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バリウム日記

早朝8時から健康診断に行ったのだった。朝の8時に設定するあたりがエラいと思う。身長体重・視力聴力・血圧血液・臓器にバリウム、この全てを終えても時刻は8時50分だったので、私はきょうも通常通りに仕事に取り掛かったのである。エラい、エラすぎる。

この記事は単なる健康診断レポートだ。できるだけ愉快に書きたい。

35歳なのでいろいろやった。身長は179センチだった。体重も腹囲も減っていた。朝昼食べないからね。視力は裸眼で左1.5・右1.2だった。個人情報。聴力検査は個室に閉じ込められてピーピーやった。白髪のお医者様に胸を見せ「息吸ってぇ!」と言われるがまま息を吸って吐いた。人のいいなりになるのは気持ちがよかった。

肺活量検査なるものを初めてやった。息をめいっぱい吸い込んで限界まで吐くらしい。私の前にその検査をやっている男性がカーテン越しにおり、看護師さん(?)が「あー、ちょっと吸っちゃいましたね。頑張って最後まで吐き切ってくださーい」と言っている。私の番になった。予習通りにしこたま空気を吸い、死ぬまで息を吐いた。酸欠になってオーバーにうなだれてゼーゼーしてたら、看護師さん(?)が「めちゃめちゃすごいですよぉ。普通は4800くらいですけど、8番さんは5400ですぅ(※桁が合ってるかわからん)」みたいなことを言った。私は得意満面だった。褒められちゃった!

エコー検査みたいなやつで臓器を見てもらった。これは初めてやった気がする。カンゾー・スイゾー・ジンゾー・ナンチャラシンゾーを見てくれるらしく、お腹にジェルを塗りたくって色々とゴリゴリ触られた。エコー画面が見たくて「これ、僕も見れますかね」と聞いたら係の女性は「画面をかたむけると私が見えなくなっちゃうんでぇ」とやんわり断られた。普段、カンゾー・スイゾー・ジンゾー・ナンチャラシンゾーみたいな自分の臓器の場所を意識することはないから「あの、これってどこ見てるんですか」と聞いた。係の人はやさしく「カンゾーですよぉ」と言った。あんまり聞いたら邪魔だろうなと思ったので黙っていたら「ここがジンゾーでぇす」ほえーここが腎臓なんだ、わーちゃんと二つ映ってますねーと言った。妻が妊娠中にエコー検査をされているときどれだけ不安だったろうかと考えた。家に帰ったら妻に「怖かったよね」と感謝を伝えようと思う。

バリウムを飲んで検査する段になった。係の男性はメガネにマスクで「私が担当させていただきまぁす!」と直立不動、九十度のおじぎをした。誇張なしでパワフル系の居酒屋店員みたいな人だった。「バリウム飲むのは5年ぶりくらいだと思います」私が言うと彼は「そうですかー! がんばりましょう! サポートしまぁすよぉ」それでバリウムを飲んで、宇宙船みたいな機械に乗ってそのま宇宙に飛ばされることはなく、室内には店員さんの声。ハキハキとしているのだけどやわらかく「つぎは右でぇす」「そです、じょうずじょうず」「わぁいいですねぇ〜」「あっ、すごっ、うまいですよぉ」と褒めてくれる。やさしい系の男優みたいだ。さながらたまにテレビに出てくる性別不詳のカメラマンみたいだーとも思ったが、冷静になるとこの人はたしかに広い意味ではカメラマンだもんなと思ってニヤニヤしていると「ニヤニヤしちゃいますよねぇ」とそこにも共感してきた。共感力が高いのはいいこと。

数年前のバリウム検査が終わって直後、下剤を飲み、おならかと思っておならしたらクソをフルで漏らしたことがあった。

今回は同じ轍は踏まないぞと決意していたので、今日の私はおならだと思っても「お前おならのふりしたクソだろクソが」と我慢してトイレに駆け込むことにした。寺である。たぶん5回くらいは行った。

昨日の夜、妻からは「替えのパンツと袋持ってったほうがいいよ」と言われ「そうするわ」とクソを漏らす前提で準備しろということを言われたが、今朝の私はその準備をすっかり忘れていた。クソは漏らさなかったから、このあと帰ったら妻に「漏らさなかったよ、余裕だった。あとたくさん褒められた」と報告しようと思う。

(了)

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