ギリシア人のジム通い | 古代のオリンピック(古代ギリシアと英単語③)
こんにちは!森倉健斗です。
今回は古代ギリシア人の運動習慣と関連する英単語を解説してみようと思います。
ギリシア人のジム通い
突然ですが、皆さんは運動してますか?
昨今の健康ブームも相まって、意識的に運動しているという方も多いでしょう。
そんな中、近年急激に増えているのが、ジムです。ANY〇IME、チョ〇ザップ、ファ〇トジム24などなど、、、我々の生活圏のいたるところにジムは侵入してきています。
そんな「ジム」という単語の語源は、古代ギリシアにあります!
古代のジム
実は古代ギリシア人も運動することを習慣としていました。しかし、それは健康のためというよりは、市民の義務を果たすため、すなわちポリス(=自らの住んでいる都市)を守るためでした。
古代には現代のような専門の軍人は一部の例外を除いていなかったので、市民自身が戦争の際には戦う必要があり、常に身体を鍛えておく必要がありました。
古代ギリシア人は、ギュムナシオン(γυμνασιον)と呼ばれる体育場で運動を行いました。このギュムナシオンがラテン語に入るとギムナーシウム(Gymnasium)となり、これが英単語に入ってGymnasium「体育館、運動場、ジム」となります。
皆さんがよく目にするGym(ジム)はこのGymnasiumの短縮形です。ちなみにドイツ語でGymnasiumというと(大学進学を目指す)高校という意味になります。
デルフォイのギュムナシオン

ギュムナシオンでは様々な運動が行われていました。例えば、デルフォイのギュムナシオンにはランニングトラックとレスリング場があったことが知られているため、この2つの運動が行われていたことがわかっています。
ギリシア語で「ランニング、徒競走」を意味するのは、ドロモス(δρομος)という単語です。英単語Syndrome は syn「一緒に」と drome 「走る」が組み合わさり、「一緒に一斉に走り出して流行る→症候群」という意味になっています。
ギュムナシオンで運動する人はほとんどが素人で、日常の習慣として運動を行っていました。しかし、中にはプロスポーツ選手として生計を立てている古代ギリシア人も存在しました。
古代ギリシアでは様々な運動競技祭が開催されており、そこで良い成績を残せば賞金を獲得することができました。プロスポーツ選手たちは、これらの競技会に参加することで稼ぎを得ていたのです。
しかしながら、優勝してももらえるのはオリーブの枝で作られた冠のみなのにもかかわらず、最も有名で最も人気だった運動競技祭があります。それがオリュンピア祭です。
古代のオリンピック
オリュンピア祭とは
オリュンピア祭(Ολυμπια)は、その名前が似ていることからわかる通り、現代の オリンピック(Olympic) の元となった祭典です。現代同様、4年に一回開催され、(ギリシア)世界各国から参加選手が集いました。
しかし、オリュンピア祭は必ずオリュンピアという土地で行われ、また1位以外の表彰がない、さらに1位の表彰はオリーブの枝のみで行われることなどはオリンピックとの違いでしょう。
「賞金がもらえないなんて参加する意味ないじゃん!」と思った方もいるかと思いますが、実はオリュンピア祭で優勝することは古代ギリシアでは非常に名誉なことであり、自分の住んでいる都市から顕彰され褒美がもらえたり、獲得した名声を使って商いを行うことも出来ました。故にオリュンピア祭に参加することは大変有意義なことであったのです。
オリュンピア祭の競技

オリュンピア祭では多くの種目が競われましたが、ここではパンクラティオンとペンタスロンを取り上げます。
パンクラティオン(παγκρατιον)は「全て」を意味する パン(παν、連結の関係でπαγとなっている)と「力」を意味するクラトス(κρατος)の合成語で、直訳すれば「全力」という意味になります。
この意味が表す通り、この競技はボクシングとレスリングを合わせたような、すなわち嚙みつきと目つぶし以外何でもありの非常に激しい格闘技でした。日本の総合格闘技団体に「パンクラス」という名の団体がありますが、その名前はおそらくパンクラティオンを元に作られたと思われます。
クラトス(κρατος)は以前説明したAristocracy「貴族政」やDemocracy「民主政」に加えて、Theocracy「神権政治」(theo「神」+cracy「力→支配」)や Bureaucracy「官僚制」(bureau「事務机」←フランス語+ cracy「力→支配」)にもつながる単語です( Aristocracy や Democracy についてはこちらをご覧ください)。
ペンタトロン(πενταθλον)は「5つ」を意味するペンタ(πεντα)と「競技」を意味するアトロン(αθλον)の合成語で、「五種競技」の意味です。5つの競技とは幅跳び、円盤投げ、槍投げ、ランニング、レスリングのことで、合計点で優勝者を決定しました。
ペンタ(πεντα)は、「五角形」を意味する英単語Pentagon(penta「5」+gon「角」)に関係します。またアトロン(αθλον)の意味は、英単語 Athlete「アスリート、運動選手」や Athletic「運動競技の」に引き継がれています。ちなみに水泳・自転車ロードレース・長距離走からなるトライアスロン(Triathlon)も同じ語源です(Tri「3つ」+ athlon「競技」)。
今回はここまで。次回は古代ギリシアの学問と英単語を解説しようと思います。古代ギリシア人は暇だから学問を発展させたんです!
それではまたお会いしましょう。χαῖρε!(さようなら!)
参考文献
村川堅太郎(1963)『オリュンピアー遺跡・祭典・競技ー』中公新書。
高畠純夫・齋藤貴弘・竹内一博(2018)『古代ギリシアの暮らし』
Scott, M. C.(2014), Delphi: A History of the Center of Ancient World. Princeton.
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