26歳の時、2週間の横浜出張で感じた東京・横浜と札幌のギャップ。
「ねぇ、2週間くらいなんだけど、本社がある横浜で生活してもらえる?」
前職時代、女性上司からこう言われた私は、少し迷って「はい」と答えた。少し迷ったのは、私が札幌を離れたくなかったから。私は生まれてこの方、今日に至るまで札幌で暮らしている。
「2週間かぁ」
2週間と言えども、なんやかんや数ヶ月に延長されて、それでなし崩し的に札幌を離れさせられるんじゃないかと疑った。「クリスマスまでには帰るから」ってアメリカ兵が言ってたけど、結局…みたいなそんな感じ。
「じゃあ9月から横浜のマンスリー借りておくから、横浜と都内の仕事の進め方を感じてみてね」
こういう上司いるでしょう。
やたらと地方都市を小馬鹿にして、東京スタイルを礼賛する人。みなさんの周りにもいるでしょう。こういう人たちの口癖は「やっぱ地方はスピード感が遅いんだよなぁ」であり、居酒屋に行けば「っかーー!」と言いながらビールをかっ喰らうのが通例。
この人種はベンチャー企業に特に多い。
そしてこういった方に限って出身は東京ではない。
上司の言葉から漂ってくる、そこはかとない地方蔑視を鼓膜に感じながら「ま、何事も経験」とむしろ貴重な機会をいただけることに感謝をし、かくして私の初めての関東滞在生活は始まった。
出発の日を思い出す。
札幌から横浜に行くためには飛行機に乗らなければならない。札幌駅から新千歳空港まで向かう道程。当時お付き合いさせてもらってた恋人とは
「横浜に2週間いってくるよ」
「え…に、2週間も…」
「大丈夫、永遠の別れじゃないよ」
「で、でも…2週間も…」
「ブラジルに行くわけでもないんだし」
「で、でも…」
大丈夫だって。2週間だって。私が小学生だったらまだ分かる。小学生に2週間も与えれば、心も体も驚くほど成長しちゃうから。でも大人だから。大して変わらないよ。
恋人は新千歳空港まで一緒に来て見送ってくれた。あんなにいい人はいない。「え、俺は今から戦争に行くのか?」と思った。恋人はその手が取れて、新千歳空港の外に飛んでいきそうになるほどブンブンと最後まで手を振ってくれた。
東京・横浜と札幌。
大都市と地方都市の違い。
当時26歳だった私が感じた違いを
6つ紹介しようと思う。
▶︎1.人の数が多い。多すぎる。
その違いは上司と一緒に、とある企業の商談に向かう際の横浜駅でまず感じた。人が多すぎる。私は尋ねた。
「あの〜、今日はどこかで祭りでもあるんですか?」
「ないよ笑。これが普通なの」
「へぇ〜、目が回りそうになりますね」
札幌だと中島公園という街中の公園で夏祭りが開催された時、人が多すぎて困惑することがある。それと同じくらい横浜駅には人がいた。「ワッショイ」という声が聞こえてきそうだった。
「今日は祭りでもあるんすか?」
そう言えばこの上司も喜ぶかな、という意図で言った。ちょっと小悪魔だ。
▶︎2.すれ違う人たちと目が合わない
駅を歩いているとそう感じた。
札幌の地下街を歩いていると、そりゃ色んな人とすれ違う。で、目が合う。別に挨拶を交わすとかそういうことではないけど、目が合うんだ。でも横浜駅では誰とも目が合わなかった。誰とも。みんな顔が死んでいた。
みんな自分の人生を歩むのに必死なんだなと、ここには他人の人生を思うほどの余裕はないのだなと、そう思った。
▶︎3.朝のラッシュで電車に押し込まれる。
駅員さんは人を人だと認識していないのではないか?と思わせるほどにギュウギュウと電車に私たちをパックしていく。押し込まれた電車の中では目の前に汗をかいたおじさんが肩を揺らして「ヒューヒュー」言いながら酸素と二酸化炭素を交換していて「こりゃあ精神的に参るのも分かるな」と思った。
さらに、そんなギュウギュウの電車内で驚くべき光景を目にした。
人で溢れた電車内で、子どもが勉強をしている。
「マジかよ」
そう思った。
その子を発見した時には、私の肉眼レフがその子にギューンとズームされていくような感覚があった。
札幌でも電車内で勉強をする人はもちろんいるし、私もそういう学生だった。でもこんなに人がギュウギュウになっているのにその中で勉強をする「子ども」の姿を見て、
「そりゃ東大とか入るわな。札幌の子は敵わんわ」
そう思った。
▶︎4.東京はどこまで行っても東京。
私が住む札幌だってそこそこ都会だ。人口は197万人だし、まずまずのビル群もある。観光スポットも街中に多くある。
が、東京は別格だ。どこまで行っても東京なのである。電車に乗ってどこの駅で降りてもそこには東京が広がっている。札幌なら札幌駅を中心にビル街が広がるが、そこから電車に15分も乗れば田園風景が広がる。
東京は空が狭い。
地平の遠くに目を向けてもまたビルが広がる。私は遠くにある大きな物が好きなので「うわぁ、でっけーや!」と言いつつ、そういう東京の風景が好きだ。
▶︎5.ビジネスマンはロボットのよう
ある企業の担当者と話していて感じた。彼らはデータを重視する。少しでも自社にとって有益な情報はないか聞いてくる。メリットとデメリットをめちゃめちゃ聞いてくる。「何もそこまで」と思った。札幌ではこういう人たちは少ない。
日本経済を回している自負心みたいなものが漂う。そして「自分は単なる歯車の一つに過ぎない」と認識しているような素振りもある。仕事とプライベートは完全に分離している。
▶︎6.居酒屋のご飯が美味しくない
びっくりした。これは私が北海道にいるからそう感じることなのかもしれないけど、お刺身の盛り合わせを食べてそう感じた。会社の人たちが私を横浜の居酒屋に連れて行ってくれて、
「いやぁ、○○さんは北海道出身の人だから食べ物が舌に合うか分からないけど、ここ美味しいから!」
不味かった。
お米もお刺身もその他も全部。
新鮮さがない。食品サンプルのようだ。
一応、赤身のお刺身を食べた時、
「これは北海道より美味しいです!」
と私はモグモグとアホヅラをしてそう言ったけど、心の中では、
「なんだこの赤身は!なんかヌルくてヌメヌメしてないか?」
そう思いながら、
「これは北海道より美味しいです!」
北海道出身の私がそう言うと、連れて行ってくれた人たちは満足気だった。本当のことを言った方がよかったのかな、と反省した。
▶︎おわりに
なぜみんな東京に行くんだろう。
周囲が就活を始めた頃から持っていた疑問だった。みんな生まれ育った街を離れて東京に行ってしまう。それだけのリターンがあの都市にあるんだろうか?分からない。
日本の各地方から集まった地方の人たちが「東京かくあるべし」みたいな感じで東京を作ってる感。東京ラブストーリーみたいなキラキラした何かを求めて、みんなの理想の東京スタイルを無理して作っているのではないか。知らんけど。
高度経済成長期の日本ならまだ分かる。
東京にしか仕事がない、だとか。
いまは令和だ。
無理して東京に行って疲れることもないんじゃないか、と思うのだが、それは私が本当の東京を知らないからであって、何か魔力や引力めいたもの、そこにしかないメリットがあの街にはあるのかもしれない。
でも、東京に就職した友人たちは口を揃えて
「あぁ札幌に帰りたいよ」
「どうして俺はここにいるんだろう」
なんて連絡が来るのもまた事実で、そんな言葉を聞くたびに私はおばあちゃんにかけてもらった呪いに感謝するのである。
呪い?なんて物騒な?
おばあちゃんにかけてもらった呪いはこうだ。
中学生の頃、大好きだったおばあちゃんに言われた。
「ねぇ、○○はおばあちゃんのこと好きだもんね。なら東京には行かないでそばにいてね」
おばあちゃんのこの言葉は、当時中学生の私にかけられたある種の呪いではあるが、その言いつけ通り、私は札幌に留まっている。呪いの効果はてきめんだ。家族も近いし困った時に助けてくれる友だちも近くにいる。
地方が注目される昨今。私はこれで良かったと思っている。
と、いうようなことを以下の記事を見て感じたので、今記事では地方に住む私の思うところをまとめてみた。
〈記事の内容〉
・島根県のUターン促進広告について
・東京に行った我が子に向けての親の心境を広告コピーに落とし込んだ
・その広告が賞をもらった
ただそれだけの内容なのだが、この記事を読んだときに私が思ったのは「あぁ、東京なんか行かなくてよかった」「だからあれほど東京なんて行かなくていいって言ったのに」
と思って、自分の選択を正当化するのだ。
つまりはこの記事は、
「地方礼賛記事」なのであるね。
疲れたら、みんな地元に戻ってもいいんだよ、と精一杯の温かなまなざしをもってこの記事を終わりたい。
それではまた。
