10代は体を感じる力がいちばん伸びる:でも、いちばん勘違いしやすい
これは、僕と同じ10代の選手に読んでほしい。
体が大きく変わって、思うように動けたり、急に動けなくなったり。気持ちも揺れる。まわりの目も気になる。10代の体は、毎日が実験みたいなものだ。
そんな時期に、自分の体とどう付き合うか。これは後から取り返しのつかない種類の話かもしれない。
自分の体の中で何が起きているかを感じ取る力を、内受容感覚(interoception)という。心拍、呼吸、筋肉の張り、疲れ。そういう内側の信号を、どれだけ正確に受け取れるか、という感覚だ。
調べてみて分かったのは、この力が育つのに思春期がかなり大事らしい、ということだった。
体を感じる回路が、今まさに作られている
研究では、思春期は体の信号を処理する脳の回路が大きく育つ時期だと考えられている。「決定的な窓(critical period)」かもしれない、という言い方をされることが多い。まだ「証明された」というより「かなり有力な仮説」の段階だ。でも、子どもから大人になるあいだのどこかに、内受容感覚が大きく育つ特別な期間がある、という見方だ。
しかもこの時期に体を感じ取る力が育つことは、感情をうまく扱う力(自己調整)や、心の回復力(レジリエンス)の発達ともつながっているとされている。逆に、この時期に体の信号の処理がうまくいかないことは、不安や抑うつといった問題と結びつくという報告もある。
つまり、体を感じる練習は、メンタルの強さの土台にもなっている。今この時期に体の声を聞く習慣を作れるかどうかは、たぶん10年後の自分にけっこう大きく効いてくる。
ところが、皮肉なことがある
ここに、ちょっと皮肉な事実がある。
僕は最初、「10代は体の声から目をそらしがちなんだろう」と思っていた。でも、調べたら逆だった。ある研究(10代と大人を比べたもの。ただしこれはまだ査読前の研究なので、話半分で聞いてほしい)では、10代はむしろ大人より体の感覚に強く意識を向けていて、自分はちゃんと感じ取れているという自信も高かった。
問題は、その「自信」と「実際の正確さ」がズレていたことだ。10代は、自分がどれくらい正確に体を読めているかを見極める力──いわば「分かっているかどうかを分かる力」が、大人より低かった。
これは、けっこう怖い話だと思う。感じている。自信もある。でも、それが当たっているかの精度が、まだ追いついていない。「いける」と思って押して、実は壊れる手前だった。そういうことが起きやすいということだ。
体を学ぶ力がいちばん育つ時期が、自分の読みを過信しやすい時期でもある。チャンスとリスクが、同時に来ている。

「育てるべきもの」のリストに、これを足したい
IMGは、成長期(maturation)の選手をどう育てるかをすごく大事にしている。栄養も、睡眠も、休養も、成長の段階に合わせて考える。体が作られていく時期だからこそ、ていねいに扱うという考え方だ。
僕は、その「成長期に育てるべきもの」のリストに、もう一つ加えたい。体を感じ取る力だ。
筋肉や骨や体力と同じように、感じ取る力も今この時期がいちばん伸びる。そして今この時期に、いちばん過信しやすい。だからこそ、ただ「感じろ」じゃなくて、「自分の読みは当たっているか?」まで含めて、意識して育てる価値がある。
これは僕の意見であって、研究がそこまで言っているわけじゃない。でも、方向としては間違っていない気がする。
難しいことじゃなくていい。練習の後に「今日、体はどこが疲れてる?」と自分に一つ聞く。そして次の日、その読みが当たっていたかを一つ確かめる。それだけでも、回路は動く。
後回しにできない時期だからこそ、今日から始めたい。
このnoteでは、体と心のつながりについてこれからも書いていく。よかったらフォローしてもらえたら、一緒に考えられる。
参考リンク
May, A.C. & Tapert, S. (2025). Interoception in Adolescence: Impacts on Mental Health and Adaptive Functioning. Current Topics in Behavioral Neurosciences 70:179–197. https://doi.org/10.1007/7854_2025_580
Brand, S., Lang, K., Bellinghausen, C., Witthöft, M., & Jungmann, S.M. (2024). Interoceptive accuracy in children aged 8 to 13 and their parents: implications for mental health. Cogent Psychology 11(1):2348043. https://doi.org/10.1080/23311908.2024.2348043
[査読前 / preprint]Processing of inner bodily signals: evidence and insight from adolescence. bioRxiv (2025). https://doi.org/10.1101/2025.08.01.668055
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