扉が少し重いだけなんだ
ないんじゃない
感じてないんじゃないの
あれも、これもを
じょうずに外に連れ出すには、
その扉が、
少しだけ重いんだ──
ちゃんとあるの
うまく掬えないだけ
心のつぶは細かすぎて
言葉の網目を
すり抜けてしまうんだ──
今は、
言葉が拾いに来てくれるのを
もう少しだけ
待っていてもいいかな?
*****
私は若い頃、声を失ったことがあります。
正確には、感情を表す言葉を話そうとすると、声が出なくなるのです。
日常の事務的な受け答えならスラスラ。けれど、いざ心の景色を言葉にしようとすると、
「あ、あ……」
息を呑んでいるのか、吐き出しているのかわからない音だけが漏れ、言葉にはならない。
その代わりに、やけに熱い涙だけが滲み出る。
当時の私は、学生をしながら全く新しい生活と慣れない世界へ飛び込み、毎日、時間が言葉を飲み込んでいく日々。
けれど当時の私には「辛い」という自覚さえなく、ただ出口を失った声に戸惑うばかりでした。
そして今になって思うのは、直接的な原因であろうその頃のストレスだけでなく、幼い頃から抱えていた言葉への苦手意識も、根っこにあったのではないかということ。
話したくないわけではない。
むしろ伝えたい。
けれど、ぴたりと当てはまる言葉が見つからない。
そして、ひとつの言葉に収めたくない…
幼い語彙では、その細かな粒子を掬いきれず、言葉の網をすり抜けてしまう落胆が、少しずつ、言葉の扉を重くしていったのかな、と振り返ります。
大人になるにつれ、すっかり"お喋りマシーン"と化した私ですが^ ^そんな経験があるからこそ、「人のお話を伺う」という仕事に今、貴重さを感じられていると思っています。
人が、ご自分の気持ちを誰かに話すことは、決して簡単なことではありません。
とても大きなエネルギーが要ります。
勇気を振り絞り、ひとつひとつ言葉を選びながら話してくださる。
無理に言葉に当て込もうとすると、違和感でかえって心が揺れることもある。
だから私は、その方の言葉がご自身の中から歩いてくるのを待ちながら、言葉へ辿り着くまでのお気持ちそして言葉にならない時間を大切にしたい。
感情の粒が
言葉を纏えるように──
少し重たくなってしまった扉が、
ほんの少し軽くなるように──
*****
心の中の粒子は、人それぞれ、
色も、形も違う。
もしあなたの周りに、感情をあまり言葉にしない人がいたら、それは、感情が薄いからでも、鈍感だからでもなく。
ただ、粒子の細かさに言葉が追いついていないだけかもしれない。
そしてそれを、ご本人自身もまだ、気づいていないことも。
そんなことを思うだけで、
言葉になる日もならぬ日も、少しだけ、自分や誰かに優しくなれる気がするのです。
*****
言葉は、
探しに行くものばかりではなくて、
ときには、
迎えに来てくれることもある
だから、
少しだけ
待っていてほしいんだ──

enyo*
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🪷マガジン掲載への感謝🪷
記事に新たなエネルギーをいただき
ありがとうございます🦄✨
愛と感謝を込めて🌷
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