『うちの子、運動神経が鈍い?』 −小1の息子が教えてくれた“育ち”の順番−
序章|「鈍い子」と思ってしまいそうなときに
「ねえ、なんで口開けてるの?」
テレビを見ている次男(小1)に、ふと声をかけた。
氣づけば、日常の中で彼はずっと口を半開きにしている。
それだけではない。
サッカーの練習では、コーチの話を全く聞いていない。
ミニゲーム中にも関わらず、隣のコートを眺めていたり、遠くで何かをしている子に氣を取られていたりする。
親としては、つい思ってしまう。
「長男はできたのに、この子は鈍いのではないか?」
「集中力がない、落ち着きがない、指示を聞かない……育て方が悪いのでは?」
でも私は、自分の専門領域である神経・體・栄養の知識を持って、もう一度彼を見つめ直しました。
そして確信したのです。
これは「能力の差」ではなく、「神経発達の個体差」だと。
「できない」のではなく、“つながっていない”だけなのです。
1章|「反応が遅い子」の正体
──“未接続のネットワーク”
私たちの體には、2000億本を超える神経の“道路網”が張り巡らされています。
しかし、これらは生まれた瞬間から完成しているわけではありません。
■ 子どもの脳と體は「未完成で生まれる」
新生児期の脳は、構造的には80〜90%が完成していると言われますが、機能的な“配線”は未整備です。
0〜7歳にかけて、感覚入力(視覚・聴覚・触覚など)と運動出力(体を動かす)がリンクしていくことで、初めて「反応」が成立します。
たとえば、
見て → 判断して → 動く
聞いて → 理解して → 反応する
といったプロセスは、すべて神経の“つながり”があってこそ成り立つのです。
■ 「口が開いている」子どもの脳科学的背景
口を開けている=無意識の口呼吸です。
これは単なる癖ではなく、以下の複数の問題を示唆しています。
鼻腔の未発達 → 鼻呼吸が苦手
口腔機能の弱さ → 舌の位置が定まらない
呼吸筋・姿勢筋の未発達 → 自然な姿勢が保てない
脳幹(特に延髄)による自律的制御の未熟さ → 呼吸と姿勢の協調が不安定
このように、口が開いている=集中できない・注意が散漫になるというサインなのです。
テレビを見ているときに口が開くのも、視覚刺激に集中しすぎて他の神経系がオフになっている状態。
これは「前頭前野」の統合がまだ甘いために起こる“ズレ”です。
■ なぜ「話が聞けない」のか?
子どもは、「聞こえる=聞けている」ではありません。
聴覚情報を選び取り、保持し、行動に移すには、脳の“実行機能”(ワーキングメモリ・注意制御)が発達している必要があります。
つまり私の次男のように「話を聞いていない」ように見える子は、“聞くネットワーク”がまだ統合されていないだけ。
これは前頭前野・側頭葉・脳幹などの連携の未成熟を表しています。
■ 裸足が育てる“足の感覚”と神経接続
神経ネットワークが未発達な子どもたちには、「足の感覚が育っていない」という共通点が見られます。
足裏で地面を感じ、足趾でバランスを取り、体幹と連動させることで、姿勢や動作に安定感が生まれます。
しかし現代では、クッション性のある靴や平坦な舗装路が日常化し、足が“守られすぎている”環境が当たり前になりました。
その結果、足裏の感覚入力が乏しくなり、神経の発達に大きな個人差が生じているのです。
実際、私の4人の子どもを見ていても、裸足でよく遊んだ子とそうでなかった子では、動きや神経の“つながり方”に明確な差がありました。
足趾がしっかり使えている子は、姿勢が安定し、動作にもまとまりがあります。
土や芝、砂利の上を裸足で歩くこと、草の斜面を登ること、石の感触を足で感じること。
これらの原始的な感覚刺激こそが、神経と感覚をつなぐ最前線だと感じています。
■ 注意が外れる=「反応が鈍い」は誤解
サッカーのミニゲーム中に他のコートを見てしまう。
これもよくある誤解で、「集中力がない」わけではないのです。
実際には、
注意の維持力(Sustained Attention)
注意の切り替え(Shift)
注意の選択(Selective Attention)
これらの「注意機能の育ち方」に個体差があるだけです。
神経心理学ではこのような子どもを“注意散漫型”ではなく、“統合発展途上型”と呼ぶべきだという意見もあります。
■ 発育には「順番」と「個体差」がある
「歩く」より「這う」が大事だったように、
「蹴る」より「感じる」ことが先にあるように、
育つには順番がある。
そして、その順番には“その子だけのリズム”がある。
この順番を無視して、「ちゃんと聞いて!」「集中しなさい!」と怒っても、
それはまだ配線されていないPCにアプリを入れようとするようなもの。
必要なのは叱責ではなく、“つなぐ練習”なのです。
2章|「まとまりのない動き」の正体
次男の動きは、どこかまとまりがない。
走っていても、止まり方がちぐはぐでぎこちない。
ボールに向かっていく動きにも、他の子と比べて一貫性や芯がないように見える。
一言で言えば、「動きに統一感がなく、バラバラ」。
本人は一生懸命やっているのに、スムーズさやリズム感が欠けて見える。
でもこれは決して「運動音痴」なのではないのです。
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