1分で読める小説 第57話「相模湖、岐路に立つプライド」バス釣り編
とある夜。
八王子のスタジオ。
休憩所を借りて、海外ライブのミーティング。

ラース
「向こうのプロモーターとコンタクト取れて、
L.Aライブは現実的にいけそうだよ」
グリード
「向こうの箱もいいところ押さえてくれそうだって」
グラトニー
「でも予算合うの?…」
エンヴィーは静かに聞いていた。
プライドも同じく、黙っている。
いろんな意見が出て、この日は各自宿題を持ち帰ることに。
渡航費や滞在費、箱代、プロモーションとチケットの販売売上や
協賛などとのバランス・・・・考えることは山ほどあるのだ。。。。。
みんなが立ち上がりスタジオを出ようとした、そのとき。
プライド
「……エンヴィー」
「明日、空いてるか」
エンヴィー
「…まぁな、どした?」
プライド
「・・・・相模湖、行かないか?」
少しだけ間。
エンヴィーは思う。
(コイツがこういうときは・・・・・何か話があるな・・・)
「いいよ!」
短く答える。
■翌日:相模湖
朝。減水している相模湖。
準備をして早々にスタート。
ボートが水面を滑る。
エレキの音だけが響く。
「二人で釣りなんて、久々だな」
エンヴィーが言う。
プライドは頷くだけ。
岬の先端。
シャローとディープが隣り合うポイント。
「ここ、出そうだよ」
そう言って、魚探を見ながら、エレキを緩める。
ディスタンスをとって岬サイドのシャローにキャスト。
軽めのフリーリグでワームを沈める。
スピニングにPEのスタイル。
ボトムを感じながらカーブフォールとシェイクを入れ、
ゆっくり3mラインまで転がしながら落としていく。
コツ…
「おっ!いたな・・・」
巻きながら
軽く合わせる。
ロッドティップが「クンっ」と入る。
上がってきたのは、30cmちょいの魚。
「まぁまぁ」
リリース。
しばらく沈黙。
風が少しだけ吹く。
プライドが口を開く。
「なぁ……俺さ。。。」
キャストしながら。
「木工所、やめようと思ってるんだ」
エンヴィーは手を止めず
そのままルアーを動かす。
「辞めるって。。。。独立?ってこと??」
プライド
「……まあ・・・・そうなるな」
少し間。
「本気でルアー、作りたいんだ」
ラインが走る。
コンッ
エンヴィー、合わせる。
グッ——
「来た」
少し強めの引き。
「いい魚だな」
寄せる。
38cmの体高のある魚体。
ネットイン。

「で、親方とは話してるの?」
魚を見ながら言う。
プライドは続ける。
「軽く今の状況と思いは伝えてる。・・・・仕事も親方も好きなんだけど…さっ」
「なんか、こう・・・自分の思う形でやりたくて」
「バンドのことも考えると動きやすくなるし、
何より世の中に定番として“残るルアー”を作ってみたいんだよね」
エンヴィー、少しだけ笑う。
「贅沢だなっ」
プライド
「わかってる」
「簡単じゃないのも」
エンヴィー
「そりゃそうだ」
キャスト。
今度はディープ側。
カーブフォール。
コンッ
またバイト。
「今日、魚いるな」
合わせる。
乗る。
さっきより軽い。
上がってきたのは小バス。
「……危ねぇ」
少し笑う。
「この前の野池ルールだったら終わってたな」
プライド、少しだけ笑う。
久しぶりに見る表情。
「……で」
ルアーをトップに変えながら。。。
エンヴィーが言う。
「なんで俺なんだよ、最初」

プライドは少し考える。
「お前はさ……一番、正直に言うから」
風が止む。
水面が静まる。
エンヴィーはルアーを止める。
「まぁ、やってみなよ!応援するしさ」
短く言う。
プライド
「……」
エンヴィー
「それこそ本当にバンド活動も力入れれるのか?」
プライド、うなずく。
「まぁ、覚悟あるなら、やるしかねぇか」
プライド、「・・・・うん」
「来週の集まりで、みんなにも言うよ」
エンヴィー
「だなっ」
プライド
「まぁ頑張るよ」
その瞬間。
水面が割れる。
ドバァッ!!
「うおっ!放置で出た!!」
トップに出た。一呼吸おいてしっかりあわせる。
ロッドが大きく曲がる。
「それ、いいサイズじゃん?」
プライドが言う。
強い引き。
ラインが走る。
ボート際でジャンプ。
「デカい」
ネットイン。
48cmのナイスサイズだ。
エンヴィー無言。
でも——
少しだけ笑っている。
エンヴィー
「まぁ、とりあえず決まったな」

プライド
「ああ、そうだな、ありがとう」
魚をリリース。
水に消えていく。
エンヴィーは空を見る。
「悩んでたって、動いたやつが、先に行くもんだ」
「釣りも、音も、同じだよ」
プライド
「……だよな、お前らしいよ」
ボートは静かに流れる。
次のキャストへ。
——つづく
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