笑い泥棒の道── 逃げたい人ほど、前向き🐾
人を泣かせること、怒らせることは簡単
けれど
笑わせることが、いちばん難しい。
──芸の世界で、よく語られる言葉。
° ° ° ° ° ° °
「ありがとうございました〜」
「こちらこそ、ありがとうございました。
お気をつけて、またよろしくお願いしますっ!」
観客の拍手の熱気を、まだ背中にまとったまま
大師匠が楽屋を出ていく。
──早い
とにかく、はけるのが早い。
うっかりしていると、
送り出しが間に合わない。
着物を畳む前座も、大慌てだ。
それにしても
なかなかのお年なのに
楽屋口へ向かう足取りが、やけに軽い。
ある日、思わず声をかけた。
「師匠、今日も素早いですね~」
少し照れたように、こう返ってきた。
「犯人はね、現場からいち早く逃げたいってもんですよ、あはは」
「……?」
その時は、意味がわからなかった。
けれど、しばらくして──
高座の“枕”で、こう語られた。
「こうして高座に上がらせていただく噺家人生も長くなりましたが、自分自身で満足のいく噺ができたことなんて、未だただの一度もございませんなぁ。
終わった瞬間、とにかくこの場から逃げ出したい。そんな心持ちになるんです。
……ええ、気持ちはもう、泥棒ですよ」
客席は大きな笑いに包まれ、
その笑い声を追い風にするように、
すっと“泥棒噺”へと分け入っていく。
° ° ° ° ° ° °
名人と謳われる人は
ただ座っているだけで笑いが起きる
と言われる。
けれど──
あの師匠は
“逃げたい”のではなく
もう次へ向かっている人、
挑み続けている人だった。

° ° ° ° ° ° °
およそ
『道』に完成はない
人は、
"逃げたくなる時" ほど
"前向きな時" なのかもしれない。
名人ですら「未完」なのだから
私たちはなおさら、
未完のままでいい、って思えちゃう^ ^
あのとき楽屋口で見せてくれた
ユーモアとチャーミングさは
今も私の仕事の在り方を
静かに育ててくれている。
° ° ° ° ° ° °
私はコンサートの「音」の現場も好きだけれど
「話芸」の現場も同じくらい好き。
大変なことも多い。
でも、
「笑う」という行為の、鮮やかに
"弾ける"様な波動に惹かれるのです。
「笑う」ことは、
人間ならではの尊い表現。
「笑」という文字は、
かつて花が「咲く」という言葉と
同じ語源を持っていたといいます。
人が笑う時、
その心には一輪の花が綻んでいるのですね。

° ° ° ° ° ° °
あなたを笑わせてくれる人やモノ
あなたを笑顔にしてくれる時間
そして
あなたに笑顔を向けてくれる人を
どうか、大切に。
そして──
あなた自身が
誰かを笑顔にしていることも。
みんなで"笑顔泥棒"になりましょ♪
enyo*
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