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2025 年 6 月施行!熱中症対策が義務化~事業者が押さえるべきポイント解説~

はじめに

こんにちは、建設DX研究所です。
近年、夏の暑さは一層厳しさを増し、熱中症による健康被害は社会全体の課題となっています。今年7月7日には今年最多の30道都県に熱中症警戒アラートが発表されるなど、すでに連日猛暑が続いています。

(出典)https://tenki.jp/forecaster/s_ono/2025/07/07/34514.html

 建設業従事者を含め、屋外や高温多湿な環境で働く方々にとっては、熱中症は生命に関わる深刻な危険です。こうした状況を踏まえ、2025年6月1日より改正労働安全衛生規則が施行され、事業者の熱中症対策が義務化されました。
 炎天下の屋外や冷房等の設備が無い屋内での作業が多い建設業従事者にとって、決して他人事ではなく、むしろ安全と健康を直接守るための、非常に重要なルール変更です。
 本記事では、本改正についての厚生労働省の通知に基づき、建設業事業者にも求められる対策のポイントを分かりやすく解説します。

これまで必要だった熱中症対策

厚生労働省による職場における熱中症対策は「職場における熱中症予防基本対策要綱」によって以下の5項目を中心に、努力義務として示されていました。

① 作業環境管理
② 作業管理
③ 健康管理
④ 労働衛生教育
⑤ 救急措置

(出典)厚労省パンフレット
https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/content/contents/002212913.pdf
※R7年6月1日施行前の内容

「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が義務化

今回の労働安全衛生規則改正により、第612条の2が新設されました。

労働安全衛生規則
(熱中症を生ずるおそれのある作業)
第六百十二条の二 事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の者が発見した場合にその旨の報告をさせる体制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させなければならない。

2 事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め、当該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその実施に関する手順を周知させなければならない。

改正により、以下の3つの措置を講じなければならないとされています。

① 体制整備

熱中症の自覚症状を有する作業者や熱中症が生じた疑いのある作業者を発見した者が作業場の責任者等にその旨を報告するための体制を事業場ごとにあらかじめ整備することが義務付けられました。
具体的には、以下のような手法が有効であるとされています。

  • 電話等で報告を受ける体制の構築

  • 責任者等による巡視、2人以上の作業者が作業中に互いの健康状態を確認する「バディ制」の採用

  • ウェアラブルデバイスの活用(機器だけでは状態を正確に把握できない場合があるため、他の方法と組み合わせて管理の精度を高めることが望ましい)

② 手順作成

熱中症の自覚症状を有する作業者や熱中症が生じた疑いのある作業者への対応に関し、事業場の緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先並びに必要な措置の内容及び手順を事業場ごとにあらかじめ作成しておくことが義務付けられました。
身体冷却措置として、具体的には、以下のような手法が有効であるとされています。

  • 作業着を脱がせて水をかける

  • アイスバスに入れる

  • 十分に涼しい休憩所に避難させる

  • ミストファンを当てる

  • アイススラリー(流動性の氷状飲料)を摂取させる

また、回復後も容体が急変するおそれがあるため、決して一人にしない(例:単独作業の場合は常に連絡が取れる状態を維持する)といった体制も手順に盛り込むことが重要とされています。

(出典)厚労省パンフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001476825.pdf

③ 関係者への周知

上記①で整備した「報告体制」と、②で作成した「実施手順」は、実際にその作業に従事する関係作業者全員に周知しなければなりません。体制整備や手順作成のみではなく、それらを関係作業者全員が正しく理解することも重要です。

(出典)厚労省パンフレット
https://jsite.mhlw.go.jp/toyama-roudoukyoku/content/contents/002212913.pdf

建設現場における留意点

今回の法改正に伴い、特に建設現場で注意すべき重要なポイントがあります。
まず、建設現場のように元方事業者(元請)と関係請負人(下請)など複数の事業者が同一の作業場で混在して作業を行う場合、熱中症対策を講じる義務は、その作業場に関わる全ての事業者に生じます。万が一、違反となった場合、元方事業者だけが責任を問われるわけではなく、関係する全ての事業者が義務違反となることを、認識しておく必要があります。

また、条文解釈として、労働安全衛生法で定められている「雇入れ時教育」(第59条第1項)や「職長等教育」(第60条)において、教育すべき事項とされている「事故時等や異常時における措置」には、今回の改正内容も含め、熱中症が疑われる者に対する応急措置が含まれるとされています。

対象作業は定義されているが、油断は禁物

これらの措置について、義務化の対象作業は、「暑さ指数(WBGT)28度以上又は気温31度以上の環境下で連続1時間以上又は1日4時間を超えて実施」が見込まれる作業とされています。また、この判断にあたっては「天気予報(スマートフォン等のアプリケーションによるものを含む。)、環境省の運営する熱中症予防情報サイト等の活用によって判断可能な場合には、これらを用いても差し支えない」とされていますが、全国各地で熱中症警戒アラートが発表されるなど、酷暑が続くこの季節においては、作業ごとに判断をするというよりも、日常的に対策をすることが求められるのではないでしょうか。

義務を怠った場合、罰則もあり

対策を怠った場合は、6か月以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金が科されます。

労働安全衛生法
第百十九条 
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

まとめ

厚生労働省による職場における熱中症対策の基準は努力義務として示されていた「職場における熱中症予防基本対策要綱」は、今回の労働安全衛生規則の改正により、義務となる熱中症対策の内容や、それが義務である旨がわかるよう改正されています。
義務化内容をしっかりと理解し、その上で改めて対策の全体像である以下の5つの柱に立ち返りながら、自社の熱中症対策を総合的に見直すことが重要です。

おわりに

熱中症対策の義務化は、単なる法令順守ではなく、職場の安全文化を根付かせる契機でもあります。特に、複数事業者が混在する建設現場では、事業者間の連携体制も必要不可欠です。改正内容を正しく理解し、体制整備・手順作成・周知を含む職場における熱中症対策の全体像を踏まえて、自社に適した対策を日常的に実行することが重要ではないでしょうか。
この記事が、皆様の安全対策の一助となれば幸いです。