見出し画像

メルカリは、フリマの外でも稼げる会社になったのか

2026年6月期の第3四半期、国内メルカリのGMV(流通取引総額)は3,399億円。前年同期比16%増でした。

伸びた理由は、利用者数だけではありません。会社の説明によると、利用者の増加、取引頻度の上昇、平均取引単価の上昇が、成長へおおむね3分の1ずつ寄与しています。

誰か一つの要因に頼った伸びではなく、「使う人」「使う回数」「一度に動く金額」がそろって増えた。成熟したように見えた国内フリマが、再び成長速度を上げています。

ところが、現在のメルカリを国内のフリマアプリだけで説明することはできません。

クレジットを中心に利益を伸ばすFintech。長い苦戦を経て再成長へ向かう米国事業。越境取引やBtoCにも広がるMarketplace。会社は、フリマで築いた顧客基盤を使い、モノ以外の価値まで循環させようとしています。

ではメルカリは、フリマの外でも稼げる会社になったのでしょうか。

メルカリは、売買の間に入る会社

メルカリの原点は、個人同士が中古品などを売買するCtoCマーケットプレイスです。

出品者と購入者をつなぎ、取引が成立したときに手数料を受け取る。配送、決済、本人確認、補償なども組み合わせ、知らない個人同士でも取引できる環境を整えています。

この仕組みを成立させるには、買いたい人だけでなく、売りたい人も集めなければなりません。利用者が増えるほど商品が増え、商品が増えるほど買い手も集まりやすくなる。

メルカリが長年かけて築いた最大の資産は、単なるアプリではなく、売り手と買い手が同時に集まる市場です。

現在の事業は、大きく三つに分かれます。

国内のMarketplace、メルペイやメルカードなどを展開するFintech、米国でマーケットプレイスを運営するUSです。

それぞれ別の事業に見えますが、土台には共通する資産があります。2,000万人を超える顧客基盤、売買の取引データ、本人確認、決済、そして利用者との間に蓄積した信用です。

国内フリマは、成熟したままではなかった

国内MarketplaceのGMVは、2024年6月期に前期比9%増となりました。

成熟したサービスとして決して低い成長ではありません。しかし、会社が目指した10%以上には届きませんでした。

越境取引のGMVは前期比3.5倍、BtoCのGMVも2.7倍まで伸びました。それでも、巨大になった国内メルカリ全体を二桁成長させるには足りなかったのです。

続く2025年6月期には、気温が高く冬物商品の動き出しが遅れたことや、不正利用などの影響も受けました。

国内のフリマは大きな市場を築いた一方で、利用者を増やすだけでは成長しにくくなっていました。

流れが変わったのが、2026年6月期です。

第3四半期のGMVは3,399億円、前年同期比16%増。MAU、つまり月に一度以上利用した人の数は4%増でした。

利用者数以上にGMVが伸びたのは、既存利用者の取引頻度や平均取引単価も上昇したためです。

なかでもエンタメ・ホビーカテゴリーのGMVは前年同期比32%増。トレーディングカードやフィギュアなど、希少性があり、価格を比べながら個人間で売買する商品は、メルカリとの相性がよい領域です。

AIを使った検索やパーソナライズ、不正対策、再ログイン時の離脱改善なども重ねています。

派手な新事業が主力を置き換えたのではありません。「探す・選ぶ・安心して取引する」というフリマの基本動作を改善したことが、再加速につながりました。

Fintechは、赤字の新規事業ではなくなった

メルカリの次の柱として、最も形になっているのがFintechです。

メルペイは決済サービスとして始まりましたが、現在の成長を支えているのは、メルカード、あと払い、分割払い、メルペイスマートマネーなどのCreditサービスです。

2025年6月期には、メルカードの発行枚数が500万枚を突破。Fintechの通期コア営業利益は45億円となりました。

将来への投資を続ける赤字事業ではなく、継続的に利益を積み上げる段階へ入ったと会社は説明しています。

2026年6月期第3四半期末の与信債権残高は3,281億円。前年同期比45%増です。同四半期のFintechのコア営業利益も27億円まで伸びました。

この事業が一般的なカード会社と異なるのは、メルカリ内での売買履歴や本人確認済みの顧客基盤と接続している点です。

出品で得た売上金を買い物に使い、メルカードをメルカリの内外で利用し、必要に応じてあと払いやローンを使う。モノの売買から始まった関係を、お金と信用の循環へ広げています。

ただし、与信債権残高は増えるほどよい数字ではありません。

債権が増えれば、金利や手数料を得る機会が増える一方、利用者が返済できない場合の損失も大きくなります。資金調達も必要です。

独自のAI与信、債権回収、債権流動化などを適切に管理できて初めて、Fintechは持続的な第二の利益源になります。

米国事業は、ようやく「残す理由」を示し始めた

メルカリの海外展開は、成功物語とは言いにくい歴史を持っています。

米国事業はGMVの減少が続き、2025年6月期の通期GMVも前期比17%減でした。

一方、固定費やマーケティング費用を見直したことで、コア営業利益は9億円となり、初めて通期黒字を達成しました。

利益は出たけれど、取引規模は縮小している。

これでは、赤字を止めたとは言えても、成長事業になったとは言えません。

それでも2026年6月期第3四半期には、GMVが2億1,100万ドルとなり、前年同期比18%増へ転じました。

商品を探す、出品する、購入するという基本体験を改善し、対象を絞ったマーケティングを行った効果が表れ始めています。同四半期のコア営業利益も2億円の黒字を維持しました。

さらに2026年6月には、米国で世界共通の「メルカリ グローバルアプリ」を開始しています。

これまでの米国事業は、米国内の売り手と買い手を集めるMarketplaceでした。グローバルアプリが目指すのは、日本を含む各地域の商品と米国の購入者をつなぐことです。

日本には、アニメ、ゲーム、トレーディングカード、フィギュア、ブランド品など、海外需要のある中古商品が大量に存在します。

国内メルカリですでに出品されている商品を海外需要へつなげられれば、米国だけで売り手と在庫を集め直す必要はありません。

米国事業はまだ、国内MarketplaceやFintechと並ぶ規模の柱ではありません。ただ、費用を削って作る黒字から、GMV成長を伴う黒字へ移れる可能性は見え始めました。

何でも「メルカリ化」できるわけではない

ここまでを見ると、メルカリが顧客基盤を使って事業を次々に広げているように映ります。

しかし、すべての挑戦が成功しているわけではありません。

スポットワーク事業の「メルカリ ハロ」は、2024年3月に始まりました。

メルカリの本人確認情報や銀行口座を引き継ぎ、仕事で得た給与をメルカリやメルペイですぐに使える体験を目指した事業です。

登録者数は急速に増えましたが、2025年12月18日にサービスを終了しています。

この事実は、メルカリの顧客基盤を使えば、どの市場でも勝てるわけではないことを示します。

Fintechでは、売買履歴、決済、本人確認、信用データを、一つの利用体験としてつなげられます。越境取引や米国事業も、商品を売りたい人と買いたい人をつなぐというMarketplaceの中心機能から離れていません。

それに対してスポットワークでは、利用者を集めるだけでなく、求人企業の開拓、勤務管理、労務対応など、モノの売買とは異なる事業能力が必要です。

メルカリの利用者が使ってくれる可能性と、メルカリが競争優位を持てることは同じではありません。

事業拡大の成否を分けるのは、顧客数の多さよりも、既存の取引データや信用、売買体験をどこまで転用できるかです。

フリマの外へ出たのではない

メルカリは、フリマの外でも稼げる会社になったのか。

答えは、「なり始めている」です。

Fintechは通期黒字を実現し、与信債権残高と利益を伸ばしています。米国事業も赤字縮小だけでなく、GMVのプラス成長を伴う局面へ入りました。

主力の国内Marketplaceも、利用者、取引頻度、平均取引単価がそろって伸びています。

2026年6月期第3四半期には、Marketplace、Fintech、USのトップラインがそろって成長し、連結売上収益は前年同期比22%増の610億円、コア営業利益は66%増の146億円となりました。

会社は、通期予想を売上収益2,200億円以上、コア営業利益400億円以上へ再び上方修正しています。

ただし、その姿は、フリマアプリを卒業して無関係な事業を増やす多角化企業ではありません。

メルカリが広げようとしているのは、フリマで築いた信用です。

モノを売買した履歴、本人確認、決済、与信、売上金、商品データ。これらを別の価値交換へつなげられる領域では、第二、第三の収益源が育ち始めています。

反対に、この資産との接続が弱い領域では、巨大な顧客基盤だけで勝つことはできません。

メルカリの次の姿は、「フリマ以外にも手を広げる会社」ではなく、「フリマで生まれた信用を何度も使える会社」です。

2026年6月期の数字は、その変化が構想だけではなく、利益として現れ始めたことを示しています。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー