JW783 やつめさす
【筑紫再征編】エピソード38 やつめさす
第十二代天皇、景行天皇の御世。
西暦97年、皇紀757年(景行天皇27)。
日本武尊(以下、タケル)の一行は、熊襲の魁帥(首長のこと)、川上梟帥を討ち取り、新たな地に辿り着いていた。

すなわち、出雲国(今の島根県東部)である。


タケル(16)「ここが、出雲か・・・。」
よっちゃん「出雲建を討ちに来たのでしたな?」
タケル(16)「そうだ。」
するとそこに、出雲の臣の岐比佐都美(以下、さつみ)がやって来た。
さつみ「お待ちしておりましたぞ。」
もち「ん? さつみ殿か? 御父上殿は?」
さつみ「父上は引退となり、此度より、我が、出雲の国造となりもうした。」

ナッカ「世代交代ってヤツっすね?」
さつみ「左様。」
タケル(16)「して、俺たちが討つべき、出雲建は、何処に?」
さつみ「あちらに・・・。」
そこに、一人の男が近付いてきた。
出雲の振根である。
振根「此度、出雲建として、再出演することになった、振根だに。エピソード440以来の登場だぞ。ありがたく思え。」
弟彦「エピソード440と言えば、崇神天皇の御世にござりまするな?」
振根「そげだ。『ミマキ(崇神天皇のこと)』に騙され、国を奪われたんだに!」

田子「して、改めて出演する気になった理由は?」
振根「あげな辱めを受けるのは、わし一人で、充分だ。それに、弟の曾孫と共演出来るなど、そうそう無いことだからな。」
さつみ「さ・・・左様ですな。」

たけし「では、早速ですが、皇子と共に、斐伊川で水浴びしてください。」
振根「そげなるのか?」
タケル(16)「そのようだな。」
こうして、二人は、水浴びを始めた。

チヂオ「たけし様? 出雲建こと、振根殿を討つのではなかったのですか?」
たけし「安心してください。これは、策です。」
チヂオ「水浴びが?」
もち「皇子の剣は、赤檮の木で作った、偽物で、川から上がった時に、剣を取り換える手筈になっちょるんや。」

よっちゃん「騙し討ちにすると?」
ナッカ「兵は詭道なり・・・って言うでしょ?」
弟彦「そんなことを申しておりましたら、皇子が川から上がって参りましたぞ。」
タケル(16)「振根殿。剣を取り換えようではないか。」
振根「構わんぞ。」
さつみ「あっ! 振根殿も、川から上がって参りましたぞ。」
振根「ん? やけに軽い剣だな? この肌触り、この重み・・・。もしや・・・。」
タケル(16)「では、振根殿! 大刀合わせをしようではないか!」
振根「抜けぬ・・・。やはり、木剣か?!」
タケル(16)「出雲建こと、振根! 覚悟ぉぉ!」
ザシュッ
振根「エピソード438で、わしが用いた策・・・。わし自身を斬ることになるとは・・・グフッ。」
タケル(16)「よし! ここで、歌を詠もうぞ!」
たけし「どうぞ!」
タケル(16)「やつめさす 出雲建が 佩ける大刀 黒葛多纏き さ身無しにあはれ・・・。」
疾風「モォォ!」
田子「ふむ。やつめさす、出雲建が、腰に着けた大刀は、蔓ばかり幾重にも巻く飾り鞘で、刀身が無く、嗚呼おかしい・・・という意味になると申しておりまするぞ。」
弟彦「ところで『やつめさす』とは?」
もち「出雲に掛かる、枕詞やじ。」
ナッカ「歌に使われる、決まり文句みたいなモンすね。」
さつみ「されど、出雲の枕詞は『八雲立つ』では?」
たけし「八雲立つの音が、変化したのではないかと考えられています。」
とにもかくにも、出雲建は討たれたのであった。
つづく
