【第2回】「#最後の一行小説大賞」の最終結果を発表します。
2025年3月10日〜3月24日に開催した第2回「最後の一行小説大賞」には、合計581作品のご応募をいただいた。ありがとうございます。先日、北海道札幌市内のとある料亭で開催された「最後の一行小説大賞審査会」にて、
・最優秀作品賞(1本)
・優秀作品賞(3本)
が決定したので、一次選考通過作品とあわせて、ここに発表したいと思う。
あらためて、たくさんの作品を投稿し、このコンテストを盛り上げていただいたみなさま、どうもありがとうございました。
-第2回「最後の一行小説大賞」について
<規定>
架空小説『久保田が部長を殴ったらしい』の最後の一行、一文っぽいやつを送るだけ。文字数に制限なし。世間一般における「一行」「一文」の概念に合致するものであれば形式不問。
<架空小説の書き出し>
以下の書き出しで始まる架空小説の最後の一行っぽい文章を送ってください。

──────書き出し──────

<選考方法>
・応募作品すべてを審査委員会でチェックし一次選考を実施
・一次選考を通過した39作品から最終選考を実施
・応募者の名前、SNSリンク等は一切確認せず選考
・審査会の様子は音声収録済み(最下部にリンクあり)
<選考基準>
・そもそも読みたくなるか
・最後の一行っぽさを感じるか
・ありきたりな表現ではないか否か
〈審査員〉
・イトーダーキ(審査委員長)
・新聞社のリアル友だち(札幌在住)
・出版社のリアル友だち(札幌在住)
受賞作品
※(カッコ内)はクリエイター名
※クリエイター名はすべて敬称略
※クリエイター名はエントリーネームまま
最優秀作品賞
花束で顔を隠して笑いを堪えた。
(ももまろうめこ)

選評:最後の一行小説大賞選考委員会
一次審査で3名の審査員のうち2名の票を獲得した作品。最終審査で紆余曲折を経て満場一致、最優秀作品として選出した。審査会では「花束」っていいよね、という至極単純な意見、「とてもおしゃれ」という意見が出た。審査員のひとりからは「おしゃれすぎて一次審査ではあえて外した」という意見も出たが、文章のきれいさ、おしゃれさ、登場人物の関係性やそれまでのストーリーの想像具合を考え、この作品が最優秀作品にふさわしいとして選出。
優秀作品賞
明日、何かが変わる予感だけは、毎日している。
(U)

選評:最後の一行小説大賞選考委員会
最優秀作品同様、一次審査の段階で2名の票を獲得した作品。おそらく生まれ変わった(人生が変わった)であろう久保田と対照的に、この文章の語り手はどうなったのだろう、という想像の余白があるとの意見も出た。審査会では「明日」がいらないのではないか、という高飛車な意見もあったが「夢を追いかけている人は毎日この気持ち」という意見も飛び出し、最後の一行にふさわしいということで優秀作品賞に選出。
優秀作品賞
きっとこの夜景の中で、今も走り続けている。
(ハマダヒデユキ)

選評:最後の一行小説大賞選考委員会
「夜景」の美しさ、想像の余白、お題からの離れ具合など、審査員のもろ好みだった作品。走り続けているのはおそらく久保田なのであろうが、そこに対して思いを馳せている主人公の視点がリアルに描写されている。こちらの作品も一次審査の段階で2名の票を獲得しており、優秀作品として選出。
優秀作品賞
水にさしていたポトスから根がでていたことを、私はやっと気づいたのだった。
(春ひより)

選評:最後の一行小説大賞選考委員会
審査員のひとりから「ポトス(植物)から根が出ていることに気づけるようになった」という具体的な表現をすることで主人公の成長を表しているのではないか? という意見が出た。具体的な行為、気づきから抽象的な概念を表すのは表現技巧的にも優れているということで、審査会では「てにをは」の正しさに関する指摘はあったものの、優秀作品賞に選出。
一次選考突破作品(39作品)
※順不同
※太字は最終選考選出7作品のひとつ
※(カッコ内)はクリエイター名
※クリエイター名は敬称略
・若さとは、実に清々しく、そしてとても厄介だ。
(とらふぐ子)
・今からでも生まれ変われと墓石を撫でる。
(ももまろうめこ)
・部長の好きだった珈琲の香りが、今も給湯室に残っている気がする。
(紫吹はる)
・気づいたら俺も、他の観客と同様に椅子から立ち上がり、中央のリングで勝利の雄叫びを上げる久保田に歓声を送っていた。
(hatha)
・本当に殴ったのは、どっちの「クボタ」だったのか。その謎は残されたままなのだ。
(紫吹はる)
・誰もなにも覚えていなかったのだ。
(紫吹はる)
・毎年、お花をそっと置く。手を合わせるように目を伏せて。
(紫吹はる)
・壁からピンを抜いてその写真を剥がすと、長方形の日焼け跡だけが残った。
(ナカソネ)
・相変わらず、今も私は満員電車に揺られている。
(蒔倉みのむし)
・やっぱりここのカツ丼だけは裏切らない。
(蒔倉みのむし)
・澤村だけがまだ酒を飲んでいる。
(ひらりくるり)
・まったく、流石にいいレタスだ。
(ハマダヒデユキ)
・サワガニが砂浜を横切る姿が見えた。
(ハマダヒデユキ)
・焼肉を取り終えた網には、炭がこびり付いていた。
(ハマダヒデユキ)
・ブランコは、公園で今日もゆらゆら揺れている。
(ハマダヒデユキ)
・その生まれたての仔馬の目元には、見覚えのあるほくろがあった。
(ハマダヒデユキ)
・久保田からの手紙は誰の目にも触れることなく、引き出しの奥で永遠に眠り続ける。
(おおしまはな)
・行ってはいけない、自分のままでいたいなら。
(Michi)
・苦いだけだと思っていたビールは美味しかった。
(静森あこ)
・結局殴られたのは、私の方だったのだ。
(コニシ木の子)
・今生きている、それだけで変化していると思ったっていいのだろう。
(コニシ木の子)
・リングの上で横たわり10カウント目を聞いている久保田に、こんなに嫉妬するとは思わなかった。
(ナツオ)
・あまりに爽やかな風が頬を撫でるので、私たちは声をあげてケタケタと笑った。
(猿荻レオン)
・けれど、もう一度やり直せるとしても、俺はきっとこの道を選ぶだろう。
(時雨)
・渡すはずだった辞表が引き出しの中で眠っているように、私は未だ本当の自分を起こせずにいる。
(藤田ウミト)
・口の中に残る缶コーヒーの甘さが、やけに気になった。
(テル)
・大海を知った蛙は、いつかその拳で海をも割るのかもしれない。
(るおん)
・生まれ変わるために私は今の自分を殺せそうにない。
(木守尚志)
・たぶん守るものがある奴は生まれ変われるんだろう。
(木守尚志)
・春に芽生える生まれ変われそうな予感はいつも夏には萎れてしまう。
(木守尚志)
・私は私物とともに辞表を残し会社を去った。生まれ変わるために。
(木守尚志)
・人を信じさせるのも騙すのも、言葉一つで足りるのだが、その結果は人の数だけある。
(U)
・重力だけが、私たちに等しく課税されている。
(U)
・バキバキに割れたスマホ画面に映る自分と目が合った。
(U)
・そうして僕は電話ボックスの上に缶チューハイを静かに置いた。
(佐和桜介)
・そのナイフは永遠に抜けることはない。
(乃井 万)
・あいつの下手くそな鼻歌が、どこかで聞こえたような気がした。
(月灯里澪音)
一次審査選評:最後の一行小説大賞選考委員会
今回は『久保田が部長を殴ったらしい』というエンタメ風の小説タイトルを提示させていただきました。それに合わせるかのように素晴らしい作品、特に会社を舞台にした最後の一行が多数届きました。全ての作品を拝見したものの、その本当の意図などを分析する技量が審査員側になく、その点が委員会として申し訳なく思うところです。しかし、ひとりの本好きとして、みなさんの想像力、表現力に脱帽。私たちも大変楽しめました。本当にありがとうございました。
審査員特別賞
やっぱりここのカツ丼だけは裏切らない。
(蒔倉みのむし)
選評:最後の一行小説大賞選考委員会
昨年は飛躍しすぎな応募作品を特別賞としたが、今回はどう評価していいか判断に迷うこの作品を特別賞に選出。審査会では最終選考に残してもいいのではないかと議論された作品。一次審査では2名の票を獲得している。「カツ丼」から想像できる定食屋でのサラリーマンの悲哀のようなものを感じたが、ギリギリで審査員特別賞とすることにした。
審査委員会からの総評
改めまして、昨年を大きく上回るご応募をありがとうございました。第2回の開催でしたが、昨年同様、応募作品を審査する側に回ってしまい申し訳ありません、という点をやっぱり述べたいです。今回の応募作品の総数は581作品、応募者数はおよそ100名以上の方々にご応募いただきました。人様の作品を審査する難しさを改めて感じました。課題小説を提示しているのは私なのに、みなさまの作品を見て「うわ、そういう話だったんだ」と何度も驚きました。作品を投稿してくださったみなさま、本企画への感想をお寄せくださったみなさま、審査員一同、心より感謝申し上げます。
審査会の様子(音声)
<内容>
※審査会音声では一次審査39作品のすべてに言及しています。
00:00 オープニングと開催概要
06:22 一次選考突破39作品の紹介(前半)
32:20 一次選考から漏れてしまった良作たち
35:07 一次選考突破39作品の紹介(後半)
53:34 中間、特に気になる作品
01:17:35 実は審査員も応募してました
01:20:22 最終手前の特に気になる作品
01:29:46 ここから最終選考
01:40:16 最優秀作品賞の決定

<あとがき>
何度も書きますが、本当にたくさんのご応募ありがとうございました。審査会(音声配信)でもお話ししているように、作品を評価するのはとても難しいものだな、と改めて難しさを感じています。もし来年も開催するとなれば、もっと納得のいく形で審査を進められるよう、審査方法や基準を模索していきたいと思います。581作品、ぜんぶすごかったです。今日も最後までありがとうございました。
【関連】今回の最優秀作品賞の方のnoteです
【関連】第1回の結果発表はこちら
