——阿城鵝肉って店かな…
——百合子さん、一回行ったって言ってたな…
頭の中だけが、
どんどん“現地寄り”になっていく。
でも目の前は——
完全に“観光台湾”。
会話が噛み合わない。
福原は苦笑する。
——これはもう…
——一回連れて行ってもらわないと無理だな
静かに結論。
女子社員たちはまだ盛り上がっている。
福原はその中で、
完全にタジタジになりながらも、
どこか楽しそうに、
小さく笑っていた。
