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1895八卦山抗日保台史蹟館。

ある日の彰化。

百合子が一人の女性を福原に紹介する。

「はじめまして」

福原は軽く頭を下げる。

――可愛い子だな

あおりがにこっと笑って、日本語で聞く。
「この方は百合子さんの彼氏?」

少しもためらいのない直球。

百合子もあっさり答える。
「そうよ」

福原、一瞬だけ間。

でも特に否定もしない。

そのまま3人で向かったのは
1895八卦山抗日保台史蹟館。

改装されたばかりで、展示はすっきりしている。

百合子が静かに説明する。

「日清戦争のあとに台湾が日本に割譲されたんだけど、台湾の住民は反対して抗日運動があったの」

少し間を置いて、

「ここはその記念館なの」

福原は展示を見ながら、ぽつり。
「知らなかった…抗日運動あったんだ…」

教科書ではあまり触れない部分。

あおりが横で中国語の説明を一生懸命訳してくれる。

少し詰まる場面もある。

そんな時、百合子が軽くフォローする。

「大丈夫。漢字でなんとなく分かるから」

無理に完璧を求めない。

その空気に、小藝もほっとしたようにまた説明を続ける。

福原は展示をじっと見ている。

――これは台湾の歴史…

思っていた“台湾”とは少し違う。

国立故宮博物院のような華やかさはない。

むしろ、静かで地味。

でも――

重みがある。

百合子がぽつりと言う。
「たまに日本人旅行者も来るみたい。台湾の歴史好きな人」

福原は少し考える。

――ここ、ガイドブックには載ってなかったな…

頭に浮かぶのは、会社の女子たち。

有名店や映えるスポットの話。

でも今、目の前にあるのは――

別の“台湾”。

福原は小さく息を吐く。

――地味だけど、来る意味がある

観光じゃなくて、理解に近い場所。

福原は静かに思う。

――百合子さんと来なかったら、ここには来てないな

そしてもう一つ。

――こういう場所に連れてくるのが、この人なんだな

展示を見つめながら、
その価値をゆっくり実感していた。

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