『坐骨神経痛は足から始まる』 −足根洞とテンセグリティ構造−
序章|坐骨神経痛は「腰」だけの問題なのか
坐骨神経痛というと、多くの人は「腰の問題」と考えます。
椎間板ヘルニア。
脊柱管狭窄。
腰椎。
梨状筋。
実際、それらが関係するケースもあります。
しかし現場では、腰を施術しても改善しない坐骨神経痛が少なくありません。
むしろ、腰は“結果”として痛んでいるだけではないか。
そう感じるケースに、私は何度も出会ってきました。
そうした人たちの足を観察すると、ある共通点が見えてきます。
足部が固い。
4・5足趾が潰れている。
距骨が動かない。
踏ん張っている。
ハムストリングが異常に張っている。
そして、足根洞の余白が消えている。
足根洞とは、距骨と踵骨の間に存在する小さな空洞です。
ここには、神経終末、靭帯、血管が豊富に集まり、足部の位置感覚や微細な安定性に深く関与していると考えられています。
私たちは近年、この足根洞の機能低下が、坐骨神経痛やハムストリングの張り、さらには仙腸関節機能にまで影響しているのではないかと考えるようになりました。
人体は、部分ごとに独立して動いているわけではありません。
足から入った張力は、骨盤へ伝わり、脊柱へ流れ、全身へ分配されていく。つまり、人体とは「張力構造」です。
もし足部で張力の流れが止まれば、その負担は途中組織へ蓄積していく。
その“止め役”として、ハムストリングや腰部が働かされている可能性があります。
今回の記事では、
足根洞とは何か
なぜ距骨が重要なのか
筋拘縮と神経伝達の関係
足と骨盤の張力連鎖
について、人体テンセグリティの視点から整理していきます。
第1章|足根洞とは何か
■ 足根洞は「空洞」である
足根洞とは、距骨と踵骨のあいだに存在する小さな空間です。
距骨溝と踵骨溝によって形成され、内部には靭帯、脂肪組織、血管、神経終末が密集しています。
しかし、重要なのは解剖学的名称ではありません。
問題は、この場所が「感覚」と「張力」を仲介している可能性があるということです。

足部は、人体で唯一、地面と直接接触する構造です。
つまり、地面反力を最初に受け取る入口でもあります。
接地の角度。
重心移動。
床の硬さ。
微細な傾き。
それらの情報を、足部は絶えず脳へ送り続けています。
その中継地点のひとつとして、足根洞は非常に重要な役割を担っているように見えるのです。
■ 「余白」がなくなると、足は固まり始める
本来、距骨と踵骨は、わずかに遊びを持ちながら連動しています。
この微細な自由度によって、足部は地面の変化へ適応している。
しかし、周囲組織の筋拘縮や、長期的な踏ん張り動作が続くと、足根洞の余白が失われていきます。
すると、距骨の自由度が低下する。
これは単純に「硬い」という話ではありません。
本来なら、多方向へ逃げられるはずの張力が、単一方向へ偏り始めるのです。
人体テンセグリティは、張力を全身へ分配することで成立しています。
しかし、局所が固定されると、張力は逃げ場を失う。
その結果、特定部位へ負荷が集中していきます。
私はこれを、「張力の偏在」と考えています。
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