観測に依存する存在
NaIシンチレーター測定器で食品中に含まれるCs137の放射線量を測定していたときのことを思い出す。
測定ソフトウェアが動くPCの画面には、横軸に入射した放射線が持つエネルギーの高さ(eV単位)、縦軸に放射線の強度が表示され、ガンマ線領域の光量子一個をセンサーが検知するたびに一本の線が現れる。
30分の測定時間が経つのを待つうちに、画面には次々と線が表示され、それはやがていくつかのピークとして、既知のCs137やK40のものだと識別できる値に集中する。
ピークの識別というけれど、ソフトウェアがある一定の範囲内に収まる線を拾い上げて、それを数え上げるという処理をするだけだ。
多数の事象の重ね合わせの結果として表れたピークの度数を見て、私たちはそこに放射線源がある、あるいは無いと判定する。
物が存在するかしないかという認識は、確かに観測から得られた情報に依存する行為だということを実感できた体験だった。
(2026.1.10)
