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THE GAZETTEを読む(34)2019年4月号 合意できなくても大丈夫にする

 本記事は、ラスムセン・コンサルティングが発行しているメールマガジンTHE GAZETTEのバックナンバーを、日本語訳をしながら、コメントを加えながら読んでいくシリーズの一つである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎(LSP)のファシリテーター・トレーニング修了者向けに書いている。
 この記事の引用元原文はこちらのPDFから読むことができる。

 Fast CompanyにAdrian CostickとChester Elton(『The Best Team Wins: The New Science of High Performance』の著者)による挑発的な記事が掲載されています。この記事によると、最も効果的なチームは、定期的に激しい議論をしているそうです。しかし、多くの企業のリーダーや社員は、調和のとれた職場環境を望んでいます。
 しかし、研究によると、調和は革新的な思考を阻害することが分かっています。課題は、チームが生産的に意見をぶつけ合えるよう、どのようにサポートするかです。

THE GAZETTE 2019年4月号をDeepLで翻訳・筆者が修正

 Adrian CostickとChester Eltonは、ビジネスにおけるチームづくりや社員のモチベーション向上について何冊も本を出している。今号で紹介されている『The Best Team Wins: The New Science of High Performance』はまだ日本語は訳されていないが、邦訳本としては以下の本が2013年にでている。

 また、Fast Companyの記事は以下になる。比較的わかりやすい英語なので、ブラウザに翻訳機能があればおおよその内容はわかるだろう。記事には『The Best Team Wins: The New Science of High Performance』の内容も反映されていて、良い議論を展開するための具体的な声かけ例なども掲載されていて参考になる点も多いので、是非目を通しておきたい。

多様性がもたらす複雑性

 INSEADの組織行動学の准教授であるErin Meyerは、中国、韓国、日本などの儒教社会には「面子」という概念が共通していると述べています。「中国では、自分が正しいと思うことを述べるよりも、他人の面子を守ることの方が重要なのです。」
 これに対し、フランスやドイツの学生は、幼い頃から率直に意見をぶつけることを教わります。フランスの学生は、テーゼ、アンチテーゼ、ジンテーゼ(統合)を通じて推論することを教えられ、片方の主張を積み上げてから、もう片方の結論を出します。ドイツ人は、相手を否定することなく、ある立場について議論することができます。
 Meyerは以下のようにまとめています。ドイツ人、フランス人、オランダ人、デンマーク人は、意見の相違に対して向かい合います。アメリカ人は一般的に対立する態度をとらず、否定的なフィードバックをあまりしません。中国人、日本人、タイ人、インドネシア人は、意見の相違は失礼にあたると考えています。

THE GAZETTE 2019年4月号をDeepLで翻訳・筆者が修正

 INSEADはフランスの経営大学院である。シンガポールやアブダビなどにも分校がある国際的な大学院でもある。その准教授のコメントは、意見の相違に対する態度の文化的な差異についてであり、大変興味深い。テーゼ、アンチテーゼ、ジンテーゼは弁証法と呼ばれるヨーロッパ伝統の哲学を基盤とする思考の型である。多様性を積極的に受け入れ、活かしていこうという発想はいかにもヨーロッパらしい、と感じるのは日本人だからだろうか。
 また、横のコラムには追加でドイツ文化圏に関する情報が写真とともに載っている。

ドイツ人のワークショップ参加者は、ドイツ語にはSachlichkeit(客観性)という言葉があり、意見やアイデアとそれを言う人を分けて考えることができると話していました。

 それぞれの文化圏にある哲学や思想が、日常のコミュニケーションの在り方にも影響を与えているということに、改めてもっと敏感になっておくべきだろう。日本にいる限りにはなかなか気付けないが、意見の相違一つにしても、さまざまな向かい合い方があるということだ。

健全な議論のためのグランドルール

 Costick and Eltonは、議論や意見の相違はチームにとって健全であると説いています。ディベートは最良の解決策を導き出すものです。一般的に、チームはさまざまなアイデアや視点を交換することで、より密接な絆を感じることができます。ダイバーシティ&インクルージョンの重要なポイントは、異なる意見を持つ人たちを集めることではないのでしょうか。
 彼らは白熱した議論を展開するための基本的なルールをいくつか紹介しています。
 ・お互いを尊重し、人ではなく、その立ち位置に挑戦する。
 ・お互いに反応する前に傾聴し、必要ならば意見を明確するための質問をする。
 ・事実を集め、結論を急がない。
 ・仮説ではなく、事実とデータを提示する準備をして、討論に臨む。
 ・「勝つ」ために競争しない。
 ディベートは、最良のアイデアを見つけ、試し、学ぶための機会であり、点数を稼ぐためのものではありません。チームが協力して決定を下した後は、たとえ自分たちが納得できないことがあっても、全員がその決定を尊重し、支持する必要があります。

THE GAZETTE 2019年4月号をDeepLで翻訳・筆者が修正

 加えて、横のコラムでは写真とともに以下のメッセージが書かれている。

2018年の記事に登場したCostickとEltonのグランドルールが、約20年前に起草されたレゴ®︎シリアスプレイ®︎のマナーに非常に似ているのは、小さな偶然ではありません。そして、LSPは、誰もが平等に参加することをより予測しやすく保証することができます。

 意見の差異を知ることが、その場の参加者にとって利点となるかどうかは、その意見への向かい合い方次第であることを忘れてはならない。良い向かい合い方を定めるのが、ここでいう「グランドルール」であり、レゴ®︎シリアスプレイ®︎で「エチケット」と呼ばれるものである。ファシリテーターは、参加者に「エチケット」を明示し浸透することを強く意識しなければならない。
 ここでCostick and Eltonが示しているグランドルールのうち、「仮説ではなく、事実とデータを提示する準備をして、討論に臨む。」はレゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークでは少し注意する必要がある。モデルで現れるのは、事実やデータではなく、その人の経験とそこから生まれる解釈や知識である。皆が解釈や知識を持ち寄る場では、客観性を競うことは生産的ではない。そこで求められるのは、テーゼ、アンチテーゼ、ジンテーゼ(統合)の世界であり、ジンテーゼを確立するための物語(ストーリー)である。つまり、ファシリテーターは、ワークの中で、参加者がお互いのモデルの差異を超える大きな物語(ストーリー)をどれくらい見ることができているかを意識しながら進行していく必要があるということである。

気持ちを言葉や物語に安全に変換する

 私たちの多くは、芸術や音楽がしばしば「言葉を超えた表現」であることを直感的に知っています。絵を描いたり、詩を書いたりすることは、深い感情、時には自分でも気づかなかった感情にアクセスすることができますが、これらは孤独な作業です。LSPは、深い感情にアクセスするグループ活動です。そして、LSPのモデルを参照することで、作り手はモデルから離れて、自分の感情を安全に客観視する自由を手に入れることができます。

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 今号の最後に触れられているのは、モデル作りのなかで行われる感情へのアクセスである。横のコラムにも写真とともにこれに関連するコメントがある。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎を使ったモデル作りも同様に、深い感情にアクセスし、表現するための強力な方法であることがわかりました。

 お互いの意見に、その人のどのような感情が絡んでいるかは、実際の議論では非常に重要な情報である。しばしば、議論に感情を持ち込むべきではないという考え方もあるが、無理に切り離してしまうほうが、その議論の結論が出た後の影響を考えると、その意見に付随する感情も考慮に入れて議論ができるほうがよい。ここで指摘されているようにレゴ®︎シリアスプレイ®︎のモデルには、感情的な要素を入れやすい。それを考えれば、感情を入れやすいということを利点として活かしていくことをファシリテーターは意識すべきということになる。参加者にモデル作りのときに感情的な表現を入れるように推奨したり、質問でも感情面を掘り起こすことを意識させるなどが考えられる。こう書いてきたが、私もワークショップにおける感情の扱い方についてはまだまだ理解できていない部分が多いと感じる。今後の大きな課題と感じているが、読者のみなさんはどうだろうか。

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