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聖なる湧水とその神話|イギリス・ウェールズ【観光レポ】

8月末、雨が降るたびに一枚ずつ夏が剥がされていった。
私の苦手な寂しい秋が迫ってくる!

そうして何か心踊る予定が欲しいと思って、金曜日の夜に急に思い立った。そうだ明日、ウェールズのHolly Wellを見に行こう。

前からずっと気になっていた湧水の教会。
そしてその湧水に関する恐ろしくも美しい神話。

今日はそんな一人日帰り旅行を、写真たちと共に記録したい。



Holly Well という街

バーミンガムから電車で2時間、ウェールズへ向かう。

ウェールズの地形はイングランドの平らでただただ広がるそれよりも個性的で、
見ていて飽きない。

主要駅らしいチェスター駅を越えて一駅先の、こじんまりしたFlint駅で降りた。ウェールズ語ではY Felintと呼ぶらしい。

人気がないFlint駅
ウェールズの国旗
これが最近話題になっている排他的な意味を持ったものなのかどうかはわからないが、
ウェールズにウェールズの国旗があること自体は自然なことである。
ちなみに、私は4つの国の中でウェールズ国旗が一番好きである(可愛いドラゴン)

ここからRiver Dee 沿いにバスで20分ほどのところにHoly Well(聖なる湧水)という街がある。その名がお目当ての教会に由来するのは明らかだ。

グーグルマップの指示ではHoly Well でバスを降りてからもう一つバスに乗ることになっていたが、降りてみると教会が徒歩で15分ほどのところにあるとわかったので、歩いていくことにした。

新しい街ではできるだけ足を使いたい。
歩いて初めて、その街を知ったことになると思うから。

小さな、イギリスの田舎街という感じだ。

人が、いない(笑)
坂を降りていく。帰りはバスに乗る方が楽かも。


St Winefride's Shrine & Well

お目当ての教会は、その坂の途中にあった。
教会の名は「St Winefride's Shrine & Well」。カトリック教会である。
ちなみにグーグルマップでは「The National Catholic Shrine of St Winefride」と表示されてある。

St Winifred Holywell

教会にはギフトショップとミュージアムが併設してあって、私はチケット売場のお姉さんに勧められるまま、先にミュージアムを見て、それから教会に向かうことにした。


男を拒んだことで首を落とされた聖ワインフリード

ミュージアムはこじんまりとした一室に詰め込まれていた。ミサで使う道具や巡礼者たちの残していったガラスボトル、この地から着想を得て書かれた小説などが置いてあった。(それら写真撮影禁止だったのでお見せできず残念)

聖ワインフリードが描かれた刺繍バナー

でも一番興味深かったのはやはり、この教会の名前にもなっている聖ワインフリードという女性の神話についての説明パネルだった。
そもそも私がこの場所に興味を持ったのはこの神話があってこそだった。

Winefrideの首が落とされた瞬間を描いた絵

公式サイトに載っている神話をざっと翻訳してみるとこうである。

Winefride (Gwenffrewi) was the daughter of a local prince named Tyfid and his wife Gwenlo. Her uncle was St. Beuno.
One day, around the year 630, Caradoc, a chieftain from Hawarden attempted to seduce Winefride. She ran from him towards the church which had been built by her uncle. Caradoc pursued her and cut off her head. In the place where her head fell, a spring of water came up. St. Beuno came out from the church, took up her head and placed it back on her body. He then prayed over her and she was restored to life. A white scar encircled her neck, witness to her martyrdom. Caradoc sank to the ground and was never seen again.
Winefride became a nun and, after her uncle’s departure from Holywell for the Monastery of Clynnog Fawr, joined a community at Gwytherin where she became the Abbess. She died there some 22 years later.

ワインフリード(グウェンフレウィ:ウェールズ語)は、地方王子ティフィドとその妻グウェンロの娘で、彼女の叔父は聖ベウノであった。
630年頃のある日、Hawardenの族長であるカラドックがワインフリードを誘惑しようとした。彼女は彼から逃げ、叔父聖ベウノが建てた教会へと向かった。カラドックは彼女を追いかけて首を切り落とした。そしてその首が落ちた場所から泉が湧き出した。聖ベウノが教会から現れ、彼女の首を拾い上げて胴体に戻した。彼が祈りを捧げると彼女は命を取り戻した。首には白い瘢痕が残り、殉教の証となった。カラドックは地面へと沈み、その後姿を見せることはなかった。
ワインフリードは修道女となり、叔父がこのHolywellを離れてClynnog Fawr修道院へ赴いた後、Gwytherinの修道院共同体に加わり、そこで修道院長となった。彼女は22年後にその地で息を引き取った。

St Winifred Holywell 教会公式サイトより

詳しく読みたい人は以下の公式サイトをぜひ覗いてみてください↓

「HollyWellとその伝説の意味」
ウェールズ語と英語どちらでも展示してあってさすがウェールズである。

この神話をどう解釈できるか、ということも書いてあって、興味深かった。

解釈に関するパネル(上写真)はカトリック教的視点と現代人的視点の両方から説明してあった。神話そのままを事実として信じるという解釈と、彼女が取り戻したという「命」を「男に傷つけられてから教会に逃げ入ったことで癒された経験」のメタファーとする解釈があった。

いずれにせよ、聖ベウノとワインフリードは歴史上に実際に存在した人物だということだった。また後者の解釈の方は、実際に聖ベウノがメンタルヘルス関連で苦しむ人を癒す力があったということで、面白いと思った。

命を再び得た後も、彼女の首にずっと残った傷。

この神話をそのままの事実として信じても信じなくとも、
この話からは現代の人が直面する心の病全てに通ずる何かを感じた。


一歩入るとそこは神秘の癒し

それではおまちかね、教会へ向かう。

教会とミュージアムの間にある聖ワインフリードの石像

教会に近づくと、中から外へとプールのように水が張ってあった。
湧水が外へと溢れるままに教会の建物自体、外へと開いていた。

一歩入るとコツン、と冷たい足音が響いた。
石でできた教会のまん中に、星型の貯水槽が設けられている。

きれい。しばらく見つめているだけで、
なんだかとても癒された。
天井まで美しい
エメラルドグリーンの湧水。ここが首が落ちた場所…。
今でもぶくぶくと水が溢れている。
教会内にも聖ワインフリードの石像があった。
首にはあの傷が。

大きなロザリオを手に声を出して祈っている巡礼者もいて、その空間自体がとても心落ち着く場所になっていた。

この泉が湧き出る建物の隣に、もう一つ礼拝堂があった。そのステンドグラスにも聖ワインフリードの絵が書いてあって、その彼女にももちろん首に傷が描いてあった。


入浴も飲むこともできる

教会前方にあったプールは、毎日時間になると入浴ができるらしい。
(決められた服装をしなければならないが)

実際に入浴する家族たちもいた

私は水着など用意がなかったので入浴はできなかったが(というより、入浴するには寒すぎた。手で触ってみると水はとても冷たかった)、代わりにその水を飲むことにした。ちゃんと殺菌されるという蛇口から。

帰りの電車で聖なる水を飲んで読書をする、と思うとすでにワクワクした(笑)
そういえばこないだからBathといい、ミネラル水を飲みすぎている感。笑

帰りはミュージアムの横のギフトショップに寄った。この教会の説明が書いてあるミニブックを購入。付録で小さな美しいロザリオがついてきたので正直そっちが本当の目的だったが(笑)

ロザリオを使って祈る方法や祈る時の言葉まで説明してあって、なるほど、同じキリスト教でもプロテスタントとカトリックでは結構違うのだなと学んだ。


寄り道1|隣のプロテスタント教会

このカトリック教会「St Winefride's Shrine & Well」の隣に、もう一つプロテスタントの教会「St James church」が建っている。坂を降りてきた時にその教会を目的の教会と勘違いしてしまったくらいに隣接していた。

左が先ほどの泉が湧き出る空間の上にある建物。右が、プロテスタント教会。
一番初めの教会を撮った写真で写り込んでいる左上の建物がそれである。

右のプロテスタント教会の方へも入って見学することにした。中に入ると、ボランティアのスタッフらしきおじいさんが話しかけてくれて、教会の中を案内してくれた。

先ほどSt Winefrideの方へ行ってきたのだと言ってカトリック教会とプロテスタント教会が隣接していて面白いと伝えると、彼は「我々は歴史的にみると色々と軋轢もあったりしますが、同じ神を信じる上では共に助け合って来たのです」と言った。

マリアを意味する海の星があった。
プロテスタントだけどどこかカトリックみのある教会だった。

Well-beingカフェをいつも開いているそうで(この時には夕方でもう閉店していた)、なんだかSt Winefrideの方の話で感じた心の病の解釈の方にも通づるものを感じた。


寄り道2|Flint城

Holly Wellの街へ戻ってFlint駅へ戻ると、まだ次の電車まで時間があった。
徒歩5分のところにFLint城が無料で開かれているということだったので、みに行ってみることに。ついでにLiver Deeも近くで見ることにした。

遠くから見たFlint城
向こう側は、イングランドとの境目であるLiver Dee
おお〜!
天空の城ラピュタみたいだ!
てっぺんまで登れたようだが、高所恐怖症の私の膝はガクブル(笑)
渋々諦めた。
ラピュタ〜!(2回目)
ちなみにグアテマラ出身の友人から聞いた話だが、
スペイン語でラピュタは売春婦という意味らしい。
向こうに見えるLiver Dee
あ、人が登ってる!すごい(笑)
もう一つの塔も開放されていた。無料とは思えないくらい楽しい!
この塔の地下は地元のヤンキーっぽい男女グループがたむろっていたので、
絡まれる前に退散(笑) 人を傷つけずぜひ青春を楽しんでくれ。
気持ちのいい場所だ
ウェールズ語と英語で書かれた城の説明。

ウェールズ聖なる泉の旅、寄り道までとても濃い素敵な旅になりました。
もちろん帰りの電車では聖なる水を飲みながら読書を。
癒しの土曜日となりました😆✨ 機会があれば、ぜひ〜!


私はnoteで好きなことを気ままに書いている関西人。現在はイギリスに住んでおり、日々感じたこと・詩や創作・言語の話などの柔らかい話は「きき」が、イギリス院留学・イギリスで参加したイベントなどの形のある話は「KIKI」が書いています。気楽にどんどん書いていく予定ですので、ぜひまた立ち寄ってくだされば、とてもとても嬉しいです。

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