【イチロー哲学に学ぶ"壊れない體"】 −サッカー選手のトレーニング戦略−
序章
日本で9年、メジャーリーグで19年。イチロー選手は、プロとして計28年という驚異的なキャリアを歩みました。しかもその間、致命的な怪我や大きな手術を経験することなく、常に第一線でプレーを続けたという事実は、まさに奇跡的とも言える偉業です。
その記録や功績ももちろん圧倒的ですが、今なお多くの専門家やアスリートたちが注目するのは、「なぜ、あれだけの年月を壊れずに走り続けることができたのか?」という点です。
イチロー選手自身はしばしば「自分は天才ではない」と語っていました。では、彼を唯一無二の存在たらしめたものとは何だったのでしょうか。
それは、自分自身の身体に対する深い理解と観察力、そして、その知見を日々の準備や動作に徹底的に落とし込んでいたことにあります。つまり、彼は「鍛える」よりも「整える」、「力を入れる」よりも「力を抜く」ことの価値を知っていたのです。
日本で9年、メジャーリーグで19年という長いプロ野球人生を通して、トップであり続けたイチロー選手は致命的な怪我や手術をほとんど経験していない。
— 續池均(kintsuzuike)@MTR Method Lab®︎ (@kintsuzuike) March 26, 2025
・人体の動きを理解する(テンセグリティ)
・膝の力が抜けたら肩の力も抜ける(抜重)
・持って生まれたバランスが重要(骨格)… pic.twitter.com/lND8gYKwGX
この身体に対する哲学は、野球に限らず、あらゆるスポーツに共通する“本質的な原理”を含んでいます。なかでも、今回のテーマである「サッカー選手にとってウェイトトレーニングは必要か?」という問いに対して、イチロー選手の身体観は非常に多くのヒントを与えてくれます。競技特性の異なる野球とサッカーですが、「動ける身体とは何か」「壊れない身体をどう作るか」という問いに対しては、共通する真理があります。
本記事では、イチロー選手の言葉や考え方を起点に、サッカー選手の身体づくりについて、年齢や成長段階、目的別の視点を交えながら、ウェイトトレーニングの本質を見つめ直していきます。
第1章|イチロー選手の身体哲学
──「壊れない体」の秘密
イチロー選手の身体に対する考え方は、スポーツ医科学の視点から見ても非常に理にかなっており、以下のような要素に集約されます。
■ 1. テンセグリティ(Tensegrity)
テンセグリティとは、「張力」と「圧縮力」がバランスよく作用している構造のこと。人体においては、骨が圧縮構造、筋肉・腱・筋膜が張力構造となり、相互に連携して動きを支えます。イチロー選手のフォームには、まさにこのテンセグリティが体現されています。過度な筋肉の緊張がなく、全身がしなやかにつながっている動きが特徴です。
■ 2. 抜重
「膝の力が抜けたら、肩の力も抜ける」という言葉に代表されるように、イチロー選手は「力を抜くことで力を出す」という感覚を持っていました。脱力ではなく「不要な力を抜く」、つまり“抜重”の技術。これは、局所的な力みによるロスを排除し、効率的で滑らかな動作を生み出します。
■ 3. 骨格を知る
彼は「自分の骨格・バランスに合ったフォーム」を徹底して追求していました。フォームは万人にとって「正しい形」があるのではなく、それぞれの骨格に最適な“正解”があるという考えです。つまり、自分の身体の個性を知り、それを活かす動き方を身につけるという姿勢です。
■ 4. 張力と限界
「筋肉は鍛えられるが、腱や関節には限界がある」
この言葉も有名です。筋肉は成長しますが、関節や腱は構造的に耐久性に限界があります。だからこそ、筋肉ばかりを鍛えて“重さ”を追うと、身体全体のバランスが崩れ、むしろ壊れやすくなります。イチロー選手は、必要最小限の筋力で最大限のパフォーマンスを引き出す“機能美”を追求していたのです。
イチロー氏曰く「体内のセンサーを保つ」
— 續池均(kintsuzuike)@MTR Method Lab®︎ (@kintsuzuike) February 1, 2025
関節には多くの固有受容器(プロプリオセプター)があり、位置感覚や動きの情報を脳にフィードバックする役割を果たしている。
サッカーにおいて細かいボールタッチや素早い方向転換を正確に行えるのもこのセンサーを研ぎ澄ませばこそ。#育成のヒント pic.twitter.com/xzNHPLHhAW
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人体テンセグリティ(アスリート)
人体は、骨や筋肉を積み重ねた「部品の集合体」ではありません。張力と圧縮が全体で均衡するテンセグリティ構造として存在しています。本マガジンで…
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