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兄弟を比べてしまう日は、誰にでもあります。

「お兄ちゃんはできてたのに。」そう言ってしまった夜、眠る子どもに心の中で謝った話(前編)

「お兄ちゃんは、この頃もう一人でできてたよ。」

そう言ったあと、胸が苦しくなったことはありませんか。

子どもは何も言わなかったけれど、少しだけ表情が曇った気がした。

家を出たあとも、その顔が頭から離れない。

夜になって、眠る子どもの顔を見ながら、

「ごめんね。」

心の中で何度も謝る。

そんな経験をしたことがある保護者は、決して少なくありません。



発達相談を受けていると、

「比べちゃいけないって分かっているんです。」

そう話される方が、本当にたくさんいます。

だから私は、その言葉を聞くたびに思います。

きっと、このお母さんも、お父さんも、

比べたいわけではないんだな、と。

本当は、その子に笑顔で育ってほしい。

困らないように。

自信をなくさないように。

将来、少しでも生きやすくなってほしい。

そんな願いがあるからこそ、焦ってしまう。

そして、その焦りが、

「お兄ちゃんはできてたよ。」

という一言になってしまうことがあります。



でも、その一言だけで、

あなたの愛情がなくなってしまうわけではありません。

子どもは毎日、

抱きしめてもらったこと。

一緒に笑ったこと。

心配してもらったこと。

「大丈夫?」と声をかけてもらったこと。

そんなたくさんの愛情の中で育っています。

だから私は、

比べてしまった一日だけを切り取って、

「私はダメな親だ。」

そう思わないでほしいのです。



兄弟がいると、比べてしまう場面はたくさんあります。

朝の支度。

ご飯を食べる速さ。

宿題。

友達との関わり。

先生からの評価。

気づけば、

「あの子はできていたのに。」

そんな言葉が頭に浮かんでしまう。

それは、とても自然なことです。

人は、身近なものほど比べやすいからです。

毎日一緒に過ごしている兄弟なら、なおさらです。

だから、「比べてしまうこと」そのものを責める必要はありません。



私が保育や発達支援の現場で出会ってきた子どもたちも、

兄弟だからといって、同じように育つ子はほとんどいませんでした。

言葉が早い子。

体を動かすことが好きな子。

じっくり考えることが得意な子。

初めてのことが苦手な子。

人と関わるのが好きな子。

一人の時間が安心できる子。

同じ家庭で育っていても、

一人ひとり違う花を咲かせます。

だからこそ、

「お兄ちゃんはこうだった。」

ではなく、

「この子は、この子。」

という視点が、とても大切なのです。



私は、この考え方を

「その子だけの物語」

と呼んでいます。

子どもは、

兄弟の人生を歩いているわけではありません。

その子だけの物語を、

その子だけの歩幅で進んでいます。

早く進むページもあれば、

ゆっくりめくれるページもあります。

少し立ち止まる場面もあります。

でも、それも全部、その子の物語です。

だから、

誰かの物語と比べる必要はありません。

比べるなら、

昨日のその子。

半年前のその子。

去年のその子。

その積み重ねの中にこそ、本当の成長があります。



後編では、

「比べてしまう気持ち」と、どう付き合っていけばいいのか。

そして今日からできる、「その子だけの物語」を育てる関わり方について、一緒に考えていきたいと思います。

一人で悩まなくて大丈夫。

今日より少し、明日が楽しみになる子育てを。



「お兄ちゃんはできてたのに。」そう言ってしまった夜、眠る子どもに心の中で謝った話(後編)

前編では、

兄弟を比べてしまうのは、決して愛情が足りないからではないこと。

そして、一人ひとりには「その子だけの物語」があることをお伝えしました。

では、比べてしまう気持ちと、どう付き合っていけばいいのでしょうか。

今日は、発達支援の現場で私が大切にしてきた考え方をお話しします。



まず知っておいてほしいことがあります。

私たちは、無意識に「比べる」ことで物事を理解しようとすることがあります。

「昨日より暑いな。」

「去年より忙しいな。」

そんなふうに比べること自体は、人が自然にもっている働きの一つです。

だから、兄弟を比べてしまったからといって、

「私は親失格だ。」

そう思う必要はありません。

大切なのは、「比べてしまったこと」ではなく、そのあとです。

「さっきは比べちゃったな。」

そう気づけたなら、もう次の一歩を踏み出せます。



発達支援の現場で、私は子どもたちを兄弟で比べることはありませんでした。

比べる相手は、いつも「昨日のその子」です。

昨日は先生と目が合わなかった子が、今日は一度だけ目を見てくれた。

昨日は一人で遊んでいた子が、今日は友達の近くで過ごせた。

昨日は靴を履くのを嫌がっていた子が、今日は自分から足を入れようとした。

一つひとつは小さな変化かもしれません。

でも、その小さな一歩こそが、その子にとって大きな成長です。

だから私は、「昨日のその子」を大切に見つめてきました。



もし今日から一つだけ始めるなら、こんな関わりをおすすめします。

それは、「その子だけの成長日記」を心の中につけることです。

ノートに書いてもいいですし、スマートフォンのメモでも構いません。

「今日は自分から挨拶できた。」

「苦手な野菜を一口食べられた。」

「妹におもちゃを貸してあげた。」

どんなに小さなことでも大丈夫です。

続けていくと、不思議なことが起こります。

今まで気になっていた「できないこと」よりも、

その子だけの「できるようになったこと」が、少しずつ目に入るようになるのです。



そして、もう一つ大切にしてほしいことがあります。

それは、成長だけを探さないことです。

「今日はよく笑っていた。」

「好きな絵を夢中で描いていた。」

「一緒にいると私まで笑顔になれた。」

そんな何気ない一日も、その子らしさです。

私は相談の中で、保護者の方にこんな質問をすることがあります。

「お子さんと過ごしていて、一番幸せだなと思う瞬間はどんな時ですか?」

すると、多くの方が少し考えたあと、やさしい表情になります。

「寝顔を見ている時です。」

「一緒に笑っている時です。」

「ぎゅっと抱きついてくれた時です。」

その答えを聞くたびに、私は思います。

保護者の方は、ちゃんとお子さんを見ている。

ちゃんと愛している。

だからこそ、悩むのです。



もし今日、比べてしまう出来事があったとしても、大丈夫です。

夜、お子さんの顔を見ながら、

「今日はこんなところが素敵だったね。」

そう一つ思い浮かべてみてください。

言葉にできるなら、ぜひ伝えてあげてください。

「あなたの笑顔が好きだよ。」

「優しいところが好きだよ。」

「頑張っているのを見ていたよ。」

その言葉は、子どもの自己肯定感を育てるだけではありません。

実は、伝えている保護者自身の心も少しずつ変えてくれます。

「比べる親」ではなく、

「この子らしさを見つける親」へ。

その積み重ねが、親子の毎日を少しずつ変えていくのです。



子どもは、兄弟になろうとしているのではありません。

誰かと同じになろうとしているのでもありません。

その子らしく育とうとしています。

だから私たち大人も、

兄弟との違いを見るより、

その子だけの物語に目を向けていきたいですね。

ページを閉じたあと、今日ぜひ一つだけ、お子さんの素敵なところを探してみてください。

きっと昨日は気づかなかった「その子らしさ」が見つかるはずです。

一人で悩まなくて大丈夫。

今日より少し、明日が楽しみになる子育てを。

もし今、お子さんとの関わり方や発達について一人で悩んでいるなら、その気持ちを一人で抱え込まなくて大丈夫です。

私は保育や発達支援に携わる中で、多くの親子と出会ってきました。

大切にしているのは、「困っている行動」だけを見るのではなく、お子さんの強みや、その子だけの物語を一緒に見つけることです。

あなたとお子さんに合った関わり方を、一緒に考えていけたら嬉しいです。

ページを閉じる頃には、少し心が軽くなっている。

そんな時間を、一緒につくっていきましょう。

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