「建築家に頼む=高い」という思い込みの正体
家づくりで損しない人がやっていること vol.3
「建築家に頼むと、高くなるんでしょう?」
建築家との家づくりの話をすると、ほぼ必ずこの質問が来ます。それほどまでに、この思い込みは根強い。
ただ、少し立ち止まって考えてみてください。「高い」とは、何と比べての話でしょうか。
設計費が「見える」から高く感じる
建築家に頼む場合、設計費が明確に存在します。工事費の10〜15%前後が目安で、金額として正面から提示されます。
一方、ハウスメーカーや工務店でも、当然ながら設計はしています。ただ、その費用は「本体価格に含まれている」という形で、表面には出てきません。つまり、払っていないわけではなく、見えないだけなのです。
人は"見えるもの"に対して敏感です。同じ金額でも、明細に書かれていると高く感じる。これが「建築家は高い」という印象の正体のひとつです。
設計費は「編集費」だと考えてみる
建築家の設計費とは何に対する対価なのか。
敷地の読み取り、法規の整理、構造との調整、コストコントロール、素材の選定、空間構成——そして何より「その家族の暮らしの設計」。これらをすべて含めた、いわば「編集費」のようなものです。
設計段階で考え抜かれた家は、現場での迷いが少なく、追加工事も起きにくい。逆に設計が薄い家は、現場で迷い、追加工事で迷い、住み始めてからも迷い続けます。後からじわじわとコストが膨らむのは、たいていこちらのパターンです。
トータルで見ると、むしろ安くなるケースもある
意外に思われるかもしれませんが、建築家住宅はトータルで見ると、ハウスメーカーよりコストが抑えられるケースも少なくありません。
理由はシンプルです。建築家は「決まった商品」を売っているわけではないからです。
ハウスメーカーのパッケージは、品質の安定や安心感につながる一方で、不要な仕様まで含まれていることがあります。「フルコース前提」の料理のようなものです。対して建築家は、必要なものを必要な分だけ設計します。不要なものは入れない。必要なところにはしっかりかける。その配分を徹底的に考えます。
また、素材の使い方にも工夫があります。ラワン合板、構造用合板、モルタル——一般的には安価とされる材料でも、使い方次第で空間の主役になります。「安い素材をいかに豊かに見せるか」という設計の力が、コストと質を同時に解決するのです。
「坪単価」では測れない
家づくりの相場感を語るとき、「坪単価」という言葉がよく使われます。ただ、この数字はかなり乱暴な指標です。
同じ坪数でも、空間の質はまったく異なります。外構や設計費が含まれているかどうかでも変わります。何より、坪単価は「平均値」でしかありません。
建築家住宅は、この平均から外れることを前提に設計されています。ある場所ではコストを抑え、別の場所にはしっかりかける。そのメリハリがあるからこそ、空間に豊かさが生まれます。
均一に整えられた住宅と、意図的にメリハリを持たせた住宅は、同じ物差しでは測れません。
「高い」より「納得できるか」
最終的に、住宅の価値は価格だけでは決まりません。
どれだけ納得して選んだか。どれだけ自分たちの暮らしにフィットしているか。その積み重ねが、住まいの満足度をつくります。
建築家住宅は、確かに安さを売りにしているわけではありません。ですが、ひとつひとつの決定に理由があり、その背景を共有しながら進んでいく。そのプロセスを含めての価格だと考えると、見え方は少し変わってくるのではないでしょうか。
「高い」という思い込みの前に、「何と比べて」「何を含めて」「何年後の満足度で」——この三つを問い直すことが、損しない家づくりの第一歩だと思います。
