【7/2】楽天×AST急騰24% 1480億円が動かす衛星通信の主導権
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米AST SpaceMobileの株価が週間24%高と急反発しました。引き金は、情報通信ネットワーク産業協会が6月30日に発表した、楽天グループ主導の低軌道衛星プロジェクトへの最大1480億円の政府補助の確定です。総務省の国家戦略プロジェクトJ-LEOは、スマートフォンと低軌道衛星が直接つながる通信網を国内で運用・管理し、情報通信の自律性を確保することを狙います。国内ではドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社がそろって米スペースXのStarlinkを採用しており、楽天・AST連合はブロードバンド品質の直接通信と国産網で一強に挑みます。企業の戦略と国家の経済安全保障が交差するこの構図を、技術、競争、リスクの三面から掘り下げます。
4週続落からの24%急反発
米国の宇宙銘柄が、日本の国家プロジェクト採択で急反発しました。
ストックツイッツが6月30日に伝えた内容では、AST SpaceMobileの株価は次のように動きました。
ASTS株価(6月30日)
終値 88.86ドル、当日2%高
週間上昇率 24%
直前の値動き 4週連続の下落
4週続落から一転、1カ月超ぶりの強い週となりました。材料は、情報通信ネットワーク産業協会が6月30日に発表した、楽天グループ主導の低軌道衛星プロジェクトへの最大1480億円、約9.1億ドルの政府補助の確定です。個別銘柄の反発という以上に、日本の通信インフラの主導権を巡る動きが米市場を動かした点に、この材料の射程の広さが表れています。ただし、急反発した株価には期待の先行も含まれ、実行が伴わなければ巻き戻る余地がある点は、最初に留保しておく必要があります。
参照元
J-LEOという国家プロジェクト
総務省は、国産の衛星直接通信網の構築を国家戦略に位置づけました。
ビジネス+ITが6月30日に整理した内容では、制度の骨格は次の通りです。
J-LEO 低軌道衛星インフラ整備事業
正式名称 自律性確保に向けた低軌道衛星インフラ整備事業
財源 2025年度補正予算のデジタルインフラ整備基金
予算規模 1500億円
補助対象 衛星の調達、打ち上げ、地上設備整備
支援期間 3年間
採択 1社のみ
目的は、スマートフォンなどの汎用端末と低軌道衛星が直接通信するインフラを、日本国内で運用・管理できる体制で整備し、情報通信の自律性を確保することです。5月末に間接補助事業者の公募が締め切られ、楽天・AST連合の選定が固まりました。採択が1社のみという設計は、限られた予算を分散させず、国産網を一本立ち上げることに集中する意思の表れです。裏を返せば、選ばれた1社の実行力に、国家プロジェクトの成否が委ねられる構図でもあります。
参照元
なぜ自律性なのか 経済安全保障の論理
巨額支援の背景には、単一の海外事業者への依存が完成しつつある現実があります。
国内では、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社が、そろってスペースXのStarlinkを使ったスマートフォン直接通信を採用しました。日本の通信史でも珍しい横並びです。ビジネス+ITの同じ記事は、この依存のリスクを次のように指摘しています。海外事業者が主導するネットワークでは、有事や大規模災害時の通信優先度の制御や、サービスエリアの独自設定において、日本側の意思決定を反映させることが困難になります。さらに、データ蓄積や運用ノウハウの海外流出による、デジタル赤字の拡大も懸念材料とされてきました。
通信は、平時には見えない基盤ですが、有事にはそれ自体が主権の問題になります。半導体メモリの調達主権、光電融合の規格主導権と同じく、依存を取るかコストを払って自律を取るかという天秤が、宇宙インフラにも持ち込まれた形です。借りる道は速くて安い一方、主導権は貸し手に残ります。J-LEOは、その主導権を国内に取り戻すための投資と位置づけられます。
参照元
楽天×ASTの計画 合弁と周波数
事業計画と規制緩和が、この1週間で一気にそろいました。
BigGoファイナンスが6月24日に伝えた内容では、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、年内にASTとの合弁会社を設立する方針を示しています。
楽天×ASTの事業計画
合弁設立 2026年内
出資比率 ほぼ対等、楽天が主導
位置づけ 楽天モバイルの子会社
衛星 ASTの低軌道衛星を複数基購入
サービス開始 2026年に一部地域で
ブロードバンド商用化 2026年第4四半期
全国カバー 2027年度
新会社はASTの衛星を購入して日本専用の衛星網を整備し、段階的に自前網へ移行します。将来的には、災害時に楽天回線の契約者以外のスマートフォンにも通信を開放する方向で検討が進められています。国産網が災害インフラとして全キャリアの利用者に開かれるなら、公共性の面でも補助の説明がつきやすくなります。
規制面も同時に動きました。総務省の審議会は6月24日、700MHz帯を使った低軌道衛星とスマートフォンの直接通信を認める答申を出し、9月にも関連省令が改正される見込みです。Starlinkが使う2GHz帯を割り当てられていない楽天にとって、自社が携帯で使う700MHz帯の衛星転用が参入の鍵でした。補助金、合弁、周波数という三つのピースが短期間で噛み合ったことが、今回の株価反応の土台にあります。
参照元
https://finance.biggo.jp/news/6949eff3-6b62-49bb-8481-a2173dbb25fa
ASTという会社 巨大アンテナの賭け
ASTは、市販の無改造スマートフォンと直接つながる宇宙ブロードバンド網を作る唯一の企業を標榜しています。
技術の核は、宇宙で展開する巨大アンテナです。AST公式が2025年12月22日に発表した内容と、国内報道を合わせると、実力は次の水準にあります。
ASTの技術と実証
アンテナ 約220平方メートル級を宇宙で展開
BlueBird 6 低軌道で史上最大の商用通信アレイ
ピーク速度 120Mbps超を想定
国内実証 2025年4月、福島・東京間でビデオ通話成功
実証時の速度 14Mbps、動画視聴が可能な水準
専用アンテナも特別な端末も不要で、手元のスマートフォンがそのまま宇宙とつながる点が、この技術の核心です。地上に基地局を建てる代わりに、宇宙に巨大な基地局を浮かべる発想と言えます。
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