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額に入った夕暮れ【毎週ショートショートnote】

父である寅吾が入院している病院をあとにして、信人は母の房枝と駅に向かうバス停でバスが来るのを待っていた。

寅吾は昔に世話をした女と一緒に暮らしていた。その女から寅吾が階段から落ちて頭を打ち、入院していると連絡があった。怪我自体は大したことはなかったが、痴呆の症状が出ている方が問題であった。

信人は寅吾が50歳のときに授かった子だ。寅吾は信人を20歳に育て上げるまでは生きようと誓っていた。

「オムライスが食べたいなぁ」
「おかあちゃんもオムライスが食べたくなったわぁ」

信人の誕生日には好物であるオムライスを難波にある北極星で食べることが恒例になっていた。

「おとうちゃん、僕のことわからんようになっとたなぁ…」
「…」

「僕のこと思い出さへんまま死んでまうのかな」
「縁起でもないこと言わんといて」

信人は病室では寅吾と目を合わさずに窓から見える夕暮れを眺めながら、このまま回復することなく寿命を全うしてしまうのではないかと思ったのだ。

(410文字)



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