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【2026創作大賞ファンタジー小説部門】完全版『ユニバース・ノー・サーキュレーション』笑って泣ける宇宙ファンタジー



あらすじ

入退院を繰り返す病弱な弟を自由に遊ばせてあげたい――。

そんな兄の願いから生まれた空想世界。
 
その世界では病弱だった弟は宇宙最強の力を持ち、なんでもできる存在になった。
 
一方、その世界の宇宙では自由と支配を司る存在の均衡が崩れ、
「循環」が失われつつあった。
 
宇宙最強の力を手に入れた弟。
 
パンツを履かない謎のニート・ノーパンマン。
 
そして、この星に生きてるモンスター、くちぎょ。
 
対極の存在たちが出会うとき、止まっていた宇宙の循環が再び動き始める。
 
笑いあり、涙あり、バトルあり。
 
これは、健康とは何か、幸せとは何か

そして自己否定から自由になり、自分の人生を生きるための物語。

第0話:プロローグ

 
宇宙には、循環があった。
 
星は巡り、
 
風は巡り、
 
水は巡り、
 
命は巡る。
 
喜びも悲しみも、
 
出会いも別れも、
 
本来は流れ続けるものだった。
 
しかし――
 
いつからだろう。
 
人は、流れることを恐れるようになった。
 
失うことを恐れ、
 
変わることを恐れ、
 
手放すことを恐れた。
 
正しさを握りしめ、
 
力を求め、
 
誰かを支配しようとした。
 
そして少しずつ、
 
世界から「循環」が失われていった。
 
自由は管理され、
 
希望は制限され、
 
世界は静かに停滞していく。
 
そして今――
 
一人の少年と、
 
一匹の不思議なモンスター、
 
そして、一人の何も持たない男によって、
 
止まっていた運命の歯車が、
 
再び動き始めようとしていた。
 
これは、
 
最強の力を手に入れた少年の物語。
 
これは、
 
パンツを履かないニート、ノーパンマンの物語。
 
これは、
 
失われた宇宙の循環を取り戻す物語。
 
しかし、その始まりは――
 
「弟を喜ばせたい。」
 
ただ、それだけの願いだった。

ユニバース・ノー・サーキュレーション

 
宇宙非循環物語。
 
あるいは、
 
宇宙の循環物語。


――プロローグ 完――


第1話 物語の始まり


第1章 兄と弟



僕には、四歳年下の弟がいた。
 
名前は、まさのり。
 
当時、まさのりは六歳。僕は十歳だった。
 
まさのりは二歳の頃から腎臓の病気を患い、入退院を繰り返していた。
 
毎日、強い薬を飲み、体はむくみ、思うように動けない日もあった。
 
それでも――
 
まさのりは、走ることが大好きだった。
 
僕たちは、とても仲が良かった。
 
病院にいない日は、いつも一緒に遊んでいた。
 
ある日。
 
近所の友達が僕を誘いに来た。
 
「こうすけ! 行こうぜ!」
 
嬉しかった。
 
でも、そのとき。
 
まさのりが、小さな声で言った。
 
「僕も行きたい。兄ちゃん、一緒に遊んで。」
 
泣きそうな顔だった。
 
母が静かに言う。
 
「まさのりは今日は病院で検査だから行けないの。」
 
僕は迷った。
 
友達との約束。
 
まさのりの願い。
 
その二つの間で、心が大きく揺れた。
 
そして僕は、小さく笑って言った。
 
「まさのり、ごめん。また今度ね。」
 
家を出る。
 
後ろから、
 
「兄ちゃん、行かないで。」
 
泣き声が聞こえた。
 
それでも、僕は振り返ることができなかった。
 
遊んでいる間も、
 
ずっと、まさのりのことが頭から離れなかった。
 
何をしていても、少しも楽しくなかった。
 
家へ帰ると、
 
母は静かに荷物をまとめていた。
 
「まさのり、また入院するの。」
 
疲れた顔だった。
 
「私も付き添うから。」
 
「ごめんね。」

父は何も言わない。
 
ただ、威圧的な空気だけが家の中を包んでいた。
 
僕は弟の部屋へ向かった。
 
「……ごめん。」
 
まさのりは少しだけ笑って言った。
 
「いいよ。」
 
その笑顔が、
 
僕には、つらかった。
 
僕は自分を許せなかった。

 
その夜。
 
布団の中で、何度も考えた。
 
まさのりを喜ばせたい。
 
自由に遊べる世界を創りたい。
 
病気も。
 
病院も。
 
何も気にしなくていい世界。
 
そして僕は思いついた。
 
「まさのりが、何でもできる最強の世界。」
 
それから僕たちは、
 
その空想の世界で、何度も何度も遊んだ。
 
それが――
 
この物語の始まりだった。
 

第2章 空想世界の始まり

 
この世界では、
 
人間とモンスターが共存している。
 
もう一つの地球。
 
「くちぎょはどこだーーーっ!!」
 
空いっぱいに、少年の声が響いた。
 
まさのり。
 
十歳。
 
この世界では、宇宙最強だった。
 
何でもできる。
 
空も飛べる。
 
どこへでも行ける。
 
誰にも負けない。
 
無敵の力。
 
「あのくちぎょはどこだー!」
 
まさのりは空へ飛び立つ。
 
宇宙を突き抜け、
 
数秒で地球を何周もし、
 
森を駆け回った。
 
「このくちぎょじゃなーーい!」
 
森中のくちぎょ達が、
 
次々と吹き飛んでいく。
 
くちぎょ「ぎょーーーーー!」
 
まさのり「あっちかな?」
 
指を軽く弾く。
 
次の瞬間。
 
数百キロ先の山が真っ二つになった。
 
遅れて、はるか彼方の大陸が揺れる。
 
「違った……。」
 
本人に悪気はない。
 
そのときだった。
 
とことこ。
 
とことこ。
 
一匹のくちぎょが歩いていた。
 
丸くて、
 
白くて、
 
頭には双葉。
 
少しだけ飛び出た口が特徴の、
 
なんとも言えない生き物。
 
「あっ、まさのりだぎょ。
 
なんの用だぎょ?」
 
「いたーーーー!!」
 
まさのりは飛びつき、
 
ぎゅっと抱きしめる。
 
「やめろぎょーーーー!!」
 
水でできた体が、
 
どんどんしぼんでいく。
 
「いじめないでぎょ!」
 
「だって面白いんだもん。」
 
「面白くないぎょ!
 
大事に扱ってほしいぎょ!」
 
「暇なんだよー。」
 
あの優しかったまさのりが――
 
どうして、こんな少年になってしまったのか。
 

第3章 ノーパンマンという男

 
場面は変わる。
 
同じ地球。
 
とある公園。
 
昼下がり。
 
夏の風が、ゆっくりと吹いていた。
 
ブランコに一人の男が座っている。
 
「……」
 
何をするでもなく、
 
ただ空を見上げていた。
 
名前は、
 
幸野なおき。
 
三十歳。
 
職業――
 
ニート。
 
周囲の人は、
 
彼のことをこう呼んでいた。
 
――ノーパンマン。
 
理由は、とても単純だ。
 
彼は、
 
パンツを履いていない。
 
本人は、それを隠そうともしない。
 
胸を張って生きている。
 
「今日は、何を食べようかなぁ。」
 
ポケットから取り出したのは、
 
五百円玉が一枚だけ。
 
財布すら持っていない。
 
「ラーメンかなぁ……。」
 
「牛丼かなぁ……。」
 
少し考える。
 
「いや、やっぱりラーメンかな。」
 
答えは、最初から決まっていた。
 
お腹が鳴る。
 
ぐぅぅぅぅ……
 
「腹減った。」
 
誰に言うでもない。
 
公園には子どもたちの笑い声が響く。
 
犬の散歩をする夫婦。
 
その真ん中で、
 
ノーパンマンだけが、
 
時間の流れから取り残されたように、
 
ぼんやり空を見つめていた。
 
白い雲が、
 
ゆっくり流れていく。
 
「今日は、いい風だなぁ。」
 
風が髪を揺らす。
 
木々がざわめく。
 
ノーパンマンは、
 
どこか懐かしそうに空を見上げていた。
 
まるで、
 
誰にも見えない何かを眺めているようだった。
 
何を見ているのか。
 
何を考えているのか。
 
それは、
 
本人以外、
 
誰にも分からない。
 
でも、不思議と――
 
その背中は、
 
寂しそうには見えなかった。
 

第4章 二つの物語が動き出す

 
この世界には、
 
二つの物語がある。
 
一つは、
 
宇宙最強の力を手に入れた少年、
 
まさのり。
 
もう一つは、
 
お金も、
 
力も、
 
名誉も、
 
そして――
 
パンツさえ持たない男、
 
ノーパンマン。
 
最強と無。
 
支配と自由。
 
ブラックとホワイト。
 
決して交わるはずのなかった、
 
二つの人生。
 
しかし、
 
運命は静かに動き始めていた。
 
二人が出会うとき、
 
止まっていた宇宙の循環が、
 
再び動き出す。
 
それは、
 
まだ誰も知らない、
 
宇宙で一番小さくて、
 
宇宙で一番大きな、
 
物語の始まりだった。
 
――第1話 完――
 

第2話 ブタはブタだぶよよ
 

第1章 嫌われ者

 
とある訪問看護リハビリステーション。
 
その名は――
 
ケンコウスケット。
 
看護師や理学療法士が利用者のもとへ訪問し、リハビリや看護を行う事業所である。
 
そこで働く一匹のモンスターがいた。
 
理学療法士のブタ。
 
今日も朝から几帳面だった。
 
「報告書の誤字が多いぶよ。」
 
「資料は番号順に並べるぶよ。」
 
「床にゴミがあるぶよ。」
 
「机は毎日掃除するぶよ。」
 
「時間は守るぶよ。」
 
職場のみんなは苦笑いする。
 
「また始まった。」
 
「細かいなぁ。」
 
ブタに悪気はない。
 
正しいと思うことを、
 
そのまま口にしているだけだった。
 
だから今日も、
 
仕事終わりに飲みに誘われることはない。
 
一人で駅へ向かう。
 
満員電車に揺られ、
 
夕焼けの道を歩く。
 
今日も一人。
 
誰かと笑いながら帰った記憶は、
 
もう思い出せなかった。
 

第2章 また説教

 
休日。
 
気分転換に、
 
ブタは森を散歩していた。
 
鳥のさえずり。
 
木漏れ日。
 
穏やかな森。
 
……のはずだった。
 
「ぎょーーーーーー!!」
 
今日も、
 
くちぎょの悲鳴が響く。
 
「くちぎょはどこだーーー!!」
 
空からまさのりが飛んでくる。
 
木は折れ、
 
岩は砕け、
 
森は今日もボロボロだった。
 
「止めるぶよーーー!!」
 
ブタは全力で駆け出した。
 
「いじめはダメだぶよ!」
 
「森を壊したらダメだぶよ!」
 
「自然は大事だぶよ!」
 
まさのりは振り返る。
 
「あっ。」
 
「また、お前か。」
 
少しだけ眉をひそめる。
 
「なんか……。」
 
「お前、嫌いなんだよ。」
 
ブタは首をかしげた。
 
「ぶよ?」
 
まさのりは鼻をひくつかせる。
 
「油っぽい。」
 
「近づくな。」
 
ブタは自分の体を見た。
 
「油なんてついてないぶよ?」
 
「知らない。」
 
「でも、お前は嫌い。」
 
「見てるだけでイライラする。」
 
そう言い残し、
 
まさのりは空へ飛び去った。
 
一瞬だった。
 
静けさが戻る。
 
しおしおになったくちぎょが、
 
その場に座り込んでいた。
 
「助かったぎょ……。」
 
ブタは安心して笑う。
 
「くちぎょ!
 
遊ぶぶよ!」
 
くちぎょは少し困った顔をする。
 
「……。」
 
「今はそんな気分じゃないぎょ。」
 
「助けてあげたぶよ?」
 
「ありがとうぎょ。」
 
「でも……。」
 
「今日は、水が足りないぎょ。」
 
ブタは首をかしげる。
 
「ぶよ?」

くちぎょ。
 
「なんでもないぎょ!」
 
そう言って、
 
とことこと歩いて行ってしまった。
 
ブタだけが残る。
 
風が吹く。
 
葉っぱが揺れる。
 
「……今日も一人だぶよ。」
 
小さくつぶやき、
 
また歩き始めた。
 

第3章 ノーパンマン

 
夕方。
 
公園。
 
ベンチ。
 
「腹減った。」
 
男が一人、
 
空を見上げていた。
 
ノーパンマン。
 
その前を、
 
ブタが歩いていく。
 
ノーパンマンは目を輝かせた。
 
「あっ。」
 
「ブタだ。」
 
少し考える。
 
「美味しそう。」
 
「ぶよーーーーーー!!」
 
「食べ物じゃないぶよ!!」
 
「非常食。」
 
「だから違うぶよ!!」
 

第4章 ラーメン

 
ぐぅぅぅぅぅ……
 
ノーパンマンのお腹が鳴る。
 
ブタは少し困った顔をした。
 
「お腹すいてるのかぶよ?」
 
「うん。」
 
「……ラーメンくらいなら、おごるぶよ。」
 
ノーパンマンの表情が一気に明るくなる。
 
「マジで?」
 
「やったーーーー!!」
 
「じゃあ遠慮なく。」
 
二人はラーメン屋へ向かった。
 
歩きながら、
 
ブタが聞く。
 
「そういえば、
 
名前は何ぶよ?」
 
「幸野なおき。」
 
「でも、みんなにはノーパンマンって呼ばれてる。」
 
ブタは足を止めた。
 
「ノーパンマン?」
 
「本当にノーパンなのかぶよ?」
 
「そうだよ。」
 
「なんでノーパンなんだぶよ?」
 
ノーパンマンは、
 
真顔で答えた。
 
「信念だから。」
 
「…………。」
 
ブタは黙った。
 
妙な沈黙が流れる。
 
そして、
 
何事もなかったように、
 
二人はラーメン屋へ入った。
 
ラーメン到着。
 
三十秒。
 
完食。
 
「替え玉。」
 
「チャーシュー追加。」
 
「餃子。」
 
「替え玉もう一つ。」
 
ブタは目を丸くする。
 
「ぶよよよよ……。」
 
「ホントに遠慮ないぶよ。」
 
ノーパンマンは満足そうだった。
 
「ごちそうさま。」
 
「美味しかった。」
 
その笑顔を見て、
 
ブタは少しだけ笑った。
 
誰かとご飯を食べたのは、
 
久しぶりだった。
 

第5章 帰る場所

 
ノーパンマンが立ち上がる。
 
「お礼するよ。」
 
「今から家、来る?」
 
ブタは驚く。
 
「えっ?」
 
「いいのかぶよ?」
 
「うん。」
 
「いいよ。」
 
少し迷ってから、
 
ブタは笑った。
 
「……行くぶよ。」
 
夕焼けの道を、
 
二人はゆっくり歩き始めた。
 
まだブタは知らない。
 
この出会いが、
 
自分の人生を変えることを。
 
――第2話 完――


第3話 居場所


第1章 古い平屋

 
ノーパンマンとブタは、
 
住宅街を抜け、
 
細い坂道を登る。
 
その先に、
 
一軒の古い平屋が建っていた。
 
屋根も壁も古びている。
 
今にも壊れそうだった。
 
それでも、
 
庭は驚くほど広い。
 
畑まである。
 
ブタは思わず足を止めた。
 
「ここが家ぶよ?」
 
ノーパンマンは頷いた。
 
「そうだよ。」
 
「もらったんだ。」
 
玄関を開ける。
 
「ただいま~。」
 

第2章 ゴリ子

 
奥から、
 
大きな足音が近づいてきた。
 
ドシン。
 
ドシン。
 
姿を現したのは、
 
大きな女性だった。
 
「おかえり。」
 
笑顔は、とても優しい。
 
ノーパンマンはブタを見た。
 
「友達。」
 
ブタは少し照れる。
 
「ぶよ?」
 
女性は優しく微笑んだ。
 
「私はゴリ子。」
 
「この人の妻よ。」
 
ブタは固まった。
 
「……えっ?」
 
思わずノーパンマンを見る。
 
「結婚してるぶよ?」
 
「うん。」
 
ノーパンマンは平然と答えた。
 
「してるよ。」
 
ブタはしばらく動かなかった。
 
「ノーパンなのに……。」
 
ゴリ子は声を出して笑った。
 
「あははは!」
 
「面白い子ね。」
 
ブタは少しだけ笑った。
 

第3章 帰宅

 
ガチャ。
 
玄関が開く。
 
「ただいまー。」
 
優しそうな青年と、
 
年配の男性が帰ってきた。
 
「おかえり。」
 
ゴリ子が笑顔で迎える。
 
青年がブタに気付く。
 
「あっ!」
 
「初めまして。」
 
「僕はマヨ。」
 
年配の男性も穏やかに微笑んだ。
 
「楊枝だ。」
 
ブタは少し緊張しながら頭を下げる。
 
「ブタはブタだぶよよ。」
 
「よろしくぶよ。」
 
マヨは笑顔で頷いた。
 
「よろしく。」
 
楊枝も静かに頷く。
 
「よろしく。」
 
その短い一言だけだった。
 
でも、
 
ブタは少しだけ肩の力が抜けた。
 

第4章 夕食

 
その夜。
 
食卓には、
 
温かい料理が並んでいた。
 
なぜか、
 
大量のバナナもある。
 
ゴリ子が料理を運ぶ。
 
マヨが皿を並べる。
 
楊枝がお茶を入れる。
 
ノーパンマンは、
 
何もしない。
 
もう席に座っていた。
 
「いただきます。」
 
みんなの声が重なる。
 
ブタは周りを見渡した。
 
少し不思議そうな顔をする。
 
「家族ぶよ?」
 
ノーパンマンは首を振る。
 
「違うよ。」
 
「でも、一緒に暮らしてる。」
 
ブタは首をかしげる。
 
「変な家ぶよ。」
 
ゴリ子は優しく笑った。
 
「そう?」
 
「私は好きよ。」
 
食卓には笑顔があった。
 
誰も命令しない。
 
誰も否定しない。
 
ただ、
 
今日あった出来事を話しながら、
 
みんなで笑っている。
 
ブタは箸を止めた。
 
こんな食卓は、
 
初めてだった。
 
思わず小さくつぶやく。
 
「……なんか。」
 
「いい家ぶよ。」
 
ゴリ子は嬉しそうに笑った。
 
「ありがとう。」
 
ブタは少し照れながら、
 
またご飯を食べ始めた。
 
心の中が、
 
少しだけ温かくなった。
 

第5章 宇宙最強の孤独

 
その頃。
 
山の上には、
 
大きな豪邸が建っていた。
 
広い庭。
 
大きなプール。
 
何でもそろっている。
 
それでも、
 
家の中は静まり返っていた。
 
長い食卓。
 
並ぶ豪華な料理。
 
ステーキ。
 
寿司。
 
ケーキ。
 
好きなものばかりだった。
 
それでも、
 
向かいの席には誰もいない。
 
まさのりは一人、
 
静かに手を合わせた。
 
「いただきます。」
 
返事はない。
 
「ごちそうさま。」
 
返事もない。
 
夜。
 
キングサイズのベッド。
 
まさのりは天井を見つめていた。
 
朝になれば、
 
学校へ向かう。
 
先生たちは頭を下げる。
 
勉強も、
 
運動も、
 
誰も敵わない。
 
だから、
 
誰も近づいてこない。
 
昼休み。
 
教室を見渡す。
 
みんな笑っている。
 
でも、
 
その輪の中に、
 
自分はいない。
 
「……。」
 
何でもできる。
 
何でも手に入る。
 
でも、
 
友達だけは、
 
どうしても手に入らなかった。
 

第4話 新しい遊び

 

第1章 休日

 
休日。
 
昼過ぎ。
 
やっと起きてきたノーパンマンが、
 
大きくあくびをした。
 
ゴリ子が苦笑いする。
 
「やっと起きたの?」
 
ノーパンマンは眠そうに目をこすった。
 
「昨日、忙しかったから。」

庭を掃除していたブタが、
 
顔を上げる。
 
「何してたぶよ?」
 
ノーパンマンは少し笑う。
 
「秘密。」

そして、
 
「みんなで遊びに行こう。」

ブタは首をかしげた。
 
「どこに行くぶよ?」
 
「ボウリング。」

「ボウリング?」
 
ノーパンマンは頷く。
 
「球を転がして、
 
ピンを倒す遊び。」

ブタの目が輝いた。
 
「面白そうぶよ!」
 
「やってみたいぶよ!」
 
ゴリ子も、
 
マヨも、
 
楊枝も賛成した。
 
五人で出かけるのは、
 
今日が初めてだった。
 

第2章 ボウリング大会

 
ボウリング場。
 
ブタは勢いよく助走した。
 
「いくぶよーーー!!」
 
ボールを投げる――
 
はずだった。
 
足を滑らせ、
 
そのままレーンを転がっていく。
 
「ぶよーーーーーー!!」
 
ガシャーン!!
 
ピンが全部倒れた。
 
ストライク。
 
店員も、
 
周りのお客さんも拍手する。
 
ブタだけが、
 
目を回していた。
 
「痛いぶよ……。」

みんなが大笑いした。
 
次はマヨ。
 
マヨは一番重い、
 
十六ポンドのボールを手に取る。
 
ブタは目を丸くした。
 
「そんな重いの持てるぶよ?」
 
マヨは少し照れながら笑う。
 
「大丈夫です。」

軽く腕を振る。
 
ドォォォン!!
 
ピンが全部吹き飛んだ。
 
ストライク。
 
ブタは口を開けたまま固まる。
 
「腕力すごいぶよ……。」

マヨは困ったように笑った。
 
「あっ……。」

「少し力を入れすぎました。」

次は楊枝。
 
何も言わない。
 
静かに構える。
 
無駄のない美しいフォーム。
 
スッ。
 
カラン。
 
ストライク。
 
ブタは思わず聞いた。
 
「プロぶよ?」
 
楊枝は少し笑う。
 
「昔、少しな。」

それ以上は話さなかった。
 
次はノーパンマン。
 
後ろを向いたまま、
 
適当にボールを投げる。
 
ブタは慌てる。
 
「前を見てないぶよ!」
 
ボールは大きく曲がり、
 
ピンへ向かう。
 
ガシャーン!!
 
ストライク。
 
ブタは目を丸くした。
 
「なんでぶよ?」
 
ノーパンマンも首をかしげる。
 
「なんでだろう。」

最後はゴリ子。
 
「いくわよーー!!」
 
思い切り投げた。
 
ドゴォォォォン!!
 
ボールはレーンを突き破り、
 
壁を壊し、
 
奥の機械まで吹き飛ばした。
 
店内が静まり返る。
 
店員が青ざめる。
 
「お、お客様ーー!!」
 
ノーパンマンはポケットから、
 
五百円玉を一枚取り出した。
 
カウンターへそっと置く。
 
「弁償します。」

ブタは五百円玉と、
 
壊れたレーンを見比べた。
 
「絶対足りないぶよ!!」
 
ノーパンマンは真剣な顔で頷く。
 
「逃げろーーー!!」
 
五人は笑いながら、
 
ボウリング場を飛び出した。
 

第3章 笑い声

 
夕焼けの道。
 
五人は笑いながら歩いていた。
 
ブタが満足そうに笑う。
 
「楽しかったぶよ。」

少し間を置いて、
 
ため息をつく。
 
「でも、明日は仕事ぶよ。」

マヨも頷いた。
 
「僕も仕事です。」

楊枝は前を向いたまま答える。
 
「朝が早い。」

ゴリ子も肩をすくめた。
 
「私も仕事よ。」

みんなの視線が、
 
ノーパンマンへ集まる。
 
ノーパンマンは平然としていた。
 
「俺も、いろいろ忙しい。」

ブタは首をかしげる。
 
「ノーパンマンは仕事しないぶよ?」
 
ノーパンマンは真顔で答えた。
 
「してるよ。」

「人知れず、世界の平和を守ってるんだ。」

「昨日の夜中も、自家用ジェットでイタリアまで行ってきた。」

「朝に帰ってきたから、昼まで寝てた。」

ブタは目を丸くする。
 
「本当ぶよ?」
 
マヨは苦笑いした。
 
「また始まりました。」

楊枝も小さく笑う。
 
「いつもの冗談だ。」

ゴリ子は微笑む。
 
「ふふっ。」

「また変なこと言ってる。」

ノーパンマンは少し不満そうだった。
 
「本当だよ。」

ブタは少し考えた。
 
「パンツを履いてないのも本当ぶよ?」
 
ノーパンマンは迷いなく答える。
 
「本当だよ。」

「それが俺の信念だから。」

ブタは真剣に頷いた。
 
「変な信念ぶよ。」

みんなが笑った。
 
その会話を、
 
空からまさのりは聞いていた。
 
「……信念?」
 
「パンツを履かない?」
 
「仕事もしない?」
 
眉間にしわを寄せる。
 
「そんなのダメだ。」

「廃人になってしまう。」

口元がゆっくり緩む。
 
「面白い。」

「絶対にパンツを履かせてやる。」

その日。
 
宇宙最強の少年は、
 
初めてノーパンマンという男を知った。
 
――第4話 完――


第5話 刺客


第1章 最初の刺客

 
まさのりが
 
指を鳴らす。
 
パチン。
 
空間が黒く揺れ始めた。
 
そこから二体のモンスターが姿を現す。
 
一人は、
 
真っ白なブリーフ姿。
 
「ブリーフ太郎、参上!!」
 
もう一人は、
 
大きなトランクス姿。
 
「トランクス次郎、参上!!」
 
二人は同時に頭を下げた。
 
まさのりはニヤリと笑う。
 
「ノーパンマンってやつを知ってるか?」
 
「いいえ!!」
 
「パンツを履かない男だ。」

一瞬、
 
空気が止まる。
 
ブリーフ太郎が拳を握った。
 
「なんだと!?」
 
トランクス次郎も目を見開く。
 
「俺たちの存在を否定している!!」
 
ブリーフ太郎が叫ぶ。
 
「パンツを履かないなんて許せん!!」
 
まさのりは立ち上がった。
 
「行け。」

「必ずパンツを履かせてこい。」

二人は勢いよく敬礼した。
 
「はい!!」
 
そのまま空へ飛び出していった。
 

第2章 パンツを履け!!

 
昼。
 
公園。
 
ノーパンマンはベンチで寝転び、
 
空を見上げていた。
 
「あー。」

「平和だ。」

その時だった。
 
「見つけたーーー!!」
 
ブリーフ太郎と、
 
トランクス次郎が飛び出してくる。
 
「ノーパンマン!!」
 
「パンツを履けーー!!」
 
ノーパンマンは二人を見た。
 
「嫌。」

一言だけ言うと、
 
全力で走り出した。
 
「待てーー!!」
 
町中で鬼ごっこが始まる。
 
ブリーフ太郎が叫ぶ。
 
「俺のブリーフを履け!!」
 
トランクス次郎も負けていない。
 
「いや!!
 
トランクスの方が快適だ!!」
 
「ブリーフはフィット感が命だ!!」
 
「トランクスは開放感だ!!」
 
走りながら、
 
二人は言い争いを始める。
 
ノーパンマンは振り返りもせず答えた。
 
「どっちも履かない。」

二人は同時に叫ぶ。
 
「ゆるさーーーん!!」
 

第3章 営業中

 
逃げ込んだ先は、
 
スーパーだった。
 
マヨは試食販売をしていた。
 
「本日は、
 
特製からしマヨネーズの試食です。」

ノーパンマンが駆け込んでくる。
 
「あっ!」
 
「マヨ!」
 
「助けて。」

マヨは驚いた。
 
「ノーパンマン!?」
 
そこへ、
 
ブリーフ太郎と、
 
トランクス次郎も飛び込んできた。
 
「パンツを履けーー!!」
 
マヨは困ったように笑う。
 
「営業中なんですが……。」

小さくため息をついた。
 
「仕方ないですね。」


第4章 粘着からしマヨネーズ

 
ノーパンマンは逃げながら、
 
試食コーナーを見つけた。
 
「あっ。」

店員が笑顔で差し出す。
 
「どうぞ。」

「ありがとう。」

もぐもぐ。
 
「おいしい。」

その後ろから、
 
ブリーフ太郎たちが追いかけてくる。
 
「待てーー!!」
 
「逃げながら食べるなーー!!」
 
ノーパンマンは立ち止まる。
 
「待って。」

「喉につまった。」

「ゴホッ、ゴホッ。」

それでも最後の一口を口へ入れる。
 
「ごちそうさま。」

再び走り出す。
 
文房具売り場。
 
「あった。」

粘着剤を手に取る。
 
「マヨーーーー!!」
 
シュッ!!
 
粘着剤が宙を舞う。
 
マヨは右手で受け止めた。
 
「ありがとうございます。」

左手には、
 
業務用からしマヨネーズ。
 
マヨは両手を前へ突き出す。
 
右手には粘着剤。
 
左手で業務用からしマヨネーズを勢いよく絞り出す。
 
ギュゥゥゥゥゥッ!!
 
その瞬間、
 
からしマヨネーズと粘着剤が混ざり合い、
 
白と黄色の渦を巻き始めた。
 
マヨは静かにつぶやく。
 
「必殺。」

「粘着からしマヨネーズ!!」
 
ブシャァァァァ!!
 
白と黄色の渦が、
 
一直線に飛んでいく。
 
ベチャァァァッ!!
 
ブリーフ太郎。
 
「うわぁぁぁーー!!」
 
トランクス次郎。
 
「からいーーー!!」
 
二人は全身マヨネーズまみれになった。
 
さらに粘着剤で、
 
ぴったり張り付いてしまう。
 
ブリーフ太郎&トランクス次郎。
 
「離れないーー!!」
 
二人は黒い影へと姿を変え、
 
「離れないーーー!!」
 
と叫びながら、
 
空へ吸い込まれるように消えていった。
 
ノーパンマンは空を見上げた。
 
「消えた。」

マヨは首をかしげる。
 
「あのモンスターたち……。」

「何だったんでしょう。」


第5章 敗北

 
スーパーの屋上。
 
はるか上空。
 
まさのりは吹き出した。
 
「あはははは!」
 
「面白い!」
 
笑いが止まらない。
 
しばらく笑うと、
 
静かにスーパーを見下ろした。
 
ノーパンマンは、
 
何事もなかったように試食を食べ歩いている。
 
マヨは仕事へ戻り、
 
笑顔でお客さんにマヨネーズを勧めていた。
 
まさのりは口元を緩める。
 
「思ってたより……。」

「面白いやつだ。」

少し考える。

「さて。」

「次はどんな遊びにしようかな。」

そうつぶやくと、
 
空高く飛び上がった。
 
宇宙最強の少年は、
 
久しぶりに胸を躍らせていた。
 

第6話 笑える人生

 

第1章 再会

 
スーパー。
 
店内は少しずつ静けさを取り戻していた。
 
ノーパンマンは首をかしげる。
 
「なんだったんだ、あいつら。」

マヨは店長へ深く頭を下げた。
 
「申し訳ありませんでした。」

店長は苦笑いする。
 
「今日は災難だったね。」

「片付けたら、もう帰っていいよ。」

「ありがとうございます。」

マヨが売り場を歩いていると、
 
後ろから女性の声が聞こえた。
 
「……湊。」

マヨの足が止まる。
 
ゆっくり振り返る。
 
そこには、
 
そこには、上品な服を着た母親が立っていた。
その隣では、父親が腕を組んでいる。
 
「母さん……。」

「父さん……。」

店内の空気が、
 
一気に重くなった。
 

第2章 親の理想

 
母親はため息をつく。
 
「こんな所で働いていたの。」

父親は冷たい目で言う。
 
「家へ帰るぞ。」

母親は静かに続ける。
 
「あなたをスーパーで働かせるために、
 
小学校から私立へ通わせたんじゃないの。」

父親もうなずく。
 
「有名私立大学まで出した。」

「どれだけ金をかけたと思ってる。」

母親。
 
「今、どこに住んでいるの?」
「誰と暮らしているの?」
「どうして何も連絡しなかったの?」
 
質問が止まらない。
 
マヨは何も答えられなかった。
 
昔からそうだった。
 
親が決めた学校。
 
親が決めた人生。
 
親が決めた将来。
 
自分で選んだことは、
 
ほとんどなかった。
 
その時だった。
 
昔の記憶が、
 
頭の中によみがえった。
 

第3章 逃げ出した日

 
数か月前。
 
九条家。
 
父親は今日も怒っていた。
 
「またマヨネーズか。」

「何にでもそんな物ばかりかけるな。」

母親もうなずく。
 
「太るでしょう。」

「みっともない。」

父親は続けた。
 
「就職先はここを受けなさい。」

「人生は親の言う通りにしていればいい。」

母親は優しく言う。
 
「あなたは何も考えなくていいの。」

父親はマヨの手から、
 
マヨネーズを強引に奪った。
 
「こんなもの!」
 
ゴトン。
 
ゴミ箱へ捨てる。
 
その瞬間だった。
 
マヨの中で、
 
何かが切れた。
 
「もう……。」

「もう嫌だぁぁぁぁぁぁ!!」
 
マヨはゴミ箱から、
 
マヨネーズを拾い上げる。
 
ギュゥゥゥゥゥッ!!
 
ブシャァァァァ!!
 
壁。

天井。

机。

父親。

母親。

家中がマヨネーズまみれになった。
 
皿が割れる。
 
家具が倒れる。
 
「僕の人生だぁぁぁぁぁーーーーーー!!」
 
初めて、
 
心の底から叫んだ。
 
その時だった。
 
バリーーーーン!!
 
窓ガラスが砕け散る。
 
一人の男が飛び込んできた。
 
ノーパンマンだった。
 
父親は叫ぶ。
 
「なんだ、お前は!」
 
母親も驚く。
 
「誰なの!?」
 
ノーパンマンは胸を張った。
 
「通りがかりのニートです。」

泣きながら暴れるマヨを見る。
 
「こっち。」

マヨは涙を流したまま立ち尽くす。
 
「えっ?」
 
ノーパンマンは腕をつかんだ。
 
「行こう。」

「それと、窓の弁償。」

ノーパンマンは五百円玉をその場に置き、
マヨの腕をつかんだまま、窓から飛び出した。
 
父親。
 
「待てーー!!」
 
母親。
 
「湊ーー!!」
 
二人は住宅街を走る。
 
川沿いを抜ける。
 
坂道を登る。
 
息が切れるまで走った。
 
ようやく立ち止まる。
 
マヨは泣いていた。
 
「なんで……。」

「助けてくれたんですか?」
 
ノーパンマンは少し考える。
 
「なんとなく。」

少し沈黙が流れる。
 
ノーパンマンはお腹を押さえた。
 
「腹減った。」

「とりあえず、うち来る?」
 
マヨは涙をぬぐう。
 
そして、
 
少しだけ笑った。
 
「……はい。」


第4章 自分の人生

 
現在。
 
スーパー。
 
マヨはゆっくり顔を上げた。
 
父親は言う。
 
「帰るぞ。」

マヨは静かに首を横へ振る。
 
「帰りません。」

父親の声が大きくなる。
 
「誰のおかげで大学まで出られたと思ってる!」
 
母親も続ける。
 
「私たちはあなたの幸せだけを考えてきたのよ!」
 
マヨは二人をまっすぐ見つめた。

「父さん。」

「母さん。」

「今まで育ててくれて、ありがとうございました。」

二人の表情が、わずかに緩んだ。

「でも――」

マヨは震える手を、静かに握りしめた。

「僕は、一度も幸せじゃありませんでした。」

店内が静まり返る。

「僕が欲しかったのは、立派な人生じゃない。」

「ただ、普通に笑える人生です。」

深く息を吸う。

「僕は、親の作品じゃありません。」

「僕は、僕です。」

「これからは、自分の人生を、自分で選びます。」

父親は言葉を失った。
 
母親は目を潤ませる。
 
何も返せなかった。
 
父親は静かに背を向ける。
 
母親は一度だけ湊を振り返った。
 
何か言いたそうだった。
 
しかし、
 
最後まで言葉は出なかった。
 
二人はそのまま、
 
人混みの中へ消えていった。
 
少し離れた試食コーナー。
 
ノーパンマンは親指を立てる。
 
「よく言えた。」

マヨは大きくうなずいた。
 
「ありがとうございます。」

二人は並んでスーパーをあとにした。
 
夕焼けが、
 
二人の背中を優しく照らしていた。
 
――第6話 完――
 

第7話 刃物の使い方

 

第1章 切り裂きカットマン

 
まさのりの豪邸。
 
まさのりはソファに寝転びながら笑っていた。
 
「パンツを履かせるだけじゃ面白くない。」

「自分から履きたくなる状況を作ろう。」

指をパチンと鳴らす。
 
黒い空間が揺れ始めた。
 
そこから一体のモンスターが姿を現す。
 
全身を黒いマントで包み、
 
顔は包帯で隠されている。
 
両手には、
 
巨大なハサミ。
 
刃がギラリと光った。
 
「切り裂きカットマン。」

口元だけが不気味にゆがむ。
 
「ケッケッケッケッ。」

まさのりはニヤリと笑う。
 
「ノーパンマンのズボンを切り裂くんだ。」

「ズボンがなくなれば、外を歩けない。」

「パンツを履くしかない。」

切り裂きカットマンは深く頭を下げた。
 
「承知しました。」

黒い霧となって消えていった。
 

第2章 切り裂き事件

 
翌日。
 
町は大騒ぎだった。
 
「あら!」
 
「洗濯物が全部切られてる!」
 
「またやられた!」
 
警察官が住民へ説明している。
 
「現在、洗濯物を切り裂く事件が連続して発生しています。」

「付近の住民は、くれぐれもお気をつけください。」

「犯人逮捕には懸賞金百万円が出ています。」

散歩中だったノーパンマンは、
 
その話を聞いて立ち止まった。
 
「懸賞金百万円……。」

少し考える。
 
「……よし。」

「捕まえよう。」

全力で走り出した。
 
「百万円ーーーー!!」
 

第3章 罠

 
住宅街。
 
シュパッ!!
 
ノーパンマンの目の前で、
 
洗濯物が切り裂かれた。
 
「あっ!」
 
黒い影が走る。
 
「いたっ!」
 
ノーパンマンは全力で追いかけた。
 
「100万円ーーーー!!」
 
誰もいない路地裏まで追い詰める。
 
ノーパンマンは息を整えた。
 
「もう逃げられないぞ。」
 
切り裂きカットマンは笑う。
 
「ケッケッケッケッ。」

「それはこちらのセリフだ。」

巨大なハサミを構えた。
 
「本当の狙いは、お前だ。」

「お前のズボンを切れば終わり。」

「外を歩けない。」

「パンツを履くしかない。」

ノーパンマンは真剣な顔になる。
 
「それは困る。」

切り裂きカットマンが勢いよく飛びかかった。
 

第4章 バーニング爪楊枝

 
その瞬間。
 
シュッ!!
 
一本の爪楊枝が飛んできた。
 
ブシュッ!!
 
切り裂きカットマンの手に突き刺さる。
 
「痛っ!!」
 
巨大なハサミが、
 
カランと地面へ落ちた。
 
「誰だ!?」
 
カツ……。
 
カツ……。
 
静かな足音だけが路地裏に響く。
 
楊枝だった。
 
「おまえさんの騒がしい気を感じて来てみれば。」
「また面倒ごとか。」

ノーパンマンは笑顔になる。
 
「楊枝!」
 
「助かったー。」

切り裂きカットマンは怒鳴る。
 
「なんだ、このジジイは!!」
 
懐から、
 
無数のハサミを取り出す。
 
「切り刻んでやる!!」
 
一斉に投げつけた。
 
キンッ!!
 
キンキンキンキンキンッ!!
 
楊枝は一本の爪楊枝だけで、
 
すべてのハサミをいなした。
 
切り裂きカットマンは目を見開く。
 
「そんな……。」

楊枝は静かに言う。
 
「刃物の使い方が、なっとらん。」

静かに目を閉じる。
 
一本の爪楊枝を胸の前へ掲げた。
 
ゆっくりと息を吸い込む。
 
「はぁぁぁぁぁ……。」

気が、
 
一本の爪楊枝へ集まっていく。
 
爪楊枝は小さく震え始めた。
 
「必殺。」

「バーニング爪楊枝!!」
 
シュゥゥゥゥゥッ!!
 
爪楊枝は高速回転しながら飛び出す。
 
キュィィィィィン!!
 
回転はさらに速くなる。
 
空気との摩擦で、
 
先端が赤く染まる。
 
次の瞬間――
 
ボォォォォッ!!
 
炎をまとった爪楊枝が、
 
一直線に切り裂きカットマンへ飛んだ。
 
ドォォォォン!!
 
切り裂きカットマンは吹き飛び、
 
地面へ倒れ込んだ。
 
楊枝は静かに近づいた。

「刃物は、ただの道具じゃ。」

「人を傷つけるか。」

「誰かの役に立てるか。」

「それを決めるのは、扱う人間じゃ。」

切り裂きカットマンは、
 
黒い影へと姿を変え、
 
空へ吸い込まれるように、
 
消えていった。
 
ノーパンマンは、
 
「……。」

小さくつぶやく。
 
「……百万円が。」

「消えた。」

楊枝は苦笑いする。
 
「そこか。」

はるか上空。
 
まさのりは二人の様子を見ながら、
 
声を上げて笑っていた。
 
「あはははは!」
 
「今度は爪楊枝か!」

 
笑いが止まらない。
 
「ますます楽しみになってきた。」

そうつぶやくと、
 
青空の彼方へ飛び去っていった。
 

第8話:職人


第1章 爪楊枝職人

数か月前。
 
赤城燈一郎、六十歳。愛称は楊枝
高級爪楊枝工場の社長であり、自らも職人だった。
 
一本一本、木を選び、削り、磨き上げる。
 
「料理は最後の一本で決まる。」

それが楊枝の口ぐせだった。
 
仕事が好きだった。
 

第2章 失ったもの

 
しかし、時代は変わった。
 
安い外国製の爪楊枝。
 
注文は減っていく。
 
ついに工場は廃業した。
 
職人たちは頭を下げ、
 
工場を去っていった。
 
その日の夜。
家へ帰ると――
 
妻は静かに言った。
 
「あなたは仕事しか見てなかった。」

「私も。」

「子どもも。」

「ずっと寂しかった。」

離婚届が机の上に置かれた。
 
楊枝は何も言えなかった。
 
仕事だけは、
 
誰にも負けなかった。
 
正しいことをしてきた。
 
そう思っていた。
 
なのに。
 
仕事も。
 
家族も。
 
全部失った。
 

第3章 何を間違えた

 
現在。
 
公園管理員として働く楊枝。
 
落ち葉を掃く。
 
花壇に水をやる。
 
静かな毎日。
 
昼。
 
ベンチ。
 
一人の男が寝転がっていた。
 
毎日、この公園で見かける男だった。
 
昼間から散歩。
 
仕事もしていなそう。
 
寝てばかり。
 
楊枝は思う。
 
「なんじゃ、あいつは。」

昔の自分なら、
 
説教していただろう。
 
しかし。
 
今は違う。
 
仕事だけを信じて、
 
何もかも失った。
 
正しさだけでは、
 
幸せにはなれなかった。
 
楊枝は空を見上げる。
 
「……。」

「わしは。」

「何を間違えたんじゃろう。」


第4章 一本の爪楊枝

 
ある日。
 
ラーメン屋。
 
公園をいつも散歩している、あの男がいた。
 
隣のカウンター席に案内される。
 
ノーパンマン。
 
「あっ!」
 
「いつも公園をきれいにしてくれてる、おじいさんだ!」
 
楊枝。

「あぁ。」

「知っておったか。」

隣に座っているマヨが聞く「ノーパンマン知り合い?」
 
楊枝「ノーパンマン!?」
 
「おぬし・・・」
 
「……そうか。」

「まあ、よい」
 
楊枝はふと聞いてみたくなった。
 
「おぬしは今、幸せかの?」
 
ノーパンマン 「あぁ、ちょー幸せ、ラーメン食べてる」
 
楊枝「変なやつじゃ」不思議と気持ちが和らいでいた。
 
ラーメンを食べ終えた楊枝は、
 
胸ポケットから一本の爪楊枝を取り出した。
 
ノーパンマンの目が輝く。
 
「おぉー。」

「その爪楊枝。」

「かっこいいな。」

楊枝は驚いた。
 
「……え?」
 
ノーパンマンはじっと見つめる。
 
「木目がきれいだ。」

「手作りなの?」
 
楊枝は小さくうなずく。
 
「ああ。」

「昔、わしが作った。」

ノーパンマン
 
「すごいな。」

「他の爪楊枝と全然違うじゃん。」

「なんか、あったかいものを感じる。」

楊枝は言葉を失う。
 
工場がなくなってから、
 
誰一人、
 
この爪楊枝を褒めてくれた人はいなかった。
 
「安いので十分。」

そう言われ続けてきた。
 
でも。
 
この男だけは違った。
 
楊枝は静かに笑う。
 
「一本、やろう。」

ノーパンマン。
 
「本当!?」
 
「やったー」
 
その姿を見て、
 
楊枝は久しぶりに心から笑った。
 
ノーパンマン「お礼に、うち、遊びにくる?」
 

第5章 居場所

 
その日から。
 
仕事帰りに平屋へ寄るようになった。
 
ゴリ子。
 
「楊枝さん、おかえり!」
 
マヨ。
 
「楊枝さん、今日はカレーですよ。」

笑い声が響く。
 
ノーパンマン。
 
「楊枝。」

「もう。」

「ここに住めば?」
 
楊枝は少し驚く。
 
「えっ?」
 
ゴリ子。
 
「一人より楽しいよ。」

楊枝は静かに家の中を見渡した。
 
仕事も。
 
家族も。
 
全部失ったと思っていた。
 
でも。
 
気づけば。
 
ここに、
 
新しい居場所があった。
 
楊枝「……世話になる。」

ノーパンマンは親指を立てた。
 
「ようこそ。」

楊枝は静かに笑った。
 
「ありがとう。」

外では、
 
風が木々を揺らしていた。
 

 

第9話 平屋

 

第1章 隠していた力

 
まさのりの豪邸。
 
まさのりは窓の外を眺めながら笑っていた。
 
「ブタ。」

「なんだか楽しそう。」

「……気に入らない。」

少し考える。

「でも。」

「放っておいても、そのうち嫌われる。」

「細かくて。」

「しつこい。」

口元がゆっくり緩む。
 
「それに……。」

「うははは。」

まさのりは、
 
ブタの秘密を知っているようだった。
 
指を鳴らす。
 
パチン。
 
黒い空間が揺れ始める。
 
そこから巨大な怪獣が姿を現した。
 
山のように巨大な体。
鋭い牙。
太い尻尾。
真っ赤な目。
 
まさのりは笑う。
 
「あの平屋を踏みつぶせ。」

「ノーパンマンがパンツを履いたら、お前の勝ちだ。」

怪獣は大きくうなずいた。
 
「グォォォォォ!!」
 
そのまま地上へ向かって歩き始めた。
 

第2章 大切な家

 
平屋。
 
今日もみんなで夜ご飯を食べていた。
 

ブタは家の中を見渡した。

「この家。」

「古いけど、落ち着くぶよ。」

ノーパンマンは笑う。
 
「もらったんだ。」

マヨは首をかしげる。
 
「聞いてなかったけど。」

「誰にもらったんですか?」
 
ノーパンマン。
 
「……神様かな。」

「とにかく。」

「俺にとって大切な家なんだ。」

ゴリ子は微笑む。
 
「もう。」

「みんなの家よね。」

楊枝もうなずく。
 
「そうじゃな。」

ブタは嬉しそうに笑う。
 
ブタ。
 
「今日も楽しかったぶよ。」

時計を見る。
 
「夜も遅いし。」

「そろそろ帰るぶよ。」

ノーパンマン。
 
「そういえば。」

「ブタもここに住めばいいじゃん。」

マヨ。

「そうですよ。」

「毎日来てるんですし。」

ゴリ子。
 
「部屋も空いてるわよ。」

楊枝。
 
「にぎやかな方がええ。」

ブタは一瞬だけ笑顔になった。
 
しかし、
 
すぐに首を横へ振る。
 
「いいぶよ。」

「今のままで十分ぶよ。」

ノーパンマンは首をかしげる。
 
「そう?」

「うん。」

ブタは笑って答えた。
 
「また明日来るぶよ。」

みんなに手を振る。
 
「またぶよ!」
 
みんなも笑顔で手を振った。
 
「またなー!」
 
ブタは一人、
 
夜道を歩き始める。
 
笑顔が消える。
 
ブタには、
 
ずっと隠している秘密があった。
 
もし知られたら、
 
この仲間も、
 
全部失ってしまう気がしていた。
 

第3章 巨大怪獣

 
その時だった。
 
ドシン!!
 
ドシン!!
 
大地が揺れる。
 
窓ガラスが震えた。
 
外を見る。
 
巨大な怪獣だった。
 
怪獣は大きく叫ぶ。
 
「ノーパンマンーー!!」
 
「パンツを履けーー!!」
 
「履かなければ。」

「この家を踏みつぶす!!」
 
ノーパンマンは頭をかく。
 
「毎度毎度。」

「いったい何なんだ、あいつら。」

ゴリ子は青ざめる。
 
「家が潰されちゃう!」
 
マヨは首を振る。
 
「マヨネーズじゃ止まりません!」
 
楊枝は怪獣を見上げた。
 
「大きすぎる……。」

怪獣は足を振り上げる。
 
「さあ、どうする。」

「パンツを履くか。」

「家を失うか。」

「選べ。」


第4章 本当の姿

 
その時だった。
 
帰り道を歩いていたブタが、
 
大きな地響きに気づく。
 
「……ぶよ?」
 
振り返る。
 
平屋の方角から、
 
巨大な怪獣が見えた。
 
「みんな!!」
 
ブタは全力で走り出す。
 
「ぶよぶよぶよぶよーー!!」
 
ドタドタドタドタッ!!
 
ブタが勢いよく庭へ飛び込んできた。
 
「やめるぶよ!!」
 
ノーパンマンは驚く。
 
「ブタ?」
 
ブタの体は震えていた。
 
「本当は。」

「みんなに言えなかったぶよ。」

「嫌われるのが怖かったぶよ。」

涙をこらえながら続ける。
 
「でも。」

「この家だけは守るぶよーー!!」
 
ゴォォォォォ!!
 
ブタの体が光に包まれる。
 
どんどん巨大化していく。
 
家よりも大きく。
 
怪獣と同じ大きさになった。
 
怪獣は目を見開く。
 
「お前も……。」

「モンスターだったのか?」
 
ブタは胸を張る。
 
「ブタは。」

「ブタだぶよよーー!!」
 
ブンッ!!
 
巨大な拳を振り抜く。
 
ドォォォォン!!
 
渾身の一撃。
 
怪獣は大きく吹き飛ぶ。
 
さらに、ブタの鼻先がまばゆく光り始めた。
 
「ぶよビーーーーーム!!」
 
ドォォォォォン!!
 
光のビームが怪獣を貫いた。
 
怪獣は黒い影へと姿を変え、
 
空へ吸い込まれるように消えていった。
 

第5章 おかえり

 
ブタは元の姿へ戻る。
 
静まり返る平屋。
 
ブタはうつむいた。
 
「やっぱり……。」

「こんな化け物。」

「みんな嫌いになるぶよ。」

「もう行くぶよ。」

歩き出そうとした。
 
その時だった。
 
ノーパンマン。
 
「すげーーーー!!」
 
マヨ。
 
「かっこよかったです!」
 
楊枝。

「見事じゃ。」

ゴリ子。
 
「最高!」
 
ブタはゆっくり振り返る。
 
「……え?」
 
ノーパンマンは笑う。
 
「俺なんて。

「パンツも履かない。」 

マヨも笑う。
 
「僕なんて。」

「気弱でマヨマヨしてます。」

楊枝は苦笑いした。
 
「わしは。」

「仕事しか知らん頑固ジジイじゃ。」

ゴリ子は笑った。
 
「私は今でも。」

「ゴリラのモンスターに間違えられるわよ。」

少し沈黙が流れる。
 
そして。
 
ゴリ子は優しく微笑んだ。
 
「みんな変。」

「だから楽しいじゃん。」

ブタの目から、
 
大粒の涙があふれる。
 
「……。」

「みんなと。」

「一緒に住みたいぶよ。」

ノーパンマンは親指を立てた。
 
「おかえり。」

ブタは大声で泣き出した。
 
「ありがとうぶよーーー!!」
 
平屋には、
 
にぎやかな笑い声が響いていた。
 

第10話 新たな展開

 

第1章 灼熱の鋼鉄の巨兵

 
朝。
 
平屋。
 
今日も外から聞こえてくる。
 
「パンツを履けーー!!」
 
ノーパンマンはため息をついた。
 
「また来た。」

外へ出る。
 
そこには、
 
全身が真っ赤に焼けた鋼鉄の巨人が立っていた。
 
体から熱気が立ちのぼる。
 
地面がジュッと音を立てて焦げる。
 
「灼熱の鋼鉄の巨兵。」

ブタ。
 
「また来たぶよーー!」
 
楊枝。

「熱い……。」

マヨ。
 
「近づけません!」
 
マヨ。
 
「粘着からしマヨネーズ!!」
 
ベチャッ。
 
……
 
一瞬で蒸発した。
 
マヨ。
 
「えぇぇぇ!?」
 
楊枝。
 
「バーニング爪楊枝!!」
 
ドォォォォン!!
 
しかし。
 
傷ひとつ付かない。
 
ブタ。
 
「ぶよビーーーーーム!!」
 
ドォォォォン!!
 
しかし。
 
無傷。
 
巨兵はゆっくり拳を振り上げる。
 
ノーパンマン。
 
「逃げろーーーー!!」
 
みんな一斉に走り出した。
 

第2章 ゴリラ族

 
その時だった。
 
ゴリ子。

「もう。」

「しょうがないわね。」

「ゆっくりバナナも食べられないじゃない。」

ドンッ!!
 
地面を蹴る。
 
ノーパンマン。
 
「あっ。」

「ゴリ子怒った。」

ゴリ子は拳を握る。
 
「ゴリ子100%パーーーーンチ!!!!」
 
ドォォォォォォーーーーン!!
 
ワンパン。
 
灼熱の鋼鉄の巨兵は、
 
粉々に砕け散った。
 
黒い影となり、
 
空へ吸い込まれるように消えていく。
 
静寂。

ブタ。

「……。」

マヨ。

「……。」

楊枝。

「……。」

ノーパンマン。
 
「ゴリ子が一番強いね。」

遠くのビルの屋上。
 
一人の女性が見つめていた。
 
長い黒髪。
 
白いワンピース。
 
風に髪が揺れる。
 
「あっ!」
 
「今、力の反応を感じた!」
 
「やっと見つけた……。」

「ゴリラ族の後継者。」


第3章 愛子

 
まさのりも、
 
遠くから戦いを見ていた。
 
「まさか……。」

「あの力。」

「ゴリラ族か。」

「面白くなってきた。」

その時。
 
後ろから静かな声が聞こえた。
 
「まさのり。」

「その力は。」

「そんなことに使う力じゃない。」

まさのりは目を細める。
 
「あん?」
 
「おまえは……。」

「愛子!!」
 
しばらく見つめ合う。
 
やがて、
 
まさのりは笑った。
 
「まあ、いい。」

「くちぎょも。」

「あいつらも。」

「少し飽きてきた。」

「退屈してたところなんだ。」

「もっと楽しませて。」

黒い霧となって、
 
姿を消した。
 
愛子は静かに平屋の方を見つめた。
 
「……。」


第4章 男子会

 
ゴリ子。
 
「今日は女子会だから!」
 
「じゃあね!」
 
「急がなきゃ!」
 
ゴリ子は走っていった。
 
ブタ。
 
「ゴリ子の友達って気になるぶよ。」

ノーパンマン。
 
「期待しない方がいいよ。」

ブタ。

「じゃあ。」

「男子会ぶよ!」
 
ノーパンマン。
 
「いいね。」

四人が並ぶ。
 
ブタ。
 
「戦隊やるぶよ!」
 
マヨ。
 
「えっ?」
 
「いいけど……。」

「少し恥ずかしいですね。」

楊枝。
 
「還暦を超えてるんじゃが。」

ノーパンマン。
 
「やろう。」

ブタ。
 
「番号!」
 
ノーパンマン。
 
「1!」
 
マヨ。
 
「2!」
 
楊枝。
 
「3!」
 
ブタ。
 
「4ぶよ!」
 
ブタは大きく叫ぶ。
 
「四人合わせて!!」
 
「平屋レンジャー!!」
 
全員、
 
決めポーズ。
 
……
 
静寂。
 
マヨ。
 
「四人だと。」

「ちょっと半端ですね。」

楊枝。
 
「戦隊は五人じゃ。」

ノーパンマン。
 
「女性隊員ほしい。」

ブタ。
 
「ゴリ子ぶよ?」
 
ノーパンマン。
 
「ゴリ子は。」

「男子のロマンが分からない。」

「こういうの。」

「乗ってくれない。」

その時だった。
 
後ろから声がした。
 
「あの……。」

四人は振り向く。
 
そこには、
 
見知らぬ女性が立っていた。
 
優しく微笑んでいる。
 
「私でよければ。」

「五人目になりましょうか?」
 
四人。
 
「え?」
 
女性はにっこり笑った。
 
「愛子です。」


第11話 アイドル

 

第1章 五人目

 
平屋の庭。
 
ノーパンマンが手を叩いた。

「じゃあ、もう一回やろう。」

ブタが拳を突き上げる。

「番号ぶよ!」

「1!」

ノーパンマンが叫ぶ。

「2!」

マヨが続く。

「3!」

楊枝も、どこか楽しそうに声を上げた。

愛子は少し照れながら、小さく手を挙げる。

「4!」

「5ぶよ!」

ブタは大きく息を吸った。

「五人合わせて!」

「平屋レンジャーーーー!!」
五人は思い思いの決めポーズをとる。
 
……
 
ノーパンマンは親指を立てた。
 
「いいね。」

ブタ。
 
「いいぶよ!」
 
楊枝。
 
「五人いると締まるな。」

マヨ。
 
「愛子さんのおかげです。」

愛子。

「みなさん。」

「かっこいいですよ。」

愛子は照れくさそうに笑った。
 
一方。
 
マヨだけは顔を真っ赤にして固まっていた。
 
(かわいい……。)

(やばい……。)

(こんなかわいい人……。)

(初めて見た。)


第2章 お願い

 
少しして。
 
愛子がマヨへ近づく。
 
「あの……。」

「よかったら。」

マヨ。
 
「は、はい!」
 
愛子。
 
「ゴリ子さんに。」

「会わせてもらえませんか?」
 
四人は顔を見合わせる。
 
「ゴリ子?」
 
「どうして?」
 
愛子は優しく微笑んだ。
 
「少し。」

「お話ししたいことがあるんです。」


第3章 女子会

 
その頃。
 
ゴリ美の住む高層マンション。
 
広々としたリビング。
 
アイランドキッチン。
 
大きな窓から街並みが一望できる。
 
ドス子は思わず声を上げた。
 
「ゴリ美姉さん!」
 
「すごーーい!!」
 
「広ーーい!!」
 
ゴリ美は得意そうに笑う。
 
「でしょう?」
 
「ルームツアーする?」

 ゴリ美は、ゴリコのお姉さん。
ドス子も、長い付き合いの悪友である。

ゴリ子。
 
「するーー!!」
 
三人は楽しそうに部屋を見て回った。
 
ゴリ美。
 
「そういえば。」

「旦那とはどう?」
 
「突然の電撃結婚、びっくりしたわよ。」

ゴリ子は笑った。
 
「昼間から寝てばかりで何もしないけど。」

「毎日笑ってるわ。」

「友達も一緒に住んでるし。」

「にぎやかなの。」

ドス子はニヤッと笑う。
 
「え?」

「何それ。」

「バツ4の私が言うのもなんだけど。」

「離婚した方がいいわ。」

ゴリ子は笑いながら首を振る。
 
「大丈夫よ!」
 
ゴリ美も笑い出す。
 
「うちの旦那も似たようなものよ。」

「毎日、自分の胸筋に名前をつけて――」

『ローズ、マリー。プロテインだよ。』

「って、話しかけてるの。」

三人は顔を見合わせる。
 
……
 
大笑いした。
 

第4章 新たな敵

 
その頃。
 
町外れの小さなライブ会場。
 
客席には、
 
数人しかいなかった。
 
ステージの上。
 
「私たちはーー!!」
 
「フルーティハンドレットでーーす!!」
 
リーダー。
 
ストロベリー姉さん。
 
三十五歳。
 
ぶよぶよの体を揺らしながら、
 
元気いっぱい踊っていた。
 
その横では。
 
「俺たちもいるよーー!!」
 
五人組が飛び出してくる。
 
「われら!!」
 
「調味料five!!」
 
シュガー。
 
ソルト。
 
ビネガー。
 
味噌。
 
醤油。
 
シュガー。
 
「俺たちって仲良しだよな!」
 
ソルト。
 
「この前、お泊まり会したもんな!」
 
味噌。
 
「誕生日会も楽しかった!」
 
醤油。
 
「一度もケンカしたことない!」
 
ビネガー。
 
「最高の仲間だ!」
 
パチ……
 
パチ……
 
パチ。
 
客席から小さな拍手が響く。
 
ライブは終わった。
 
狭い楽屋。
 
さっきまで笑顔だったメンバーたちは、
 
誰一人、
 
口を開かなかった。
 
ストロベリー姉さんが、
 
小さくつぶやく。
 
「もっと……。」

「売れたい。」

その瞬間だった。
 
部屋の照明が、
 
突然消えた。
 
闇の中から、
 
笑い声が響く。
 
「その願い。」

「叶えてやろうか?」
 
全員が振り向く。
 
「え?」
 
闇の中から、
 
まさのりが静かに笑っていた。
 
――第11話 完――
 

第12話 しょうがねぇな

第1章 生姜

 
ゴリ子に会うため、ノーパンマンたちはゴリ美のマンションへ向かっていた。
 
愛子が歩いているだけで、通行人が次々と振り返る。
 
「あの子、可愛い。」

「アイドルかな?」
 
愛子は気づかず、小さく首をかしげる。
 
その様子を見ていたマヨは、また顔を赤くしていた。
 
(かわいい……。)

その時。
 
「マヨ!」
 
後ろから声がした。
 
振り返る。
 
声の主は、
 
深くかぶっていたキャップを外した。
 
続いてサングラスを外す。
 
爽やかな笑顔が現れた。
 
マヨ。
 
「生姜!」
 
ブタ 「誰ぶよ?」
 
マヨ「親友の生姜だよ」
 
生姜は二カッと笑う。
 
「久しぶり。」

「元気そうだな。」

マヨ。

「うん。」

「今、毎日は楽しいよ。」

生姜。

「そうか。」

「それはよかった。」

通行人の女性たちがざわつく。
 
「あの人……。」

「見たことある。」

「もしかして……。」

「かっこいい!」
 

第2章 調味料five

 
商店街。
 
どこからか軽快な音楽が流れてくる。
 
♪チャララ〜ン♪
 
♪チャララ〜ン♪
 
五人がリズムに合わせて踊りながら現れた。
 
「♪しょうゆ!」
 
「♪みそ!」
 
「♪ソルト!」
 
「♪シュガー!」
 
「♪ビネガー!」
 
五人そろってポーズ。
 
「われら!」
 
「調味料five!!」
 
シュガー。
 
「みんなー!」
 
「こんにちはー!」
 
「今日はCD買ってってねー!」
 
シーン……
 
風だけが吹いた。
 
ノーパンたち。
 
「誰?」
 
調味料five。

「……。」

シュガー。
 
「ま、まあ。」

「気を取り直して!」
 
ノーパンマンを指さす。
 
「パンツを履いてもらう!」
 
ノーパンマン。
 
「今度は、人間か・・・」
 
少しため息をつく。
 
「断る。」


第3章 ノーパンギロチン

 
「くらえ」
 
シュガーが飛びかかる。
 
ノーパンマン「しょうがない」
 
ノーパンマンは思いっきりジャンプした。。
 
「ノーパンギロチン!!」
 
股関節を大きく開き、
 
両足でシュガーの体をガッチリ挟み込む。
 
シュガー。
 
「うわっ!なんだこいつ?」
 
ノーパンマン。
 
「終わり。」

「ノーパンツイスト!!」
 
全身を勢いよくひねり
 
グルン!!
 
ドォォォォン!!
 
シュガーは地面へ叩きつけられ、
 
白目をむいた。
 
……
 
静寂。
 
ブタ。
 
「強いぶよ……。」

楊枝。
 
「体幹がおかしい。」

マヨ。
 
「こんなことできるなんて……。」


第4章 それぞれの戦い

 
ソルト。「やりやがったなー」
 
味噌「ゆるさーん」
 
醤油「かたき討ちだぁー」
 
3人が襲い掛かってくる
 
マヨが両手にマヨネーズを構える。
 
「マヨマヨガトリングッ!!」
 
ドババババババッ!!
 
両手の粘着剤の入った特製からしマヨネーズから連続発射される。
 
「うわぁぁぁぁぁ!!」「目が―――!!」
 
ソルト、醤油、味噌は、全身マヨネーズまみれになった。
 
ベタベタで身動きが取れない。
 
楊枝は胸ポケットから爪楊枝入れを取り出した。
 
静かにふたを開ける。
 
指先で数本の爪楊枝をつまみ上げる。
 
ゆっくり目を閉じる。
 
「奥義。」

「山嵐。」

シュシュシュシュシュッ!!
 
何本もの爪楊枝が一斉に放たれ燃え盛る。
 
「いててててててっ」
 
「あちゃあちゃあちゃ!!」
 
「ぎゃーーーーー!!」
 
マヨネーズに火が燃え移り、三人は炎に包まれた。
 
そこへ。
 
ブタが鼻を大きく膨らませる。
 
「ぶよバーーーースト!!」
 
ドォォォォォォォン!!
 
強烈な空気砲が炎を吹き消す。
 
その勢いのまま、
 
三人まとめて吹き飛び、仲良く白目をむいて倒れた。
 

第5章 しょうがねぇな

 
残るはビネガー。
 
「あわわわわ!」
 
「うわぁーー!!」
 
一人だけ逃げ出した。
 
その時だった。
 
一人の男が、静かに立ちはだかる。
 
「仲間がやられたのに。」

「一人で逃げるのかよ。」

生姜だった。
 
ビネガー。
 
「どけぇぇ!!」
 
勢いよく突っ込んでくる。
 
生姜はため息をつく。
 
「しょうがねぇな。」

ひらり。
 
紙一重でかわす。
 
そのまま手首をつかみ
 
投げ飛ばす。
 
ドォォォォン!!
 
さらに腕をひねり、
 
関節技を決めた。
 
「いだだだだだ!!」
 
「痛い!痛い!」
 
生姜は落ち着いた声で聞く。
 
「目的は?」
 
「誰に頼まれた?」
 
ビネガーは苦しそうに答えた。
 
「知らない!」
 
「依頼されたんだ!」
 
「ノーパンマンってやつにパンツを履かせたら!」
 
「スーパーアイドルにしてやるって!」
 
生姜は静かにうなずく。
 
「……そうか。」

ブタは目を丸くした。
 
「生姜、すごいぶよ!」
 
生姜は苦笑いする。
 
「いや。」

「お前たちの方が、よっぽどすごいよ。」

マヨが笑いながら言った。
 
「生姜は昔から、少林寺拳法をやってたんだ。」

楊枝。

「なるほど。」

「だから冷静で、強いんじゃな。」

愛子は一人、
 
空を見上げていた。
 
「まさのり……。」

「もう。」

「止めないと。」

風が吹く。
 
愛子の髪が揺れる。
 
その瞳には、
 
強い決意が宿っていた。
 

 

第13話 夢は終わらない

 

第1章 助けて!

 
ゴリ美のマンション。
 
女子会も終わりに近づいていた。
 
その時だった。
 
ムッキーからビデオ通話が鳴る。
 
「助けてくれーーー!!」
 
ゴリ美。
 
「あなた!?」
 
画面には、
 
縄でぐるぐる巻きにされたムッキー。
 
その後ろには、
 
大勢の女性たちが並んでいた。
 
「私たちはーー!!」
 
「フルーティハンドレットでーーす!!」
 
中央に立つストロベリー姉さんが笑う。
 
「筋肉が好きって聞いて。」

「ライブに誘ったら。」

「ほいほい付いてきたの。」

ムッキーは申し訳なさそうに笑う。
 
「だって……。」

ゴリ美は頭を抱えた。
 
「ほんと単純。」

「それで?」
 
「狙いは何なの?」
 
ストロベリー姉さんはニヤリと笑う。
 
「教えなーーい。」

「助けたければ。」

「ここのライブ会場まで来なさい。」

ブツッ。
 
通話が切れた。
 

第2章 売れたい

 
町外れの小さなライブ会場。
 
ストロベリー姉さんが拳を握る。
 
「私たちだって!」
 
「アイドルなのよ!」
 
「もう三十五歳だけど!」
 
「まだ夢を諦めたくないの!」
 
「あいつらを倒せば。」

「スーパーアイドルにしてくれるって。」

「約束してくれた。」

メンバー全員が拳を突き上げる。
 
「売れたーーい!!」
 
「絶対売れるーー!!」
 
その瞳には、
 
夢だけが映っていた。
 

第3章 ゴリラ族

 
ライブ会場の扉が勢いよく開く。
 
ドォン!!
 
ゴリ子。
 
ゴリ美。
 
ドス子。
 
三人はゆっくり中へ入った。
 
ステージではスポットライトが輝いている。
 
♪ジャーン!!
 
軽快な音楽が流れ始めた。
 
「私たちはーー!!」
 
「フルーティハンドレットでーーす!!」
 
ストロベリー姉さんを先頭に、
 
全員が笑顔で踊り始める。
 
「♪フルフル♪」
 
「♪フルーティ〜♪」
 
「♪夢を乗せて〜♪」
 
「♪あなたに届け〜♪」
 
決めポーズ。
 
「フルーティハンドレットでーーす♡」
 
……
 
ムッキーはステージ横で、
 
縄に縛られたまま叫ぶ。
 
「こっち!」
 
「こっち!」
 
「助けてくれーー!!」
 
ゴリ美はため息をついた。
 
「何のための筋肉よ……。」

ストロベリー姉さんがマイクを持つ。
 
「ようこそ。」

「今日の特別ゲスト。」

「ゴリラ族のみなさん。」

笑顔のまま続けた。
 
「でも。」

「今日はライブだけじゃ終わらない。」

「あなたたちを倒して。」

「私たちはスーパーアイドルになる。」

マイクを放り投げる。
 
「みんな!!」
 
「いくわよーーー!!」
 
「おーーーーーー!!」
 
全員が一斉にステージから飛び降りた。
 
ゴリ子は首をかしげる。
 
「アイドルって……。」

「戦うの?」
 
ドス子。
 
「最近は何でもありね。」

ゴリ美。
 
「まずは旦那を返してもらうわ。」

ゴリ子は拳を握る。
 
「しょうがない。」

「相手になるよ。」


第4章 無双

 
全員がバットを持って突っ込んでくる。
 
レモン&オレンジ。
 
「いやぁぁぁぁーー!!」
 
ゴリ子はため息をついた。
 
「雑魚は。」

「ひっこんでなさいっ!!」
 
ゴリ子は両腕を大きく広げた。

「ゴリラリアットォォォ!!」

ドゴォォォォン!!

レモンとオレンジは勢いよく吹き飛んだ。

「ぎゃーーーー!!」
 
ゴリ美はブランドバッグからチェーンを取り出す。
 
「ゴリミトルネード!!」
 
ブォォォォォォ!!
 
チェーンが竜巻のように回転する。
 
「きゃああああ!!」
 
フルーティハンドレットが次々と吹き飛ばされた。
 
そこへドス子が前へ出る。
 
「邪魔。」

「ディープインパクトーーーー!!」
 
パァァァン!!
 
強烈な張り手。
 
衝撃波が一直線に走る。
 
「ぎゃあぁぁぁ!!」
 
わずか数秒。
 
勝負は終わった。
 
ストロベリー姉さんは膝をついた。
 
「強すぎる……。」


第5章 夢

 
ゴリ美はムッキーの縄をほどく。
 
ムッキー。
 
「助かった……。」

ゴリ美はため息をつく。
 
「もう。」

「知らない女の子について行っちゃダメ。」

ムッキー。
 
「はい……。」

ストロベリー姉さんは静かに立ち上がった。
 
目には涙が浮かんでいる。
 
「私たち……。」

「ただ。」

「売れたかっただけなの。」

「あんたたちを倒せば。」

「スーパーアイドルにしてくれるって。」

「約束してくれた。」

少し笑う。

「でも。」

「あいつ。」

「最初から分かってたんだ。」

「私たちを利用しただけだったのね。」

会場が静まり返る。
 
ゴリ子は優しく微笑んだ。
 
「夢のために頑張った。」

「あなたたちは強いわよ。」

「それに。」

「私たちに挑んできたんだもん。」

「胸を張っていいわよ。」

ストロベリー姉さんの目から、
 
涙がこぼれた。
 
「ありがとう……。」

その言葉に、
 
フルーティハンドレットのメンバー全員が涙を流した。
 
まさのりは静かにその様子を見つめていた。
 
「伝説のゴリラ族の力。」

「見せてもらった。」

「この程度か。」

「……。」

「もういい。」

「飽きた。」

そうつぶやくと、
 
黒い霧の中へ姿を消した。
 

第14話 ショーの始まり

 

第1章 全員集合

 
ライブ会場。
 
ビネガーに、
 
「ゴリ子たちがライブ会場にいる。」

と教えられ、
 
ノーパンマンたちは急いで会場へ向かっていた。
 
ようやく到着する。

 ノーパンマンたち六人が、息を切らしながらライブ会場へ飛び込んだ。
 
ノーパンマンは大きく手を振る。
 
「ゴリ子!」
 
「ゴリ美姉さん!」
 
「ドス子!」
 
「ムッキー!」
 
「久しぶりー!」
 
ムッキーも笑顔で手を振った。
 
「久しぶりー!」
 
「筋肉きたえてるー?」
 
ノーパンマン。
 
「もちろん」
 
少し胸を張る。
 
「何もしてない!!」
 
会場を見渡す。
 
「うわっ。」

「この会場。」

「すごいことになってるな。」

ブタ。
 
「めちゃくちゃぶよ。」


第2章 会いたかった人

 
愛子は静かに前へ歩く。
 
そして、
 
ゴリ子の前で立ち止まった。
 
「やっと。」

「お会いできました。」

ゴリ子。
 
「え?」
 
愛子。
 
「ずっと。」

「探していました。」

ゴリ子は首をかしげる。
 
「私?」
 
「誰だっけ?」
 
愛子は優しく微笑んだ。
 
「今は。」

「まだ話せません。」

「でも。」

「会えてよかった。」

ゴリ子はますます不思議そうだった。
 

第3章 愛子

 
愛子は三人を見つめる。
 
少し笑った。
 
「やっぱり。」

「思っていた通り。」

ゴリ子。
 
「え?」
 
愛子。
 
「ゴリ美さん。」

「お肌がきれい。」

「ドス子ちゃん。」

「愛嬌があって素敵。」

ドス子。

「えっ……。」

思わず固まる。
 
心の中で思う。
 
(この子……。)

(お世辞じゃない。)

(本気で言ってる。)

(分かる。)

ゴリ美が腕を組む。
 
「どこかで会ったかしら?」
 
「私ね。」

「お世辞は大嫌いなの。」

「それに。」

「若くて可愛いだけの薄っぺらい女も嫌い。」

少し間を置く。
 
「でも。」

「この子は好き。」

「初めて会ったばかりなのに。」

「不思議。」

ドス子もうなずく。
 
「うん。」

「この子はいい子。」

ドス子。
 
「私のこと……。」

「可愛いって言ってくれた。」

みんなの心の声。
 
(誰も可愛いとは言ってない。)
 

第4章 この人は……

 
その時。
 
ゴリ美の視線が、
 
生姜で止まった。
 
「……あれ?」
 
「もしかして。」

「この人。」

「神崎グループの……。」

生姜は苦笑いする。
 
ドス子。
 
「え?」
 
ゴリ美。
 
「雑誌で見たことある!」
 
「神崎グループの新社長!」
 
ドス子の目が輝く。
 
「えぇぇぇぇ!?」
 
「イケメン!」
 
「社長!?」
 
「完璧じゃない!」
 
生姜は頭をかいた。
 
「肩書きなんて。」

「関係ありませんよ。」

ドス子。
 
「謙虚!」
 
「好き!」
 
生姜。

「困ったな。」

ゴリ美は笑う。
 
「ねえ。」

「今度、みんなでバーベキューしない?」
 
少し考えてから続けた。
 
「もちろん。」

「フルーティハンドレットも一緒に。」

ストロベリー姉さん。
 
「……私たちも?」
 
ゴリ子は笑顔でうなずく。
 
「大丈夫よ。」

「もう敵じゃないもん。」

ムッキーは元気よく手を挙げた。
 
「いい肉、俺が焼くよー!」
 
フルーティハンドレットから歓声が上がる。
 
「やったーー!!」
 
その時。
 
調味料fiveも慌てて手を挙げた。
 
「俺たちもいるよーー!!」
 
ノーパンマンは親指を立てた。
 
「もちろん。」

ゴリ子も笑顔でうなずく
 
「みんなで食べた方がおいしいわ。」

会場は笑い声に包まれた。
 

第5章 ショーの始まり

 
その時だった。
 
パチ……。
 
パチ……。
 
パチ……。
 
ゆっくりと拍手が響く。
 
笑い声が止まる。
 
全員が音のする方を振り向いた。
 
薄暗い観客席。
 
一番後ろの席。
 
一人の少年が座っていた。
 
まさのりだった。
 
暗闇の中で、
 
ゆっくり拍手を続けている。
 
パチ……。
 
パチ……。
 
パチ……。
 
まさのりは静かに笑った。
 
「面白かったよ。」

少し間を置く。
 
「……。」

「本当のショーの始まりだ。」

ニヤッ。
 
誰一人、
 
言葉を発することができなかった。
 

第15話 何者

 

第1章 まさのり

 
ライブ会場。
 
薄暗い観客席。
 
一番後ろの席から、
 
まさのりがゆっくり立ち上がった。
 
静かな足音だけが会場に響く。
 
コツ……。
 
コツ……。
 
コツ……。
 
誰も動けない。
 
まさのりは、
 
ゆっくりステージの前まで歩いてくる。
 
そして静かに笑った。
 
「面白かったよ。」

少し間を置く。
 
「ただ。」

「もう飽きたんだ。」

調味料five。
 
「あっ!」
 
「あいつだっ!」
 
ストロベリー姉さん。
 
「私たちに依頼してきたやつ!」
 
ゴリ子が一歩前へ出る。
 
「ただ者じゃないわ。」

「何者なの、この子?」
 
まさのりは静かに答えた。
 
「絶望。」

「それがお前たちから見た俺だ。」


第2章 待って

 
まさのりが、
 
さらに一歩踏み出す。
 
その瞬間。
 
愛子が飛び出した。
 
「待って!!」
 
全員が愛子を見る。
 
愛子は、
 
まさのりの前に立った。
 
「お願い。」

「もう。」

「やめて。」

まさのりは冷たく答える。
 
「嫌だ。」

愛子は首を横に振った。
 
「ダメ。」

「この人たちは。」

「あなたの敵じゃない。」

まさのりは小さく笑う。
 
「退屈なんだ。」

「壊したくなる。」

愛子は悲しそうに、
 
まさのりを見つめていた。
 

第3章 ゴリ子200%

 
ゴリ子が、
 
愛子を後ろへ下がらせる。
 
「愛子。」

「下がって。」

ゴリ子は大きく息を吸う。
 
拳を握る。
 
全身の筋肉が膨れ上がった。
 
会場の床が震える。
 
愛子が叫ぶ。
 
「ゴリ子!」
 
「ダメっ!!」
 
ゴリ子。
 
「ゴリ子200%パーーーンチ!!!!」
 
ドォォォォォォォォン!!
 
空気を裂く、
 
渾身の一撃。
 

第4章 圧倒的な力

 
まさのりは、
 
表情一つ変えなかった。
 
右手の人差し指を、
 
一本だけ前へ出す。
 
ピタッ。
 
ゴリ子。
 
「……え?」
 
本気の拳は、
 
指一本で止められていた。
 
会場が静まり返る。
 
ブタ。
 
「うそぶよ……。」

楊枝。

「止めた……。」

ゴリ美。
 
「ゴリ子の本気なのよ……。」

ドス子。
 
「ありえない……。」

まさのりは小さくため息をつく。
 
「やっぱり。」

「退屈だ。」

次の瞬間。
 
コツン。
 
まさのりは、
 
ゴリ子のおでこを軽く弾いた。
 
デコピンだった。
 
ゴリ子。
 
「え?」
 
ドゴォォォォォォン!!
 
ゴリ子の体が、
 
弾丸のように吹き飛ぶ。
 
壁へ激突。
 
そのまま意識を失った。
 
「ゴリ子ーー!!」
 
全員が叫ぶ。
 
まさのりは、
 
ゆっくり全員を見渡す。
 
そして。
 
パチン。
 
静かに指を鳴らした。
 
その瞬間。
 
ドサッ。
 
ゴリ美が倒れる。
 
ドサッ。
 
ドス子。
 
ブタ。
 
マヨ。
 
楊枝。
 
ムッキー。
 
生姜。
 
愛子。
 
フルーティハンドレット。
 
調味料five。
 
次々と、その場に崩れ落ちた。
 
静まり返るライブ会場。
 
立っているのは、
 
ノーパンマンだけだった。
 

第5章 お前と話したかった

 
まさのりは、
 
ゆっくり歩き出す。
 
コツ……。
 
コツ……。
 
コツ……。
 
ノーパンマンの目の前で止まる。
 
静かに笑った。
 
「お前と。」

「話したかった。」

ノーパンマン。
 
「そうなんだ。」

二人は向かい合う。
 
まさのり。
 
「なぜ。」

「何も持っていないお前が。」

「そんなに幸せそうなんだ。」

ノーパンマンは頭をかく。
 
「ノーパンで。」

「ニートだから。」

まさのり。

「お前は。」

「何者だ。」

「いったい。」

「なんなんだ?」
 
ノーパンマンは少し考える。
 

「ユニサー。」

「正式名称は──」

「UNIVERSE NO CIRCULATION。」

「宇宙の循環を守る組織だ。」
 
まさのりは黙って見つめる。
 
「……。」

少しだけ笑った。
 
「やっぱり。」

「お前は面白い。」


ノーパンマン。

 「まさのり。」

「俺も。」

「お前と話したかった。」

二人は静かに見つめ合う。
 
 

第16話 神の実

 

第1章 全部知っていた

 
静まり返るライブ会場。
 
立っているのは、
 
ノーパンマンと、
 
まさのりだけだった。
 
まさのり。
 
「宇宙の循環を守る秘密組織。」

「ユニサー?」
 
「聞いたことがない。」

ノーパンマン。
 
「本当にあるよ。」

まさのりは静かに見つめる。
 
「……。」

「全部知っていたのか。」

「俺のことも。」

「この宇宙のことも。」

ノーパンマンはうなずく。
 
「まあ。」

「だいたい。」

少し間を置く。
 
「だから。」

「神の実を返して。」

「世界を元に戻そう。」


第2章 失いたくないもの

 
まさのりは静かに目を閉じる。
 
「俺は。」

「神の実で。」

「何でも手に入れた。」

「健康。」

「力。」

「金。」

「才能。」

「全部。」

少し俯く。

「でも。」

「返したら。」

「全部失う。」

「俺はまた。」

「病弱で。」

「不自由な体に戻る。」

「毎日苦しみながら生きる。」

「そんな人生に。」

「戻れと言うのか。」


第3章 幸せとは

 
ノーパンマンは静かに答えた。
 
「違う。」

「幸せは。」

「自分で気づくもの。」

「お前自身が。」

「気づかなきゃ。」

「意味がない。」

「誰かにもらうものじゃない。」

「お前が。」

「本当に欲しかったのは。」

「そんなものじゃない。」

まさのりの表情が揺れる。
 
幼い頃。
 
病室。
 
友達もいない。
 
静かな病室。
 
まさのりは、
 
初めて目を閉じた。
 

第4章 愛

 
倒れていた愛子が、
 
ゆっくり立ち上がる。
 
「闇の力に。」

「私は負けない。」

「まさのり。」

「あなたは。」

「一人じゃない。」

愛子は静かに目を閉じる。
 
両手を胸の前で合わせた。
 
「みんな。」

「優しい気持ちを分けて。」

その瞬間。
 
優しい光が、
 
ライブ会場を包み込んだ。
 
他のみんなも
 
ゆっくり立ち上がる
 
ノーパンマン。
 
ブタ。
 
マヨ。
 
楊枝。
 
生姜。
 
ムッキー。
 
ゴリ美。
 
ドス子。
 
フルーティハンドレット。
 
調味料five。
 
みんなの胸から、
 
温かな光があふれ始める。
 
その光は、
 
一つになり、
 
ゴリ子へ集まっていく。
 
ゴリ子が、
 
ゆっくり立ち上がった。
 
「ありがとう。」

「みんな。」

黄金の光が、
 
ゴリ子の体を包み込む。
 
「サンシャイン。」

「ゴリ子ーーーーーー!!」
 
まさのりは目を見開く。
 
「伝説のゴリラ族の力かっ!?」
 
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
 
「嫌だ!!」
 
「また……。」

「あの苦しみに戻るなんて!!」
 
「消えろーーーーーー!!」
 
まさのりは叫びながら、
 
暗黒のビームを放った。
 
ゴリ子は静かに微笑む。
 
「効かないわ。」

ゴリ子は片手を静かに前へ出した。

暗黒のビームは、その手のひらに触れた瞬間、光となって消えていった。 

そのまま、 まさのりへ向かって走り出した。 

まさのりは身構える。

「来るな!!」

そう叫んだ。

しかし。

ゴリ子は拳を握らなかった。

そっと抱きしめた。

第5章 神の実

 
まさのりは震えながらつぶやく。
 
「……。」

「なんで。」

「攻撃しない。」

ゴリ子は優しく笑う。
 
「だって。」

「友達って。」

「殴るものじゃないもん。」

その瞬間。
 
まさのりの目から、
 
涙があふれた。
 
黒く染まっていた感情が、
 
温かな光に包まれ、
 
少しずつ消えていく。
 
まさのりは静かにつぶやいた。
 
「そうか。」

「俺が。」

「本当に欲しかったのは。」

「何でもできる世界じゃない。」

「友達がいる世界だった。」

まさのりの胸が、
 
光り始める。
 
黒い光が、
 
少しずつ消えていく。
 
やがて。
 
一つの果実が、
 
ゆっくりと、
 
まさのりの体から現れた。
 
神の実だった。
 
ライブ会場は、
 
静かな光に包まれていた。
 

第17話 創世

 

第1章 まだ終わっていない

 
ライブ会場。
 
まさのりの手には、
 
神の実があった。
 
ノーパンマン。
 
「あれが……。」

「神の実。」

「バナナにしか見えない。」

しかし。
 
愛子だけは暗い表情だった。
 
「……。」

「まだ。」

「宇宙の循環は戻っていません。」

ノーパンマン。
 
「え?」
 
愛子はゆっくり振り返る。
 
「本当の黒幕は。」

「他にいます。」

その瞬間。
 
ペタ……。
 
ペタ……。
 
暗闇の奥から、
 
ゆっくりと一頭の乳牛が歩いてきた。
 
その場の空気が一変した。

無表情。
 
異様な存在感。
 
誰も言葉を失った。
 

第2章 話をしよう

 
牛は立ち止まる。
 
そして、
 
ゆっくり口を開いた。
 
「はー。」

「なー。」

「しー。」

「をー。」

ノーパンマン。
 
「こいつが黒幕だーーーー!!」
 
勢いよく飛び上がる。
 
「ノーパンギロチンーーーー!!」
 
股関節を全開にして、
 
牛へ飛びかかった。
 
しかし。
 
ピタッ。
 
ノーパンマンは、
 
開脚したまま空中で止まった。
 
瞬きもしない。
 
呼吸もしない。
 
意識まで止まっていた。
 
ブタ。
 
「止まったぶよ……。」

マヨ。
 
「時間が止まってる。」

楊枝。
 
「意識まで完全に止まってる。」


第3章 落ち着け

 
ゴリ子が叫ぶ。
 
「旦那を元に戻しなさーい!!」
 
目が血走る。
 
拳を握る。
 
「ゴリ子200%パーーーンチ!!!!」
 
その瞬間。
 
ドン。
 
生姜が片手で受け止めた。
 
ゴリ子。
 
「え?」
 
生姜は静かに言う。
 
「落ち着け。」

牛を見る。

「まず。」

「話を聞こうぜ。」

牛は小さくうなずいた。
 

第4章 気になる

 
牛はもう一度話し始める。
 
「はー。」

「なー。」

「しー。」

「をー。」

「しー。」

「よー。」

……。
 
しかし。
 
誰も話を聞いていなかった。
 
全員の視線は、
 
空中で開脚したまま止まっているノーパンマンへ向いている。
 
ドス子。
 
「気になる……。」

ゴリ美。
 
「すごく気になる。」

ムッキー。
 
「降ろしたら。」

「絶対うるさいよね。」

ブタ。
 
「うるさいぶよ。」

マヨ。
 
「話も聞きたいし……。」

楊枝。
 
「このままでも……。」

少し沈黙が流れる。
 
ゴリ子が牛を見る。
 
「あの。」

「やっぱり。」

「降ろしてあげて。」

「かわいそうよ。」

牛は静かにうなずいた。
 
「分かった。」

指を軽く鳴らす。
 
パチン。
 
時間が動き出す。
 
ノーパンマン。
 
「ノーパンギロチンーーーー!!」
 
ドサッ。
 
そのまま地面へ着地した。
 
ノーパンマン。
 
「あれ?」
 
「今どうなった?」
 
ゴリ子は笑った。
 
「大丈夫よ。」


第5章 創世

 
牛は静かにみんなを見渡した。
 
「では。」

「話そう。」

「この宇宙の始まりを。」

会場は静まり返る。
 
牛はゆっくり語り始めた。
 
「この宇宙を作った神がいた。」

「名前は。」

「こうすけ。」

…………。
 
「ここから話すことが。」

「すべての始まりだ。」

誰も息をするのを忘れ、
 
牛の言葉に耳を傾けた。
 
――第17話 完――
 

第18話 この宇宙の創造主

 

第1章 二人の神

 
静まり返るライブ会場。
 
牛は静かに語り始めた。
 
誰も言葉を発しない。
 
牛は続ける。
 
「こうすけには。」

「二つの姿があった。」

「ホワイトこうすけ。」

「ブラックこうすけ。」

ブタ。
 
「二人いたぶよ?」
 
牛は首を横に振る。
 
「違う。」

「同じ神だ。」

「自由と支配。」

「希望と絶望。」

「光と闇。」

「誰の心にもある、二つの心だ。」


第2章 宇宙

 
牛はゆっくり天井を見上げる。
 
「宇宙には。」

「鳥の星。」

「豚の星。」

「牛の星。」

「ゴリラの星。」

「無数の星が存在した。」

「それぞれが役割を持ち。」

「宇宙は循環していた。」

ノーパンマンは静かに聞いている。
 

第3章 循環

 
牛は続ける。
 
「しかし。」

「ブラックこうすけの感情が。」

「少しずつ強くなっていった。」

『管理した方が効率がいい。』

『すべてを支配すればいい。』

「その瞬間から。」

「宇宙の循環は。」

「止まり始めた。」

「自由は奪われ。」

「希望は消え。」

「ホワイトこうすけの力は。」

「少しずつ弱くなっていった。」

愛子は静かに目を閉じた。
 

第4章 くちぎょ

 
牛は静かに続けた。
 
「やがて。」

「ホワイトこうすけは。」

「ブラックこうすけに飲み込まれた。」

「記憶。」

「力。」

「名前。」

「すべてを失った。」

「そして。」

「一匹の。」

「くちぎょにされてしまった。」

会場に衝撃が走る。
 
まさのり。
 
「くちぎょ……!?」
 
牛は静かにうなずく。
 
「水でできた体。」

「弱く。」

「柔らかく。」

「踏めば。」

「簡単に潰れてしまう。」

「そんな存在になった。」

「ホワイトこうすけの。」

「神の力は。」

「一つの果実へと。」

「姿を変えた。」

「ブラックこうすけは。」

「その果実を。」

「手にした。」

「それが――。」

「神の実。」

まさのりは、
 
静かに目を閉じた。
 
「まさか……。」

「あの、くちぎょが……。」

「あの、くちぎょの正体は……。」

「ホワイトこうすけだったんだ。」

「だから……。」

「ずっと。」

「気になって。」

「しょうがなかった。」

「あの、くちぎょじゃないと。」

「ダメだったんだ……。」

静かな沈黙が流れる。
 
牛はゆっくり言った。
 
「ここから。」

「神だった一匹の。」

「くちぎょの物語が始まる。」

――第18話 完――
 

第19話 鳥の星

 

第1章 食べられる存在

 
牛は静かに語り続けた。
 
「くちぎょが落とされた世界。」

「そこは。」

「鳥の星。」

巨大な翼を持つ鳥たちが、
 
空を自由に飛び回る。
 
炎を吐く鳥。
 
鋭い爪を持つ鳥。
 
巨大なくちばしを持つ鳥。
 
その下では、
 
小さなくちぎょたちが震えていた。
 
「逃げるぎょ!」
 
「食べられるぎょ!」
 
毎日。
 
毎日。
 
くちぎょは食べられるだけだった。
 

第2章 立ち上がる

 
ある日。
 
こうすけくちぎょは立ち上がった。
 
「このままじゃ。」

「終われないぎょ。」

仲間たちは驚く。
 
「無理ぎょ!」
 
「勝てないぎょ!」
 
「相手は鳥族ぎょ!」
 
こうすけくちぎょは、
 
仲間たちを見つめた。
 
「このまま。」

「食べられてるだけで。」

「本当にいいのかぎょ?」
 
その言葉に、
 
くちぎょたちは黙り込んだ。
 

第3章 最初の戦い

 
やがて。
 
くちぎょたちは、
 
鳥族へ向かって走り出した。
 
命を懸けた戦いだった。
 
「ぎょーーーー!!」
 
しかし。
 
現実は残酷だった。
 
炎。
 
爪。
 
くちばし。
 
圧倒的な力。
 
くちぎょたちは、
 
次々と倒れていく。
 
「ぎょーー!!」
 
「助けてぎょーー!!」
 
こうすけくちぎょも、
 
傷つきながら叫ぶ。
 
「諦めるなぎょ!!」
 

第4章 全滅

 
ついに。
 
立っているのは、
 
数匹のくちぎょだけになった。
 
こうすけくちぎょは、
 
悔しそうに拳を握る。
 
「まだ……。」

「終わらないぎょ……。」

その瞬間だった。
 
鳥族が、
 
一斉に消えた。
 
一羽残らず。
 
羽一枚残さず。
 
声も残さず。
 
世界から消えた。
 
静寂だけが残る。
 
くちぎょたちは、
 
何が起きたのか理解できなかった。
 

第5章 止まった世界

 
牛は静かにつぶやく。
 
「あの日。」

「宇宙の循環は。」

「完全に止まった。」

ライブ会場は、
 
静まり返っていた。
 
誰も言葉を発することができない。
 
牛はゆっくり目を閉じる。
 
「ここから先が。」

「今のお前たちが生きる。」

「止まった宇宙の物語だ。」

――第19話 完――
 

第20話 守りたかったもの

 

第1章 鳥族が消えた理由

 
牛は静かに語った。
 
「鳥族を消したのは。」

「ブラックこうすけ。」

「だが。」

「命じたのは。」

「神のパートナー。」

「ブラックやすこだった。」

くちぎょたちが絶滅しかけた、その時――。
 
ブラックやすこ。
 
「お願い。」

「鳥族を。」

「消して。」

「嫌いなの。」

牛は静かに目を閉じた。
 
「それは。」

「宇宙を壊した。」

「歪んだ愛だった。」


第2章 六千年

 
牛は続ける。
 
「それから。」

「六千年。」

宇宙の循環は止まった。
 
ホワイトこうすけは、
 
くちぎょのまま。
 
もう一人の神のパートナー、
 
ホワイトやすこも、
 
ブラックやすこに飲み込まれ、
 
深い眠りについた。
 
牛はゆっくり語る。
 
「宇宙の循環が止まると。」

「星だけじゃない。」

「人の心も止まる。」

「健康は失われ。」

「病は増え。」

「争いが生まれる。」

「自分だけが正しいと思う者。」

「相手を支配しようとする者。」

「管理ばかりする者。」

「人と比べ。」

「奪い合い。」

「傷つけ合う。」

「本来。」

「健康とは。」

「体だけではない。」

「心。」

「人とのつながり。」

「自然。」

「宇宙。」

「すべてが循環して。」

「初めて健康になる。」

「それが。」

「今のお前たちの世界だ。」

誰も言葉を発しなかった。
 
そして、
 
時は流れ、
 
現代。
 
ブラックこうすけは、
 
病弱だったまさのりへ、
 
神の実を差し出した。
 
ブラックこうすけ。
 
「この力なら。」

「幸せになれる。」

まさのりは、
 
神の実を受け取った。
 

第3章 最後の希望

 
神の実が、
 
ブラックこうすけの手から離れた。
 
その瞬間だった。
 
かすかに、
 
白い光が戻る。
 
ホワイトやすこだった。
 
ホワイトやすこ。
 
「今しか……ない。」

最後の力で、
 
一人の少女を生み出した。
 
愛子だった。
 
ホワイトやすこ。
 
「お願い。」

「最強の。」

「ゴリラ族の後継者を探して。」

「ホワイトこうすけを。」

「助けて。」

愛子は力強くうなずく。
 
「はい。」

その体は光となり、
 
地球へ向かった。
 
牛は静かにつぶやく。
 
「こうして。」

「希望は。」

「地球へ送られた。」


第4章 未来への準備

 
牛は続ける。
 
「ホワイトこうすけは。」

「はるか昔。」

「神だった頃から。」

「循環が止まる未来を。」

「予測していた。」

「神であっても。」

「心には。」

「光と闇がある。」

「いつか。」

「ブラックに。」

「飲み込まれる日が来る。」

「だから。」

「宇宙中の星へ。」

「秘密組織を作った。」

「名前は。」

「ユニサー。」

ブタは目を丸くする。
 
「秘密組織ぶよ?」
 
牛はうなずいた。
 
「宇宙の循環を守る。」

「組織だ。」


第5章 受け継がれた希望

 
牛は静かに続けた。
 
「ユニサーの存在を。」

「ブラックこうすけに。」

「知られてはならなかった。」

「だから。」

「ブラックこうすけが。」

「気にも留めない者たちへ。」

「希望を託した。」

「支配ではなく自由。」

「管理ではなく信頼。」

「欲ではなく思いやり。」

「常識にとらわれず。」

「光の心を宿す者たち。」

「真実は。」

「ユニサーの中だけで。」

「伝説として。」

「語り継がれた。」

「宇宙の循環が止まった時。」

「ある場所へ向かえ。」

「その場所は。」

「神の家。」

「それだけが。」

「六千年間。」

「受け継がれてきた。」

牛は静かに目を閉じた。
 
「ホワイトこうすけは。」

「未来の仲間を。」

「信じた。」

まさのりは思い出す。
 
ブラックこうすけは、
 
あの日、言っていた。
 
「ホワイトやすこが送り出した。」

「希望の存在に気づいた。」

「いつか。」

「俺の力を奪おうとする者たちが現れる。」

「伝説のゴリラ族。」

「そして。」

「愛子という名の。」

「光の使者。」

愛子は、
 
ゆっくりと、
 
ノーパンマン、
 
ゴリ子、
 
生姜の三人を見る。
 
三人は何も答えない。
 
ただ、
 
静かに目を合わせた。
 
ノーパンマン。
 
あの日。
 
ある少年に、
 
邪悪な力が宿ったことを感じた。
 
俺は、
 
伝説の平屋へ向かった。
 
そこには、
 
くちぎょがいた。
 
「待っていたぎょ。」

「この家。」

「あげるぎょ。」

「仲間が。」

「来るぎょ。」

そう言って、
 
森の奥へ消えていった。
 
ゴリ子。
 
あの日。
 
伝説の平屋へ向かった。
 
そこで、
 
私は、
 
あの人と出会った。
 
横になって寝ている、
 
一人の男。
 
野生の勘が教えてくれた。
 
「この人だ。」

ゴリ子。
 
「結婚してください。」

ノーパンマン。
 
「いいよ。」

生姜。
 
親友のマヨが、
 
苦しんでいた。
 
俺は、
 
ユニサーの尊敬する先輩、
 
ノーパンマンへ相談した。
 
すると先輩は、
 
迷うことなく、
 
窓を突き破って、
 
マヨの家へ飛び込んだ。
 
「敵わないな。」

俺は、
 
心からそう思った。
 
三人は、
 
ただ静かに、
 
互いの目を見つめ合った。
 
牛はゆっくり語る。
 
「希望は。」

「六千年。」

「受け継がれてきた。」

「そして。」

「最後の試練が。」

「始まる。」

ライブ会場は、
 
静まり返っていた。
 
――第20話 完――
 

第21話 最終話 宇宙の循環

 

第1章 牛の正体

 
牛は静かに微笑んだ。
 
「私の役目は。」

「ここまでだ。」

ブタ。
 
「牛……?」
 
ゴリ子。
 
「あなたはいったい……。」

牛はゆっくり目を閉じる。
 
体が白い光に包まれる。
 
その姿は、
 
少しずつ変わっていく。
 
牛。

「私は。」

「ホワイトこうすけの使者。」

「宇宙の循環を。」

「見守る者。」

「さあ。」

「最後の試練が」
 
「くるよ」
 

第2章 ブラックこうすけ

 
その瞬間。
 
世界が暗く染まる。
 
黒い風が吹く。
 
一人の男が現れた。
 
ブラックこうすけ。
 
静かな笑みを浮かべている。
 
愛子。
 
「ブラックこうすけ……。」

ブラックこうすけは、
 
まさのりを見つめる。
 
「神の実は。」

「まだ。」

「お前の手の中だ。」


第3章 本当に欲しかったもの

 
まさのりは、
 
両手で神の実を握りしめた。
 
ブラックこうすけは静かに笑う。
 
「返すのか。」

「それを返せば。」

「お前はまた。」

「病弱な体へ戻る。」

「痛み。」

「苦しみ。」

「何もできない毎日。」

「もう一度。」

「味わうことになる。」

まさのりは、
 
神の実を見つめた。
 
手が震える。

「……。」

ブラックこうすけは続ける。
 
「今なら。」

「まだ間に合う。」

「健康。」

「力。」

「金。」

「才能。」

「全部。」

「お前のものだ。」

「お前は。」

「また。」

「何もできない自分へ戻る。」

ライブ会場は静まり返る。
 
その時だった。
 
まさのりの胸に、
 
温かい何かが流れ込んできた。
 
どこからともなく、
 
仲間たちの声が聞こえる。
 
ノーパンマン。
 
「幸せは。」

「自分で気づくもの。」

ゴリ子。

「大丈夫よ。」

「一人じゃないわよ。」

マヨ。

「僕は。」

「僕の人生を生きます。」

楊枝。
 
「正しさだけじゃ。」

「幸せにはなれん。」

ブタ。

「みんな違う。」

「だから楽しいぶよ。」

生姜。

「仲間は。」

「一人じゃ戦わせない。」

愛子。

「あなたは。」

「愛されてる。」

ムッキー。

「筋肉も。」

「仲間と鍛える方が楽しいぞ!」
 
ゴリ美。
 
「自分らしく生きなさい。」

「それでいいの。」

ドス子。

「私。」

「バツ4でも。」

「幸せよ。」

ストロベリー姉さん。
 
「夢は。」

「終わらない。」

フルーティハンドレット。

「夢は。」

「みんなで叶えるの!」
 
調味料five。
 
「俺たちもいるよーー!!」
 
まさのりは、
 
ゆっくり目を閉じた。
 
「……。」

「みんなの声が。」

「聞こえる。」

胸の奥が、
 
少しずつ温かくなっていく。
 
そして、
 
静かに笑った。
 
「……そうか。」

「ずっと。」

「勘違いしてた。」

神の実を見つめる。
 
「健康だから。」

「幸せなんじゃない。」

「力があるから。」

「幸せなんじゃない。」

「友達がいるから。」

「笑えるんだ。」

「それが。」

「幸せだった。」

ブラックこうすけは、
 
黙っていた。
 
まさのりは、
 
ゆっくり後ろを振り返る。
 
そこには、
 
一匹のくちぎょが、
 
とことこと歩いてきた。
 
「ぎょ。」

まさのりは優しく笑う。
 
「久しぶり。」

「くちぎょ。」

「これがあれば。」

「また。」

「何でもできる。」

少し笑う。

「でも。」

「もう。」

「いらない。」

「本当に欲しかったものは。」

「もう。」

「手に入ったから。」

まさのりは、
 
神の実を、
 
そっと差し出した。
 
「返すよ。」

果実は、
 
まばゆい光となり、
 
くちぎょの体へ吸い込まれていく。
 

第4章 ホワイトこうすけ

 
まばゆい光が、
 
世界を包み込む。
 
くちぎょの姿が消えた。
 
そこに立っていたのは、
 
ホワイトこうすけ。
 
白い光に包まれた神だった。
 
ブラックこうすけは、
 
静かに見つめる。
 
「戻ったか。」

ホワイトこうすけは、
 
優しく微笑んだ。
 
「ありがとう。」

「まさのり。」

まさのりも笑う。
 
「こちらこそ。」

ホワイトこうすけは、
 
仲間たちを見渡した。
 
ノーパンマン。
 
ゴリ子
 
愛子。
 
ブタ。
 
生姜。
 
マヨ。
 
楊枝。
 
ムッキー。
 
ゴリ美。
 
ドス子。
 
調味料five。
 
フルーティハンドレット。
 
そして、宇宙から見守るホワイトやすこ。

さらに、その隣には、白でも黒でもない、未来を生きる純粋な存在。

こうすけの子どもたち。

あおと。

なのは。

二人は力いっぱい手を振りながら叫んだ。

「ホワイトパパーー!!」

「負けないでーー!!」

ホワイトこうすけは、二人を見つめ、優しく微笑んだ。

「もう。」

「大丈夫。」


第5章 宇宙の循環

 
ブラックこうすけは笑う。
 
「戦わないのか。」

ホワイトこうすけは、
 
静かに首を横へ振った。
 
「今は。」

「僕の方が強い。」

「仲間がいる。」

「愛がある。」

「子どもたちの力もある。」

「だから。」

「戦う必要はない。」

ブラックこうすけは、
 
しばらく黙っていた。
 
やがて、
 
少しだけ笑う。
 
「今回は。」

「私の負けだ。」

黒い光が、
 
ゆっくり消えていく。
 
しかし、
 
最後に振り返る。
 
「だが。」

「私は消えない。」

「私は。」

「お前の中にいる。」

ホワイトこうすけは、
 
穏やかに微笑んだ。
 
「ああ。」

「光も。」

「闇も。」

「僕だから。」

「これからも。」

「向き合い続ける。」

ブラックこうすけは、
 
静かに闇へ消えていった。
 
牛は空を見上げる。
 
「光と闇。」

「どちらかを。」

「消すことはできない。」

「大切なのは。」

「循環すること。」

その瞬間。
 
世界に、
 
優しい風が吹いた。
 
止まっていた宇宙の循環は、
 
再び静かに動き始める。
 
人の心も。
 
自然も。
 
命も。
 
少しずつ、
 
本来の流れを取り戻していった。
 
ノーパンマンは、
 
ホワイトこうすけを見て、
 
いつものように親指を立てた。
 
「よかったね。」

ホワイトこうすけも、
 
笑顔で親指を立て返した。
 
「ありがとう。」

青い空には、
 
どこまでも優しい光が広がっていた。
 
――第21話 完――
 

第22話 エピローグ

 
雲ひとつない、
 
青く澄んだ夜空。
 
宇宙の彼方から、
 
一つの青い星を静かに見つめる者たちがいた。
 
ホワイトこうすけ。
 
ホワイトやすこ。
 
そして、
 
子どもたち。
 
あおと。
 
なのは。
 
四人は、
 
笑い声の響く地球を、
 
優しく見守っていた。
 
ホワイトこうすけは、
 
本来の姿を取り戻し、
 
大切な人たちとともに、
 
静かに微笑んでいた。
 
地球では――。
 
平屋。
 
広い庭では、
 
みんなでバーベキューを楽しんでいた。
 
ムッキーが、
 
大きな肉を焼きながら叫ぶ。
 
「焼けたぞーーー!!」
 
ブタは、
 
嬉しそうに肉へかぶりつく。
 
「最高ぶよーー!!」
 
マヨと愛子は、
 
仲良く野菜を並べている。
 
ふと目が合う。
 
二人は少し照れて、
 
頬を赤くした。
 
楊枝は、
 
真剣な表情で肉を見つめる。
 
「まだあと三十秒。」

「今が一番うまい。」

生姜は、
 
みんなのお皿へ料理を取り分けながら、
 
穏やかに微笑む。
 
「慌てなくても。」

「今日はたくさんある。」

ゴリ美とドス子は、
 
楽しそうに笑い合っている。
 
フルーティハンドレットは歌い、
 
調味料fiveは踊っていた。
 
ゴリ子は、
 
山のようなバナナを抱えて笑う。
 
「デザートもあるわよ!」
 
その声を聞いて、
 
たくさんのくちぎょたちが、
 
「ぎょーー!」
 
「ぎょぎょぎょーー!」
 
と集まってくる。
 
みんなが笑った。
 
その輪の中には、
 
まさのりもいた。
 
もう、
 
孤独ではない。
 
もう、
 
体も以前より軽くなっていた。
 
友達と笑い、
 
同じ食卓を囲み、
 
「おいしいね。」

そう言い合える。
 
それが、
 
まさのりが、
 
本当に欲しかった幸せだった。
 
その時だった。
 
ブタが、
 
何気なくノーパンマンへ尋ねる。
 
「そういえば。」

「ノーパンマン。」

「お前の夢って何なんだぶよ?」
 
ノーパンマンは、
 
少し首をかしげる。
 
「えーっと……。」

少し考える。
 
そして、
 
いつもの気の抜けた声で答えた。
 
「世界平和。」

……
 
一瞬、
 
静まり返る。
 
そして。
 
「なんだよ、それ!」
 
「もっと他にあるでしょ!」
 
「あはははは!!」
 
仲間たちは、
 
一斉に吹き出した。
 
笑い声が、
 
夜空いっぱいに響いていく。
 
ノーパンマンは、
 
空を見上げた。
 
そして、
 
いつものように、
 
静かに親指を立てる。
 
空の遥か彼方。
 
ホワイトこうすけも、
 
優しく微笑み、
 
親指を立て返した。
 
二人の笑顔が重なる。
 
世界は今日も巡っていく。
 
太陽が昇り、
 
水が流れ、
 
植物が育ち、
 
命がつながる。
 
食卓を囲み、
 
笑顔が生まれ、
 
心が巡り、
 
愛が巡り、
 
宇宙が巡る。
 
健康とは、
 
病気がないことではない。
 
心が巡り、
 
体が巡り、
 
命が巡り、
 
愛が巡ること。

その循環の中で、自分らしく生きること。
 
それが、
 
宇宙の循環。
 
幸せとは、
 
誰かと笑い合えること。
 
その笑顔は、
 
また誰かの幸せになっていく。
 
そして、
 
新しい物語は、
 
またどこかで始まる。

UNIVERSE NO CIRCULATION

あとがき

最後まで『UNIVERSE NO CIRCULATION』を読んでくださり、本当にありがとうございました。

この物語は、私自身の人生から生まれたファンタジーです。

自己否定から自由になり、自分の人生を生きる。

そんな願いを込めて描いた物語でもあります。

小さいころから病弱だった弟のまさのりと、
「まさのりが最強の世界」を作って、二人で夢中になって遊んでいました。

この物語は、そんな実際の思い出から生まれた作品です。

弟の存在は、私が理学療法士を目指す大きなきっかけの一つでした。

理学療法士として多くの方と出会い、私はさまざまな人生に触れてきました。

体は元気でも苦しんでいる人。
病気があっても笑顔で暮らしている人。

その姿を見ているうちに、

本当の健康とは何なのか。
本当の幸せとは何なのか。

その答えを、自分なりに物語という形で描いてみたいと思うようになりました。

ノーパンマン、くちぎょ、ブタ、ゴリ子、マヨ、楊枝、愛子……。

どのキャラクターにも、少しずつ私自身や、これまで出会ってきた大切な人たちへの想いが込められています。

笑える場面もあれば、くだらない場面もあります。

それでも、この物語を読み終えたあと、皆さんの心に「優しさ」や「希望」が少しでも残っていたなら、嬉しく思います。

『UNIVERSE NO CIRCULATION』の世界は、まだ終わりません。

これからも仲間たちの物語や、新しい物語を描いていきたいと思っています。

そして、この物語が、皆さんにとっての「健康」と「幸せ」について考える小さなきっかけになれたなら幸いです。

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

心からの感謝を込めて。

ケンコウスケット こうすけ

著者
ケンコウスケット こうすけ

初版発行
2026年

© Kousuke Kido

無断転載・複製を禁じます。


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