創作シナリオ|『救声主』|シナリオ・センター研修科|課題:刑事
こんばんは。
秋アニメを見終わり、今期冬アニメにようやく着手し始めた筆者です。
今のところのお気に入りは(続きものを除くと)、『綺麗にしてもらえますか。』と『正反対な君と僕』ですかねー。(鈴代紗弓さん、やっぱいいな!)
というわけで(どういうわけ?)、今宵は久しぶりにシナリオ・センター研修科の課題として書いた習作をお届けします。
この課題は研修科の後半に用意されている「職業もの」シリーズのひとつとして書かれたもので、登場人物の紹介文も付随しているので、そちらもぜひお楽しみください。
なお、以下のシナリオは200字詰原稿用紙20枚分(4000字)。
映像に換算して約10分のシーンとなります。
途中で終わっているように思われるかもしれませんが、課題としてはこれで成立しており、続きはありませんので悪しからず。
それでは、早速いってみましょう!
シナリオの基本的ルール
・登場人物表:当該シナリオに登場する人物をまとめたもの。
・本文
→○は「ハシラ」と呼ばれる。シーンが展開さ
れる場所・時間帯(昼間の場合のみ省略)を示
す。
→三マス空けて始まる文は「ト書き」と呼ばれ
る。シーンの状況・登場人物の行動等が描写さ
れる。
→登場人物の苗字または名前+「」は「セリ
フ」と呼ばれる。基本的に演者が男性の場合は
苗字、女性の場合は名前で示される。
テーマ:刑事 タイトル:『救声主』
人 物
麦原沙由香(33)刑事
藤宮佑(50)沙由香の相棒
河本豊(44)立てこもり犯
男性警察官
店長
人物紹介
麦原沙由香(33)
警視庁捜査一課特殊犯捜査係(SIT)に所属し、警察大学校で交渉術を一通り学んだノンキャリア。10年前まで、アイドル声優として第一線で活躍していた。代表作はニチアサにやっていたアニメ『少女戦記ニンフィニティ』の主人公ニンファ。学生時代から共感能力が高く、同世代の友人はおろか教師などの大人たちからも相談を持ちかけられるほど聞き上手の一面があった。しかし声優時代、組んでいたグループ内でトラブルに巻き込まれ、解散。その後、諸悪の根源としてネット上で炎上し、声優業界からの引退を余儀なくされる。そのため声優だった自らの過去に後ろめたさがある。共感能力が高いためか、八方美人になりがちで自分を偽らざるを得ない時もあるが、相棒である藤宮佑の声優オタならではの空気の読めなさに辟易しながらも、藤宮といる時だけは素の自分を曝け出せる。今も声優時代からのルーティンをいくつか頑なに守っており、特に緊張する場面には、マヌカハニーを必ず持参する。お口に関するエチケットにうるさい。
藤宮佑(50)
捜査一課刑事、警察大学校で交渉術を学んだノンキャリア。10年前に一人娘を事故で亡くして以来、仕事に溺れるようになる。娘の好きだったアニメ『少女戦記ニンフィニティ』を数百回は繰り返して観ており、中でも主人公であるニンファに娘の姿を重ねている。身なりや清潔感を一切気にしない性格のためか、沙由香からは文句をよく言われるが、共感能力は高く、交渉の際もホシの懐に入り込む術をよく弁えている。ニンファを演じていた沙由香に言ってほしい台詞100を書き連ねたノートを常に持ち歩いており、それが沙由香にバレて燃やされそうになった時は泣いて謝った。何だかんだ言って、娘を亡くした自分をどん底から掬い上げてくれた沙由香に尊敬と感謝の念を抱いており、過去を黒歴史として葬り去ろうとする沙由香が過去と向き合いながらも刑事として立派に成長出来るように陰ながらサポートしようとしている。
○雑居ビル・全景
灰色のビル、遊撃車と数台のパトカー
が停まり、警光灯が光を回転させてい
る。規制線が張られ、制服姿の警察官
らが見物人の対応に追われている。
○遊撃車・車内
物々しい機械類が積まれた薄暗い車内。
くたびれたスーツに身を包んだ藤宮佑
(50)が無精髭を弄りながら座ってい
る。その向かい側では麦原沙由香(3
3)が、大きな瓶に入ったマヌカハニ
ーをスプーンで掬い舐めている。藤宮、
苦笑いして沙由香に声をかける。
藤宮「麦原?さっきからそれ、何食ってんの?」
沙由香、藤宮をきっと睨む。
沙由香「何って、マヌハですけど?悪いです
か?喉、潤しちゃ」
藤宮「いや、悪いっつーか…まるでこれから
アフレコに臨む声優さんみたいだなぁって」
沙由香、叩きつける様に瓶を椅子に置
く。沙由香、眉根を寄せて捲し立てる。
沙由香「先輩、私、何度も言いましたよね?
そういうイジリ方すんのやめて下さいって。
私はもう声優じゃない、刑事なんです!こ
れは昔からのルーティンの一つであって、
他意なんてありませんから!」
藤宮、沙由香の手が僅かに震えている
のを横目に見やると、わざとおどけた
ように両手を前に出して言う。
藤宮「わかった、俺が悪かった!お詫びに今
度、飯でも何でもおごってやるからさぁ」
沙由香、鼻を鳴らし、徐に顔を俯ける。
沙由香「それにしても、漫画喫茶での立て籠
りなんて…犯人は何が目的なんですかね?」
藤宮、肩をすくめる。
藤宮「さあな、それを詳らかにして根気強く
説得するのが、俺たちの役目だろうよ」
沙由香「……そう、ですよね」
沙由香、小さく息を吐く。藤宮、沙由
香に笑いかけながら穏やかに言う。
藤宮「まあそんな心配すんな。俺もついてる
こったし。肩の力抜いて、気楽にいこーぜ」
沙由香「でも先輩、ここぞって時に頼りにな
らなさそうっていうか。息も臭いし」
藤宮「(渋い顔で)いや、最後のは関係ない
だろ!って、え?マジ…?」
沙由香、口を両手で覆い息を吹きかけ
る藤宮を見て、ふっと表情を緩ませる。
沙由香「…すみません、もう、大丈夫です」
藤宮、口を覆ったまま沙由香を見やる。
藤宮「(くぐもった声で)そうか」
その時、無線から声が流れてくる。
男性警察官の声「各班に通達、SAT、所定
の位置に配置完了。繰り返す。SAT、所
定の位置に配置完了」
藤宮、バシッと自分の両膝を叩く。
藤宮「よっしゃ!一丁やったりますか!麦原、
どんな時も平常心、忘れんなよ!」
沙由香、ごくりと唾を飲み込み、頷く。
○雑居ビル・3階・漫画喫茶マンプウ店内
利用客らがカウンターの前に集められ
床に座らされている。その光景をカウ
ンター内で改造銃を手に河本豊(44)
が苦々しげに眺めている。ドリンクコ
ーナーから飲物を作って持ってきた店
長が震える手で飲物を河本に渡す。河
本、引ったくるように飲物を受け取る
と、ごくごくと一気に飲み干す。店長、
徐に後ずさる。店長、床に置かれた河
本のリュックに付けられた『少女戦記
ニンフィニティ』のニンファのイラス
ト入り缶バッジを見て恐る恐る尋ねる。
店長「あ、あのう…」
河本「あ?」
店長、リュックの方を指差して、
店長「あ、貴方もニンファ、推しですか?」
河本、リュックに目線を向けてから店
長に顔を近づける。河本、大声で凄む。
河本「テメェには関係ねぇだろ!殺すぞ!」
店長、短い悲鳴を上げて力なく床に座
り込む。河本、窓辺に寄り、ブライン
ドを指で下げて外の様子を窺う。外に
は数台のパトカーと警察官らの姿が散
見される。河本、思わず舌打ちする。
その時、カウンター内の電話が鳴る。
河本、電話を一瞥してから店長を睨む。
河本、顎で電話の方を示す。店長、ゆ
っくりとした動作で受話器を取る。
店長「は、はい…漫画喫茶マンプウですぅ」
店長、ハッとした表情を浮かべ、河本
を見上げる。店長、声を震わせて言う。
店長「あ、あの、貴方に、代わってほしいと」
河本、店長から受話器を奪い耳に当て
る。電話口から声が聞こえてくる。
沙由香の声「もしもし、聞こえますか?」
○遊撃車・車内
沙由香、ヘッドセットに呼びかける。
沙由香「もしもし?」
やや沈黙の後、車内に声が流れる。
河本の声「……警察か?」
沙由香、落ち着き払った様子で答える。
沙由香「こんにちは。私は、警視庁捜査一課
の麦原です。突然ごめんなさい。貴方とど
うしてもお話しがしたくて電話しました」
沈黙。沙由香、冷静に言葉を続ける。
沙由香「まず、先に確認したいのだけれど、
人質の人たちは、全員無事なのかな?」
河本の声「……は?んなこと教えるかよ」
藤宮、PCのモニターに映る声紋の波
形図を解析、データベースと照合する。
沙由香「そう、じゃあ質問を変えるね。貴方
は、どうしてこんなことをしているの?」
沈黙。沙由香、目を瞑り語りかける。
沙由香「何か、辛いことでもあったのかな?
例えば、仕事のこととか、家族のこととか。
もしそうなら、私に、話してみない?」
やや沈黙の後、徐に声が流れる。
河本の声「……お前らは、いつもそうだ」
沙由香「…え?」
河本の声「そうやって偽善を振りかざしてい
れば、誰かを救った気分になれるってか?
ハッ!人を嘗めるのも大概にしろよっ!」
○ 雑居ビル・3階・漫画喫茶マンプウ店内
河本、受話器に向かって怒鳴りつける。
河本「俺の人生、今まで良いことなんか一つ
もなかった!お前ら成功者にはわからない
だろ!いつだって上から目線で人様を見下
しやがって!さぞ気持ちいいんだろうな?
なぁ?テメェら全員もよぉ!?」
河本、改造銃を人質らに向ける。人質
たち、悲鳴を上げて床に身を屈める。
沙由香の声「成程。貴方は、そこで闘ってい
るんだね。過去の、そして今の自分自身と」
河本、一瞬口を半開きにして固まった
後、苛立たしげに吐き捨てる。
河本「あ?何寝言ほざいてんだ?誰が、誰と
闘ってるって?」
その時、河本のリュックから『少女戦
記ニンフィニティ』の主題歌の着メロ
が流れる。河本、思わず下を見る。
沙由香の声「…貴方という人間を知れて、本
当に良かった。じゃあ、またね」
○遊撃車・車内
藤宮、沙由香を見てニヤリと笑う。
藤宮「初めてにしては中々いいんじゃねーか。
これで相手はこちらのペースってわけだ」
沙由香、軽く息を吐いて答える。
沙由香「話してみてわかったんですが、彼は
自分から率先して人質に危害を加えること
はないと思います。それに存外素直で気が
小さい。犯行も半分は衝動的な匂いがする」
藤宮、無精髭を擦りながら呟く。
藤宮「とはいえ、性急にSATを突入させる
わけにもいかんだろうな」
沙由香「声紋照合の方はどうでしたか?」
藤宮「空振りだ。さて、これからどうするか」
沙由香、小さいながらも力強い声で、
沙由香「一つ、考えがあります」
藤宮「考え…?」
沙由香、拳を硬く握りしめる。
○ 雑居ビル・3階・漫画喫茶マンプウ店内
河本、チラリと電話を見る。その時電
話が鳴る。河本、素早く受話器を取る。
河本「…また警察か!?テメェらに何言われ
ようが、もう後には退けねぇんだよっ!」
やや沈黙の後、沙由香の声が流れる。
沙由香の声「(幼い声で)まだ、やり直せるよ」
河本、思わず目を見開く。
河本「えっ…なんでっ…ニンファ……!」
河本、改造銃を落とす。店長、すかさ
ず改造銃を遠くに払い除ける。数人の
若い利用者の男らが目で合図を送り、
叫びながらカウンターに乗り入れる。
男ら、そのまま河本を抑え込む。
○雑居ビル・外・道路
河本が警察官らに連行され、パトカー
に乗り込む。その様子を眺める沙由香
と藤宮。沙由香、頭を抱えてしゃがむ。
沙由香「はぁああ!やってしまったぁー」
藤宮「ははっ!上出来上出来!お疲れさん」
沙由香、膝を抱えて眉間に皺を寄せる。
沙由香「あんな手、二度と通用しませんよ…。
あーあ、あの声は封印してたのになー」
藤宮、前を向いたまま言う。
藤宮「麦原、お前は今日、誰かを救うために
自分の過去と向き直れたんだ。立派だよ」
沙由香、膝に顔を埋めて呟く。
沙由香「何恰好つけてんですか、結局何の役
にも立ってなかったくせに。後息臭いです」
藤宮「ぜってー、臭い届いてねぇだろ!」
沙由香、ぽつりと付け足す。
沙由香「けど、ありがとうございました」
藤宮、無精髭を擦る。警光灯の光を回
転させたパトカーが滑る様に動き出す。
以上になります!
いかがでしたでしょうか?
声優と交渉人という組み合わせ、思いついた時には我ながらいいじゃんと思い、楽しく書くことができました。
よろしければ、フォロー・スキ・感想等もよろしくお願いいたします!
それでは、今日はこの辺りで!
さようなら〜。
