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『【昭和浪漫講談】『魂の殺人』前編  親子の呪縛をぶった斬る!『魂の殺人』と歪んだ教育の正体

子供の頃、白黒のアメリカドラマをみていた。

そこで、親が子を平然と叩くシーンを見た記憶がある。

私自身は叩かれた記憶がないので、怖かったが、アメリカ怖い…くらいにしか思わなかった。

アメリカでは、早い時期から子供を子供部屋へと独立させる。

夜になると、特に子供と大人の時間を区切る——日本人の感覚からすると、どこか違和感がある。

その「違和感」の正体が、この講談の核心です。

(パパン、パン!)

えー、東西古今、人の世の
数ある悩みの中でも、一筋縄ではいかぬが「親子の絆」、いや、時に「親子の呪縛」でございます。

本日お話しいたしますのは、アリス・ミラーという西洋の精神分析医が著しました『魂の殺人』という一冊の書物を発端とする、歴史と教育をめぐる驚きの大活劇。

お相手を務めますのは、お馴染み埼玉の裏仕事人でございます!

(パパン!)

さあ、この『魂の殺人』という本、タイトルからして物々しいが、中身はもっと凄まじい。

まずは魂の殺人とは何か?

「魂の殺人」とは、肉体の命を奪うことではございません!
「あなたのため」という歪んだ善意、しつけという名目のもとに、子供の尊厳をくじき、その「本当の感情」や「自尊心」を根こそぎ圧殺してしまうこと。
これこそが、目に見えぬ心の虐殺、すなわち「魂の殺人」の正体でございます。

そして、彼女が取り上げる西洋の歴史を揺るがした三人の人物——
一人は独裁者ヒトラー、
一人は実在の連続殺人鬼ユルゲン・バルチュ、
一人は麻薬に堕ちた少女クリスティアーネ。

彼らの幼少期をめくってみると、出るわ出るわ、凄惨な体罰、虐待、いじめの嵐!
(※登場人物の詳細は末尾をご覧ください)

親の都合や支配欲を「正しい教育」と偽って叩き込み、子供が本来持っているはずの感情や、一人の人間としての尊厳を綺麗さっぱり消し去ってしまう。 肉体は生きていても、心は殺されている。これこそが、アリス・ミラーの言う『魂の殺人』の本質でございます。

これを大人の支配欲がもたらす「闇教育」と名付け、こいつがヒトラーに盲従する恐ろしい全体主義の土壌を作ったのだと、痛烈に告発したわけでございます。

まずはヒトラーが権力を掌握したことに焦点をおきましょう!

ドイツ国民が世界に対して不満をつのらせていたという側面。
天才的なマインドコントロールとプロパガンダの技術!

ヒトラーはなぜそこまでマインドコントロールの技術をみがけたのでしょうか?そこにはある一冊の本があるのでありました。

それはフランスの心理学者ル・ボンの『群衆心理』!
この本は群衆というものの性質を具に観察して考察した画期的な研究だ!
そこには、個々人は優秀な人であってもそれが群衆になると一つの人格を呈するようになる。
このルボンはフランス革命の群衆をみて、その恐ろしさからこの本を書いた!

そして、時はめぐり一冊の本を取ったヒトラー!
彼はこの本を擦り切れるほど読み、群集心理をコントロールする術を研究!これら全ての条件が最悪の形でガチリと噛み合わさったからこそ、あの独裁者が生まれてしまった。

(パン、パン!)

しかし待ってくださりませ。

ここで我が裏仕事人、おや?と首を傾げた。

闇教育でヒトラーをはじめドイツ国民がともにそうであったとしても、他国の人はどうなのか?
他の国では闇教育はなかったということなのか?

なにもこの「闇教育」、ドイツに限った話じゃございません。

『魂の殺人』を紐解けば、西洋キリスト教圏の国々一帯に、深く、静かに蔓延っていた病根だというから驚きだ。

つまり、火薬は西洋中にばら撒かれていた。

しかし導火線に火をつけたのは、ドイツだけが背負った敗戦の屈辱と飢えだったのでございます!

ともあれ、個人のトラウマ、ル・ボンの群集心理、そして西洋の根深い闇教育。

個人のトラウマだけでは語れぬ、社会の巨大な闇構造がそこにはあったのでございます。

西洋キリスト教圏の国々一帯の闇教育については、また別途「TALES」にて徹底的に解剖してご覧に入れましょう。

(パパン!)

では、ひるがえって我らが日の本、日本の歴史はどうであったか?

ここからが俄然、面白くなってまいります!

明治の初め、西洋からやってきた外国人たちが日本の街を見て、一様に目を見開いて驚いた。「なんだこれは! 日本は子供の天国ではないか!」と。

(パン!)

そうなのです。

西洋では「子供は原罪を背負った未熟な悪だから、自尊心を叩き潰して従順にせよ」と考えられていた。

しかし江戸の日本では、子供は地域の宝、のびのびと育てるもの。子供の尊厳をくじくようなイデオロギーは、もともとの日本の土壌、いわば「台木」にはサラサラ無かったのでございます!

――おっと、「それは江戸の都市部だけの話、地方の貧農では間引きや奉公があったろう」

という野暮なツッコミは野暮天神!

なるほど、生活の困窮による悲劇はあれど、子供を『生まれながらの悪』と決めつけて叩き潰すような不条理だけは、この国のどこを探しても無かったのでございます!

そして、時代が明治維新へと大転換いたしますと、国を強くせんがために、西洋の「管理と抑圧の教育システム」という、お国柄に合わない「穂木」を無理やり接ぎ木してしまった。

その歪みが昭和の高度経済成長期に大爆発!

「子どもを甘やかすな!肉体を鍛えろ!」と石原慎太郎の『スパルタ教育』が大ベストセラー。

子供には冬でも半ズボン、寒風吹きすさぶ中で上半身裸の乾布摩擦!

伝統的な日本のしつけと思われていたものは、実は明治以降に迷い込んできた外来の歪んだOSの成れの果てだったわけでございます。

(パパン、パン!)

さあ、闇を知った上で、我々はこれからどう進むべきか!

ああ、どう子育てをしようか?とお嘆きのおとっつあんに、おっつかさん!

この埼玉も可愛い娘を持つ身、皆様を奈落に突き落として、

「はいさようなら!」


とはなりませぬ。

ミラー自身は精神分析こそが連鎖を断つ鍵だと説いた。
しかしそれは時間も費用もかかる、個人の茨の道。

いろいろと手を尽くし、足を運び探し出したは、灯台下暗し!
いささか地味で気がつかなかったのですが、アリスミラーと同じ分野に光があった!

臨床心理学者トマス・ゴードンの『親業』という一筋の光!

光さす…
光さしているのは後ろですが…

このトマス・ゴードンの思想は、かつての日本人がもっていた「子供を一人の人間として尊重する」という精神と非常に相性が良い。

ゴードンは言います。

「親子は支配と服従ではない。対等な人間同士である」と。


子供の話をじっくり聴く「能動的な傾聴」、
親の気持ちを正直に伝える「わたしメッセージ」、
誰も負けない「勝負なし法」。


これぞ、支配を乗り越えるための最強の武器でございます。

かつて日本人が持っていた「子供の天国」という豊かな台木に、今度はゴードンの「対等な関係」という相性の良い穂木を、丁寧に、優しく接ぎ木していく。

これこそが、何世代も続いた負の連鎖を断ち切る、我ら現代人の役目でございましょう。

過去の闇を知るは、怯えるためではございません。明日、どの道を選ぶかを自分で決めるため。

……おっと、時計を見ればちょうど時間。

まだまだ語りたいことは数々あれど、皆様の貴重なお時間を奪ってしまってはこの埼玉!心苦しい!

皆さんの身近な人間関係に、ほんの少しの光が差し込むことを願いつつ、一先ずこれにて、読み終わりといたします。

(パパパパパン!)

なお、この講談の背景にある史料や分析の詳細は、TALES連載にてじっくりと論じる予定です。
よろしければそちらもご覧くださいませ。

(パン!)

【登場人物補足】

▷ユルゲン・バルチュ:幼少期に母から壮絶な虐待を受けたドイツの連続殺人犯。ミラーが虐待の連鎖の実例として取り上げた。

▷クリスティアーネ:実録手記『クリスティアーネF』の主人公。ベルリンの麻薬汚染の中に沈んだ少女の実話で映画化もされている。

次回は、今回ご紹介したアリス・ミラーの『魂の殺人』をはじめ、この連鎖を紐解く鍵となる【参考書籍】の現物をじっくりご紹介する補足回をお届けします。

本物の史料が持つ重みも、ご覧ください

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