JW900 与えられた命
【東征激戦編】エピソード41 与えられた命
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦111年、皇紀771年(景行天皇41)。
ここは、弟橘媛(以下、タッチ)が眠る御陵(橘樹神社のこと)の近く(千葉県茂原市本納)。







東征をつづける、日本武尊(以下、タケル)一行は、海を北上しようと試みたが、難破した為、船が直るまで、しばらく留まっていた。
そして、海辺に、一人佇む「タケル」の元に、伯父の「たっちゃん」が歩み寄るのであった。
ちなみに、今回は、作者のオリジナル物語である。

たっちゃん「如何なされた? 皇子らしくありませぬぞ?」
タケル(30)「伯父上? 何が、でござる?」
たっちゃん「一度の嵐くらいで『へこたれる』ような御仁では、なかったはず・・・。」
タケル(30)「伯父上・・・。また、海なので、ござる。」
たっちゃん「ん?」
タケル(30)「俺は・・・海神に嫌われているのやも・・・。」
たっちゃん「・・・・・・。」
タケル(30)「『タッチ』は、俺の所為で死んだのです・・・。俺が、戯言を言わなければ、彼を連れて行かなければ・・・。」
たっちゃん「・・・・・・。」
タケル(30)「義父上(おしやんのこと)も、明るく振る舞っておられるが、心の内は、如何ばかりであろうかと・・・。」
たっちゃん「皇子には、娘御は居りましたかな?」
タケル(30)「俺の子は、皆、男にござる。」
たっちゃん「左様か・・・。我には、娘が居りましてな。勝ち気で、真っ直ぐな丈夫の妻となっておる。」
タケル(30)「そ・・・それは、俺のことですか?」

たっちゃん「それゆえ、おしやん殿の気持ちは、よくわかる。そして、時々、考えることがある。」
タケル(30)「・・・・・・。」
たっちゃん「あの日、海に飛び込まねばならかったのは、我が娘であったかもしれぬと・・・。」
タケル(30)「伯父上・・・。」
たっちゃん「そして、こうも考えるのじゃ。もし、娘が、命、惜しさに、身を捧げることを拒んだなら・・・と。」
タケル(30)「アナ(吉備穴門武姫のこと)は、そのような女ではありませぬぞ?」
たっちゃん「もしも・・・の話じゃ。もし、そうなったなら、大王から預かった兵たちは、皆、ことごとく海の藻屑となり、東国は平らかとはならず、争いの地は、さらに広がりを見せたであろう。」
タケル(30)「・・・・・・。」
たっちゃん「『タッチ』殿は、己が身を以て、我らだけでなく、この『ヤマト』そのものを救われたのじゃ。我が娘が、同じことをしたなら、我は、心の底から、褒めてやりたいと思うておる。」
タケル(30)「されど、全ては、俺の所為で・・・。」
たっちゃん「皇子? その俺・・・とやらは、あの日、死んでおりまするぞ。」
タケル(30)「ん?」
たっちゃん「我らは、あの日より、『タッチ』殿から与えられた命を抱えておるのじゃ。死にゆく運命であった、我らが、今、ここにいるのは、全て『タッチ』殿のおかげ・・・。」
タケル(30)「・・・・・・。」
たっちゃん「『タッチ』殿から頂いた命。しっかりと使い切らねば、『タッチ』殿の御魂が浮かばれませぬぞ?」
タケル(30)「伯父上・・・。一度だけ、泣いても、よろしうござるか? 丈夫に有るまじきことと、俺を蔑まれるか?」
たっちゃん「何を申される。丈夫とは、己の為ではなく、誰かの為に涙する者と心得ておる。何を気兼ねなさることがあろうか・・・。」
タケル(30)「うう・・・タッチ・・・吾が妻よ・・・(´;ω;`)ウゥゥ。」
夕日が優しく「タケル」を包みこむのであった。
つづく
