Photo by
nohdomi
ときどき東照宮【毎週ショートショートnote】
車の後部座席でいつの間にか眠ってしまっていた。激務で睡眠時間が削られていたせいだ。
もうすぐ到着するみたいだ。目を覚ますために窓を少し開けると、皮膚を刺すような冷気が車内に入り込んできた。日の出の時刻はまだ先で、日中ならば渋滞必至の都心の国道を走っていた。
短い時間ではあったが、ときどき現れる猫の夢を見ていた。
…
気持ちよさそうに寝ていた猫が突然目を覚ました。近くで遊んでいた雀が逃げるように飛び立った。上空で雀が、恨めしそうに話をしていた。
『せっかく楽しく遊んでいたのに』
『猫が安心して眠っていてくれたらいいのに』
猫は警戒して背中を丸め、毛を逆立ててこちらを睨んでいた。
『図体のでかい男のせいで、騒がしくて眠れやしない』
「交代したから安心して」
『あの男は異国との評定が下手だったな』
「たしかに、そうね」
『安心して眠れる太平の世にしてくれ』
「わかったわ」
猫は再び眠り、雀は猫のそばで遊びだした。
…
「総理、公邸に到着しました」
(410文字)
いいなと思ったら応援しよう!
サポートして頂いたら有料記事を購入します!