「ここにいれば安心」は死。チャレンジショップ最後の日。
こんにちは。
パン酵母を育てて一喜一憂している、
けんくらです。
前回は、
アーティストとしての時間を作るために、
当たり前だった「家事・TV・朝食」を
潔く捨て去った妻の環境を変えたお話でした。
「何かを始めるために、
まず、何かをひとつやめること」
あの時、
彼女が勇気を持って手放した
「余白」があったからこそ、
今のぼくたちの暮らしがあります。
さて、そんな彼女が、
次に取り掛かったのは
環境を変えること。
それは、
あまりに居心地の良かった
「ぬるま湯」からの卒業でした。
2022年1月。
妻のアトリエは、
半年間お世話になった岩沼市の
「チャレンジショップ」を、
正式に卒業することになりました。
居心地の良さという「毒」
チャレンジショップ。
そこは、
市の支援を受けながら、
格安の家賃で商売の実験ができる
温かい場所でした。
担当の方々は本当に優しい。
家賃のリスクは極限まで低い。
たとえ失敗しても、
誰にも責められない。
正直にお話しします。
凡人の夫であるぼくは、
その温かい環境でいいと、
どこかで思っていた。
「ここなら安心だ」
「無理に外に出なくていい」
守りたい、
というぼくの勝手な本能が、
彼女の自立をどこかで
引き止めていたのかもしれません。
「伝わっていないこと」に気づいた時、本当の自立が始まった
「半年間、とにかく手探りで動き続けて。
でも、全然ダメって気づいたの」
店を解体する前、
彼女がぽつりとこぼした反省。
それは、
「自分では頑張っているつもりで、
誰にも自分の想いが届いていない」
という、痛烈な自覚でした。
支援された環境。
安い価格設定。
知り合いだけのコミュニティ。
そこに浸かっている限り、
自分の本当の声は
「外の世界」には響かない。
ブランド価値をあげるために、
彼女は自ら飛び出す決意をしました。
移転。
料金体系の刷新。
そして、プロの仕事人たちが集まる
シェアオフィスへと、
自分のアトリエを構える。
それは、
「プロとして生きていく」という、
厳しくも誇り高い決意表明でした。
プロの空気が、生ぬるさを削ぎ落とす
移転先のアトリエは、
第一線で活躍するプロたちが集まる、
洗練された空間でした。
その空気に触れた瞬間、
妻の表情が変わったのを
今でも覚えています。
「ただ作品を並べていただけ」の
生ぬるさが浮き彫りになった。
「しつこさ」こそが、最高の誠意
あれから、5年が経ちました。
あの日、
ぬるま湯を飛び出した彼女が
一人のアーティストとして
自立していく過程を、
ぼくは一番近くで見てきました。
行政の保護も、
格安の保険もない場所。
でも、
そこで自分のコンセプトを
「耳にタコができるほど」
叫び続けてきたからこそ。
「アートをギフトに」
今の、唯一無二の
「Art Gift Shop Tulip」がある。
多くの人に想いを届け、
誰かの人生の記念日に寄り添える、
強い、強い根っこが育ったんです。
一回で分かってもらえるなんて
傲慢でしかない。
嫌がられるくらい、
何度も何度も
言葉を尽くして伝え続けること。
その「しつこさ」こそが、
プロとしての、そして人間としての
最高に美しい「誠意」なのだと、
ぼくは彼女から教わりました。
卒業は、寂しいです。
現状から変化するのは怖い。
当たり前にあった温もりが消え、
風当たりの強い場所に立つのは、
誰だって怖い。
でも、
その「震える一歩」を
踏み出す瞬間こそが、
人生が最も鮮やかに輝き出す
時間なのだと思います。
プロとしての一歩を踏み出した妻。
しかし、次なる壁が
彼女を待ち受けていました。
自身の顔となるロゴ作り。
迷走の果てに彼女が辿り着いた、
意外な「原点」とは。
次回、お話しします。
おしまい!!!
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