THE GAZETTEを読む(40)2020年6月号気持ちの伝わり方を理解したつもりになっているなら、もう一度考えなおそう
本記事は、ラスムセン・コンサルティングが発行しているメールマガジンTHE GAZETTEのバックナンバーを、日本語訳をしながら、コメントを加えながら読んでいくシリーズの一つである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎(LSP)のファシリテーター・トレーニング修了者向けに書いている。
この記事の引用元原文はこちらのURLから確認することができる。
Zoom会議で、肩身の狭い思いをしていませんか?情報を伝えるにはいいけれど、なんだか平板です。ビデオチャットやビデオ会議には、なぜ私たちが仕事をし、会議に参加し、社交を好むのか、その本質、喜びや不満が欠けているのです。匂いもない。音は空虚で、時には文字化けします。人の顔や肩が見えるだけ。私たちは直感的に、何かが、おそらく感情が欠けているのだと感じました。
ある同僚がLisa Feldman Barrettによる『How Emotions are Made: The Secret Life of the Brain』という本を薦めてくれました。この本を読めば、Zoom会議で何が欠けているのかがわかるかもしれない。この本はとても包括的で、新しい研究が満載なので、私たちは期待以上のものを得ることができました。
この号が発行された時期は、世界中でCovid-19が拡大しロックダウン政策が行われていた時期である。Zoomを筆頭にオンライン会議サービスが急成長した時期でもある。Zoomは欠陥品で、ほとんど対面の代わりは務まらないという意見も少なからず聞こえてきた。
その中で、今号で取り上げたLisa Feldman Barrettの著書は日本語訳も出ている。
上記の本は情動の社会的形成にテーマを絞って書かれているので、脳神経科学をもう少し広く知ってから取り組みたいという方には、同じ著者のこちらの書籍をお勧めする。
感情に関する理論の進化
Barrettは、感情がどのように生成され表現されるか、また、他者が他者の感情を明確に理解する能力について、一般に信じられている多くの事項を上手く解体しています。悲しい、怖い、不安といった感情の意味について、普遍的な理解は存在しません。感情を表現する人の背景や反応の文脈によって、ある人は「不安」を感じると表現し、別の人は同じ組み合わせの生物学的・神経学的変化を「悲しい」と感じると表現するかもしれないのです。また、表情の写真から文脈(言葉の選択と状況)を取り除くと、60%以上が写真の中の顔が表現している感情を読み違えてしまうのです。
「感情は誰もが同じように持っている」「感情はそれに応じた同じ身体変化(表情とか)が伴う」「感情は誰もが同じように理解できる」などといったことが、ここでいう一般に信じられている多くの事項の例である。実際にはそうではなく、人によって理解に差異がある。Barrettいわく、「多様性」が感情についての理解の鍵となっている。
感情構成主義
それでは、個人ごとに表出も解釈も異なるという感情の「多様性」はどうやって生じるのだろうか。その理解の鍵は、感情は「構築」されるということである。
感情は、個々の経験に基づいて「構築」されます。私たちは、心拍数やホルモンの変化などの身体的変化の集合体を経験し、その経験に名前をつけます。名付けられた感情は、実はそれぞれ感情の「カテゴリー」であり、その感情カテゴリーの体験は、個人間でも、同じ個人でも、時間の経過とともに変化します。私たちの身体の変化は、名付けられた感情の「予測」であり、反応ではありません。
簡単に言えば、身体的変化に対して私たちは名前をつける。涙が流れることに「悲しい」と名付けることで、「悲しい」という感情が生まれる。ちょっと奇妙かもしれないが「嬉しい」と名付けたら「嬉しい」となる。
この感情は人生の中でさまざまな場面で次々に構築され、学習される。個人ごとにこの感情を構築する体験は異なるので、個人ごとの感情への理解も多様になるということだ。
感情を言葉にすることへの挑戦
私たちが自分の感情をどのように表現するかは、社会経済的な背景、精神的な哲学、限られた語彙など、多くの要因が関係しています。Barrettによると、他の言語では、英語と同等の概念がない感情表現が一般的だということです。例えば、ロシア語にはアメリカ人が言う「怒り」を表す単語が2つあり、ドイツ語には3つ、中国語には5つの「怒り」を表す単語があるそうです。
Barrettは、私たちの感情の状態を改善し、子供たちが感情をうまく表現できるようにするための心強いアプローチで締めくくっています。「科学におけるほとんどの重要なパラダイムシフトと同様に、このパラダイムシフトは、私たちの健康、法律、そして私たち自身を変える可能性を秘めています。新しい現実を形成するために。」
「感情」は身体的変化を解釈して学習していくものであり、多様性がそこでは生まれるが、コミュニケーションが成立しなくなるほど、解釈が散らばりすぎないように社会的にある程度の基準が形成される。その基準の総体は「文化」と呼ばれるものの一部になる。人々がどのような感情を抱きやすいかというのはその社会や組織の「文化」であるということができるのだ。
Zoomのようなオンライン会議の利用が増える中で、私たちはお互いの「感情」の持ち方や、組織や社会の中での感情表出の傾向などにも敏感になっておかねばらない。お互いがある出来事に対してどうそれを感情として解釈しているのか、そしてその出来事はどう感情として意味づけられるべきなのかについてのコミュニケーションをしっかりと交わすことが重要だ。今回のコロナ禍などはまさにそれが求められる、大きな社会的出来事である。それらに対して、私たちの「感情」を豊かに表現でき、お互いに意見を交わすことができるレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドは大きな貢献ができるだろう。
