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日本のゴールデンは、たった2,700世帯が決めている ── 放送作家が、見えない"視聴率メーター"に、命運を握られる話 ── テレビ、舞台裏全部見せます

毎週木曜日は「テレビ、舞台裏全部見せます」の日です。

放送作家として長年見てきた、テレビ業界の裏側を、正直に書いていくシリーズです。

今日は、視聴率の話をします。

僕たち放送作家は、毎週、この数字に、一喜一憂しています。
数字が良ければ、企画が続く。
数字が悪ければ、コーナーが飛ぶ。番組が終わる。
僕たちの、仕事の命運は、この数字に、握られています。

でも、その数字が、どうやって出ているか。
これを、正確に知ると、たぶん、みなさん、驚きます。

——

結論から書きます。

日本のゴールデンタイムの番組の生死は、たった数千の家庭のテレビが、決めている

そして、もう一つ。

そのサンプルの少なさが、一線を越えさせた事件も、実際に、起きている

見えない"視聴率メーター"に、命運を握られる話へと、皆さんを誘います。

関東の視聴率は、2,700世帯で、決まっている

まず、事実から書きます。

関東地区の視聴率は、ビデオリサーチさんが、調査しています。
そのサンプル世帯数は、2,700世帯

この、2,700世帯が、東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城・栃木・群馬 ── 関東の、およそ1,800万世帯を、代表しています。

つまり、こういうことです。
関東で、テレビを持っている家の、およそ、6,600軒に1軒。
その、選ばれた家のテレビだけに、専用の測定器が、つながっている。
そして、その家が、何を見たかが、日本中の番組の、視聴率になる。

あなたの家のテレビは、たぶん、測っていません。
僕の家のテレビも、測っていません。
日本の、ほとんどの家のテレビは、視聴率に、1ミリも、影響していないのです。

1%は、40万人。だから、1世帯が、重い

個人視聴率の1%は、関東で、およそ40万人にあたる、と言われています。

40万人。とても、大きな数字です。
でも、それを測っているのは、2,700世帯。
だから、その中の、たった1世帯の行動が、数字を、動かします。

10世帯が、チャンネルを変えれば、数字は、目に見えて動く。
数十世帯が、ある番組に、集中すれば、それは、もう、"大ヒット"になる。

僕たち作り手は、その、見えない数千の家庭に向かって、毎週、番組を、作っている。
顔も知らない。どこの誰かも、分からない。
でも、その人たちのリモコンが、僕たちの、生活を、決めている。

これが、テレビの、いちばん不思議で、いちばん怖い、構造です。

「北関東のネタは、数字がいい」という、業界の言い伝え

ここから、少し、業界の"肌感覚"の話をします。

僕たち作り手の間には、昔から、ある言い伝えが、あります。
それは、「視聴率メーターは北関東に潜んでいる」という話です。

あるデータ分析では、測定器は、各地域の世帯数の比率に応じて、置かれると、推測されています。
そして、東京・神奈川・千葉・埼玉の、4都県だけで、全体の、およそ85%を占める、とも言われますが、、、おそらく群馬、茨城、栃木に多い気がする・・・

だから、僕たち作り手は、無意識に、こう、考えるようになります。
「北関東の、あの地域の人たちが、楽しめるネタを、作ろう」と。

「北関東のネタをやると、やっぱり数字がいい"気がする"」「東武東上線沿いに多いと聞いたことがある」実は「千葉も多い」など色んな説があります。

実はレグザ視聴率という東芝レグザでも視聴率がとれて、それは場所まで分かるらしく、、一番テレビを見ていたのが茨城県守谷市ということが分かり、とある局は守谷特集を1時間ゴールデンでやったという都市伝説みたいな話もあります。

これは、あくまで、業界の言い伝えと、僕の、個人的な実感です。
ビデオリサーチさんは、サンプルが、エリアの縮図になるよう、統計的に、公正に選んでいる、と説明されています。
それでも、作り手は、そういう"気がする"に、賭けたくなる。
これも、視聴率という、見えない相手と、戦う人間の、性なのです。

で、北関東に何故、多いか?? これは、秘密の話なので、いつか何処かで語りたい・・・

そして、一線を越えた人が、いた

サンプルが、少ない。
数世帯を、動かせば、数字が、変わる。

この構造を知ったとき、そこに、魔が差した人が、実際に、いました。

2003年に発覚した、ある大手キー局の、視聴率買収事件です。

そのバラエティ番組のプロデューサーは、探偵業者を雇い、ビデオリサーチさんの、調査車両を、尾行させました。
そうやって、モニター世帯を、割り出す。
そして、水増しした番組制作費を、流用した金で、その家庭に、謝礼を渡し、自分の番組を、見てもらった。

接触した世帯は、23世帯。
実際に、応じたのは、6世帯。
そのうち、調査対象だったのは、わずか、3世帯

たった、3世帯です。
それでも、あとの調査で、視聴率への影響は、最大0.5%と、報告されました。

たった3世帯で、0.5%が、動く。
この事実こそが、視聴率という数字の、サンプルの少なさを、いちばん、恐ろしい形で、証明してしまいました。

このプロデューサーは、懲戒解雇。
局の社長も、責任を取り、当時、大きなニュースになりました。

彼が特別な悪人だった、という話では、ないと、僕は思っています。
「番組がコケたら、おしまいだ」という、追い詰められた作り手なら、誰の心にも、その魔物は、忍び寄る。
サンプルが少ない、という構造そのものが、その一線を、あまりに、近く、見せてしまったのです。

買ってはいけないけど、買いたくなる。
その気持ち分かります。だって、それだけで評価されちゃうんですもの。

視聴率と戦っている

今は、時代が、変わりました。

録画を測る、タイムシフト視聴率。
個人ごとに測る、個人視聴率。
そして、配信の再生数。
番組の評価軸は、リアルタイムの世帯視聴率、だけでは、なくなってきています。

でも、僕たち作り手の、心の奥には、今も、あの、見えない数千世帯が、住んでいます。

顔の見えない、どこかの家庭。
その家の、リモコンの、ほんの一押し。
それに、一喜一憂しながら、僕たちは、今日も、番組を、作っています。

今、YouTubeやネット配信では、実数がしっかりでます。
さらに、そのコンテンツでどれだけの人が入会してどれだけのお金になったか?などこと細かなデータがでます。
そんな中、僅か数千世帯のサンプルで視聴率を出す・・・テレビ・・・
なんとアナログで可愛い存在なのでしょう・・・

そんなテレビが大好きです

まとめ ── 3行で

『関東の視聴率は、たった2,700世帯で測られている。関東の約1,800万世帯の縮図として、選ばれた家のテレビだけが、日本のゴールデンの番組の、生死を決めている』

『個人視聴率1%は約40万人。でも測るのは2,700世帯だから、数世帯の行動で数字が動く。作り手は、顔の見えないその家庭に向けて、毎週番組を作っている』

『そのサンプルの少なさが、2003年の視聴率買収事件を生んだ。たった3世帯で最大0.5%が動いた。構造の怖さが、一線を、あまりに近く見せてしまった』

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このnoteでは、放送作家30年の僕が、100年企業の発想、ヒット商品の裏側、テレビ企画術、業界の本音を、毎日、リアルな視点で書いています。

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【週の更新スケジュール】

日曜:放送作家のビジネスと人生の奮闘記(UTZ連載中)
月曜・金曜:教科書に載せたいプレスリリース
火曜:放送作家の企画論(約30年で通した100本の企画 放送作家・松田敬三の通信簿)
水曜:放送作家が斬る、企業動画の現場
木曜:テレビ、舞台裏全部見せます(本シリーズ)
土曜:コンテンツで売る時代

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