「決まったカタログ」と「ゼロから考える」の違い
家づくりで損しない人がやっていること vol.5
住宅展示場に足を運ぶと、モデルハウスの中に「標準仕様」という言葉が登場します。
キッチンはこのシリーズ、床材はこの種類、窓はこのサイズ。カタログがあり、オプションがあり、その組み合わせの中で「自分らしい家」を選んでいく。そういう家づくりの進め方です。
これを否定したいわけではありません。ただ、「選ぶ」と「考える」は、似ているようで、まったく違う行為です。
カタログの中で選ぶということ
カタログから選ぶ家づくりは、メニューのある食事に似ています。何十種類もの選択肢の中から、好みのものを組み合わせる。迷う余地はたくさんあるけれど、メニューに載っていないものは頼めません。
「1階と2階のあいだに、もう半層分だけ空間を挟みたい」「玄関と庭を、ひとつながりの外部空間として設計したい」「この土地の高低差を、むしろ暮らしの豊かさに変えたい」——こういう発想は、カタログの外側にあります。
標準仕様の中で選び続けると、どこかの時点で「なんとなく、どこかで見たことがある家になってしまった」という感覚が生まれることがあります。それは選び方が悪かったのではなく、選ぶ範囲の外に、その人の本当の暮らしがあったのかもしれません。
ゼロから考えるということ
建築家との家づくりは、メニューのない食事に似ています。「何が食べたいですか」から始まる。
最初の問いは、間取りではありません。「どう暮らしたいか」です。
朝、どこで目を覚ましたいか。家族が自然に集まる場所はどこか。一人になりたいとき、どんな場所に行きたいか。光はどこから入ってきてほしいか。庭と室内の関係は、どうあってほしいか。
こうした問いに丁寧に向き合った上で、間取りが生まれます。土地の形や方角、法規の制限も含めて読み解きながら、その敷地とその家族にしかない一枚の図面が起こされます。
「考える」家づくりは、時間がかかります。答えがすぐには出ません。ただ、その時間の中で、自分たちが本当に何を求めているかが、少しずつ見えてくることがあります。
「自由」は、量ではなく質の話
「建築家に頼むと自由度が高い」という言い方をすることがあります。ただ、自由の中身は「選択肢の数が多い」ということではありません。
ハウスメーカーのオプションは数十種類あります。建築家の設計に選択肢の「数」はありません。あるのは、「その家族の暮らしに最もふさわしい答えを導き出すプロセス」です。
自由の量ではなく、自由の質が違う。そう言い換えるほうが正確かもしれません。
向いているのは、どちらか
カタログから選ぶ家づくりが向いているのは、決断をスピーディーに進めたい人、ある程度の仕様に納得感がある人、家よりも立地や資産性を優先したい人です。これは合理的な選択です。
ゼロから考える家づくりが向いているのは、「なんとなくしっくりこない」という感覚を大切にしたい人、暮らしの細部にこだわりたい人、土地や家族の条件が一般的ではない人です。
どちらが正解ということはありません。ただ、自分がどちらに向いているかを知らないまま進むと、プロセスの途中で「思っていたのと違う」という感覚が出てくることがあります。
家づくりで損しない人は、最初に「自分はどちらの家づくりをしたいのか」から検討し始めています。
