ある日の極楽蜻蛉:ある日の春香伝17「転居」
長男が4歳になった頃、長男は酷い気管支炎にかかり、川越にある埼玉医科大学総合医療センターまでスズキアルトで度々通うことになった。
妻も気管支炎になった。
気管支炎の原因は、家が密集して風通しが悪く、押し入れはカビだらけという有り様であったからである。
妻は私に願いでた。
「おとうさん、息子たちの為にも、もっと日当たりが良く、風通しの良いおうちに引っ越ししようよ。」
さっそく私は調査を開始した。
候補地として上がったのが
①東武東上線「高坂ニュータウン」
②東武東上線「鳩山ニュータウン」
③東武越生線「東毛呂付近の新興住宅街」
いずれも、中野の会社まで、通勤時間は二時間半はかかる。
「おとうさん、そんな遠いところで大丈夫かしら、おとうさんの身体が心配だわ。」
「わしのことなら心配しなくても良い、それに日当たりが良く風通しが良い住宅街は今より遠くの田舎に行くしか無いからな。」
さっそく子ども達は義母に面倒を見てもらい、候補地3か所を見学に出かけた。
①高坂ニュータウンは一番気に入ったが、価格が3300万円で高すぎて手が出ない。
②と③は、2,500万円台でこれは何とか購入出来るが、③は東武越生線で坂戸で乗り換えなければならない。
そこで、②の鳩山ニュータウンに決め
手付金を50万うってきた。
帰ってきて、冷静に調査してみると
鳩山ニュータウンは山の中で、電車の駅までバス通勤しなければならない。
そのバスが午後9時には終ってしまうのである。
土木コンサルタント業界は残業が多い。ちょっとでも遅くなるとタクシーになる。
これではタクシー代が生活を圧迫して暮らして行けなくなる。
そこで鳩山ニュータウンの管理会社に丁寧なお断りの電話を入れた。
規定では、手付金は戻らないのだが、管理会社の責任者が
「そういうご事情なら規定外となりますが手付金はお返しいたしましょう。」と言って数日後には私の口座に振り込んでいただいた。
あと残るのは③しか無い。
自宅を1000万で売却し、それを頭金として現在の毛呂山町の団地に転入出来たのである。

東南角地で、日当たりと風通しは文句なく良く、妻はおおいに満足して言った。
「おとうさん、ありがとう。」
実話を交えたフィクションです
完
