君に届ける物語 – 第9章|沈んでいく夜
追いLINEをしたまま、
怜からの返信は一切こなかった。
未読のまま、
画面の向こうにいるはずの彼の気配は
すっかり消えてしまっていた。
“あぁ……終わったんだ。”
胸の奥が空洞みたいにスースーして、
どこに心を置けばいいのかわからなかった。
あれほど毎日話していたのに、
たった数日沈黙されるだけで、
世界が壊れてしまうなんて。
数日後、
突然、怜から通知が入った。
心臓が跳ねる。
手が震える。
でも、その内容は私が想像していたものとは
まったく違っていた。
「会ってやってもいいよ。
俺を納得させられたら、
寄り戻してやってもいい。」
息が止まる。
その言葉にはやさしさも思いやりもなかった。
まるで試されているような、
裁かれているような感覚。
でも、そのときの私は、
それでも嬉しいと思ってしまった。
“まだ終わってないんだ…”
その一瞬の希望にすがりついてしまった。
次の瞬間、
怜は私にとって 絶対に外せない時間 を指定してきた。
「この時間にいつもの場所で。」
そこは、
どうしても断れない
バイトの面接の予約時間だった。
でも私は反射的に答えていた。
「無理だけど…なんとか行く!!
どうにかするから会いたい!!」
必死だった。
行けるはずもないのに、
どうにかしようとする自分がいた。
その直後、
画面に落ちてきた怜の言葉は
冷水みたいに私を突き刺した。
「無理だろ。
調子乗るなよ。」
胸の奥がギュッと痛くなる。
言われた瞬間、
身体の中の何かが萎縮するような感覚。
“調子乗るな”…?
どうしてこんな言葉を浴びなきゃいけないのか、
頭では理解できなかった。
でも心は、
ただただ怜を失うことが怖くて、
その言葉すら飲み込もうとしていた。
それから怜は、
こちらの事情を無視した要求を
何度も積み重ねてくるようになった。
無理難題。
矛盾した指示。
突然の怒り。
怜の言葉が、
まるで鋭い刃物に変わったようだった。
でも私はまだ、
彼を手放せなかった。
“嫌われたくない”
“見捨てられたくない”
そんな気持ちが、
判断をどんどん曇らせていった。
沈んでいく夜の中で、
私はまだ、
自分がどれほど深い場所に足を踏み入れたのか
気づけずにいた。
