伝統芸能から見えるカルマ、因果とその解消法
今、私は御能の発表会に向けて稽古を付けてもらっている。
曲は源氏物語に登場する女君玉鬘の霊の苦悩を書いた『玉葛』
彼女のお母さんである夕顔の霊が出てくる『半蔀』を前にやってたのに
『うん、お前玉葛舞え』
爽やかな声音でえらい事要求してくる我が師匠。
玉葛、色んな型や動きがあるから苦手。
そしてもう発表会まで時間ないんですが?と弟子がして良い顔ではない表情で全力拒否しようかと思ったけど。
あの仏顔を前にしてはNOと言えず、結局死物狂いで覚えて昨日通しで舞える様になった。
玉鬘、お疲れ、、、、。
この曲は色んな意味で舞い辛い。
彼女の辛さが滅茶苦茶伝わって来るからだ。
何せ、玉鬘本人が悪い訳じゃないのに生前養父である源氏に振り回された因果が業として残り、死して尚彼女は恋の妄執に縛られている。
源氏はこの聡明な姫君に相応しい求婚者を!と表向き良い事ぬかして内心玉鬘や求婚してくる公達を見て面白がっていた。
一番分かりやすいのは腹違いの弟、蛍兵部卿の宮が玉鬘から一声ほしいと粘っていた時突然舞った蛍の光。
あれ、源氏が仕組んでたんだよな。
宮は玉鬘の美しさに心乱され、玉鬘本人は思わぬ自体に混乱。
こっから更に色んな求婚者に迫られ言い寄られ(大体源氏のせい)
自分だって姫君に執着し、養父で生活を握っているのを良い事に無自覚パワハラセクハラしまくる。
最終的に源氏とは対極の男性である髭黒の右大将に半ば攫われる形で嫁にされるのだけど、私も師匠も『これで良かった』と思うくらい玉鬘が哀れ。
だからか、曲中の彼女は恨み辛みを地団駄踏みながら訴える。
それから僧侶に弔ってもらい、乱れた髪を整え静かに成仏する。
師匠はこの曲をぼんやりした分からない曲だと言う。
『何が言いたいか分からないんだよなぁ、この曲。仕舞は良いんだけど内容がぼんやりなんだ』
問答めいた話を振られたので
『私はなぜ玉鬘がこんなに恨みを吐いてるんだ?と考えてましたが、死んだら全部この世の事が分かるのでなるほどそりゃ恨みがましいわな!地団駄踏むくらい腹立つわ!と思ってました』
そう、人間死んだら全て悟るんだな。
だから玉鬘はなぜ自分が身に覚えのない業を背負わされ恋なぞした事もなかったのに恋の妄執に苦しめられているか、死んでやっと分かったんだ。
母夕顔と源氏の逢瀬から始まった因縁。
夕顔は決して低くない身分だったのに、父親が亡くなり家は没落。
玉鬘の父親である頭中将と愛し合っていたけど、正妻である右大臣家四の君にいびられ行方をくらませあの夕顔が咲く宿に身を隠していた。
それから源氏と出会い、生霊に殺され玉鬘は従者と逃げて、何の因果因縁か源氏が引き取り振り回し業が生まれた。
まっっっっっったく玉鬘は悪くない。
大体源氏のせい。
これ、理知的な彼女は許せないと思う。
夕顔なら許してただろうけど、娘の方は左大臣家の聡明さ気丈さを受け継いでる。
余談だけど面白いのがあさきゆめみしの玉鬘の顔が夕顔ベースなんだけど、左大臣家姫君の葵の上とかなり似てる。
だから賢いんだよね。
叔母である葵の上の性格、左大臣家の気質を考えたら自分をここまで辱めた源氏や男性貴族に対する恨みは半端ないと思う。
でもこれ、見方によっては夕顔が負ってしまった守ってもらえる男性が居なかったという辛さ、苦しさを左大臣家と縁を結んで玉鬘を生ませ、不器用無骨、だけどとても誠実な髭黒の右大将に嫁がせる事で傷や業を浄化してるとも観れる。
だから僧侶が弔う形で、まだ怨霊になる事もなく成仏出来たんじゃないかな。
そんな話を簡単にザックリ言ってる私を見て師匠がどう思ったかは分からないが、何か妙に納得していたから満足行く話だったんだろう。
何でこんな問答してまでやってるかと言うと、物語、曲に自分が何を投影し、苦しさがあるのかを見つめる為である。
物語療法の様に、曲や物語が自分に代わって辛さ、苦しみを消化してくれる。
私の場合、伝統芸能で自分の家系の業を癒してるんだな。
