JW897 二本の橘
【東征激戦編】エピソード38 二本の橘
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦111年、皇紀771年(景行天皇41)。
日本武尊(以下、タケル)一行は、弟橘媛(以下、タッチ)の御陵(お墓のこと)を造る為、地元の豪族(王)、山座王(以下、マクラ)の案内の元、約束の地、千葉県茂原市の本納を目指していた。

マクラ「さあ! もう少しで、本納ですぞ。」
タケル(30)「うむ。ということで、ここに『タッチ』の着物を埋め、社を建てようと思う。」
わかたけ「父上? マクラ殿の言の葉を聞いていなかったのですか? まだ、本納では、ありませぬぞ?」
タケル(30)「すまぬ。伝承なのだ。」
わかたけ「ま・・・また、ですか?」
長広「こうして、姫の着物を御神体として埋めた・・・と伝わっているのが、千葉県茂原市の長尾に鎮座する、橘神社にござりまする。」








そして、ついに、一行は、本納に辿り着いた。
タケル(30)「ここが、本納・・・。」
おしやん「ここに『タッチ』の櫛を埋めるんだな?」
タケル(30)「御意。」
長広「では、この地に創建された社を紹介致しましょう。」
マクラ「橘樹神社のことじゃな?」
長広「御意。祭神は『タッチ』姫にござりまする。」







ダータケ「母上だけではありませぬぞ。父上と、おじいさまも祀られておりまする。」
タケル(30)・おしやん「快なりぃぃ!」×2
わかたけ「なお、父上が、自ら墓を築き、そこに、橘の木を二本、植えたゆえ、橘樹神社との由。」
ダータケ「櫛は、海から流れ着いたものと伝わっておりまする。」
おしやん「そして、社殿裏の古墳が、皇子が築いた『タッチ』の墓だってばよ。」

わかたけ「ちなみに、社のすぐ東は、海だったそうですぞ。」
マクラ「あと、紹介すべきは、吾妻池ですかな。」
タケル(30)「ん?」
マクラ「境内に、吾妻池と呼ばれる池が有るのですが、この池は、御陵を築いた折、土を掘ったことから生まれたそうですぞ。」


長広「なお『君津郡誌』では、標として、橘を植え、社を建てて祀ったのが、橘樹神社であるとしておりまする。」
タケル(30)「とにもかくにも、ようやく『タッチ』の御陵が出来たぞ。」
わかたけ「これで、母上の御魂も安んじめられるでしょうか?」
おしやん「皇子が、自ら築いたんだ。彼も喜んでるってばよ。」
ダータケ「母上・・・(´;ω;`)ウッ…。」
わかたけ「ダータケ! 泣くでない! 我らは、蝦夷を討ちに参るのじゃぞ? 戦いを前にして泣くは、禍事ぞ?」
タケル(30)「うむ。『わかたけ』よ。その通りだ。『ダータケ』よ。悲しむのは、国中(今の奈良盆地)に帰ってからに、せよ。」
ダータケ「は・・・はい。」
マクラ「して、皇子たちは、このまま、日高見国(今の東北地方)に向かわれますので?」
タケル(30)「うむ。海に出たのだ。このまま、北に向かう。」
マクラ「なるほど・・・。さきほど『わかたけ』様が、社のすぐ東は、海・・・と語っておられましたな。」
タケル(30)「その通りだ。あとは、船を待つだけ・・・。」
マクラ「待つ?」
タケル(30)「船団を率いし者が、やって来るはずだ。」
おしやん「やって来ないってばよ。」
タケル(30)「ん? 義父上? それは、如何なることで?」
おしやん「俺の家来『カタスケ』と合流するのは、ここじゃねぇんだ。」
タケル(30)「なんとぉぉ!」
マクラ「と・・・ともかく、我は、これにて国元に帰りまする。」
タケル(30)「う・・・うむ。これまでの働き、大儀であった。」
マクラ「かたじけのうござりまする。皆様の武運長久を祈っておりまするぞ。」
こうして、一行は「マクラ」と別れたのであった。
つづく
