ワインよりビール。その理由は播州にある。
肉には赤、魚には白?
「肉には赤ワイン、魚には白ワイン。」
そう聞くたびに、僕は「本当にそうかな」と思ってしまいます。
もちろん、ワインは美味しい。フランスで飲むワインも、スペインで飲むワインも、その土地の料理と何百年もかけて育ってきたのでしょう。
現地で味わえば、最高の組み合わせだと思います。
でも、播州の和牛にはビールが飲みたくなる。
瀬戸内の新鮮な魚には、お茶かビールを選びたくなる。
最初は、ただの好みだと思っていました。
でも最近、その理由が少しわかった気がするのです。
味覚は、生まれ育った土地が育てるのだと。
播州の食卓で育った
僕は播州姫路で育ちました。播州では、お好み焼きにも焼きそばにも牛肉を入れる家庭が少なくありません。特に内町と呼ぶ姫路城の城下町では当たり前でした。
「にく」と言われて思い浮かぶのは、子どもの頃から牛肉でした。
鶏は「かしわ」、いわゆる廃鶏です。
豚肉は「ぶた」。僕らにとって「にく」といえば牛肉だったのです。
僕の記憶では、お好み焼きに豚肉が入り始めたのは中学生の頃だったでしょうか。
瀬戸内の魚を食べ、季節の野菜を食べ、イトメンのチャンポンめんを食べて育ちました。
大学時代に初めて、「イトメンは全国どこでも当たり前じゃない」と知ったくらいです。東京の友人は、実家から箱で送ってもらってました。
同じ姫路でも、北と南では食卓が違います。家庭によっても、ソース文化があり、醤油文化があります。
「美味しい」は、小さい頃からの毎日の食卓が育ててくれるものなのだと思います。
精肉店で教わったこと
大学時代、親友の家が営む精肉店でアルバイトをしていました。朝は枝肉を担いで冷蔵庫へ運び、店頭ではお客様に肉を販売する。
どの部位がどんな料理に向くのか。
脂の入り方で味がどう変わるのか。
どの部位がどんな料理に合うのか。
毎日のように肉に触れ、人と話をしながら、多くのことを学びました。
だから僕は、少しだけ肉にはうるさくなったのかもしれません。

播州では、美味しい和牛が身近にある
神戸牛は世界的なブランドです。
でも「神戸牛」という名前だからといって、神戸市だけで育った牛ではありません。
兵庫県各地で大切に育てられた但馬牛の中から、厳しい基準を満たしたものだけが神戸牛になります。
その基準に少しだけ届かなかった牛でも、驚くほど美味しい和牛はたくさんあります。播州では、それが身近です。
加古川の精肉店へ行けば、特選サーロインやシャトーブリアンが並んでいます。決して安い買い物ではありません。でも、「今日は少し贅沢をしよう」と思えば手が届く距離にあります。
30分ほど車を走らせれば、加古川の精肉店には見事なシャトーブリアンが並んでいます。
播州では、そんな贅沢が少しだけ身近です。
興味がある方は、一度店頭の商品をご覧になってみてください。
そんな環境で育てば、「美味しい肉」の基準が自然と高くなるのは当たり前なのかもしれません。
食べ歩いて、最後に帰る場所
仕事や旅行で、各地の鉄板焼きを楽しんできました。
大阪城を眺めながらいただく鉄板焼き。
一流ホテルならではのサービスとロケーション。
あの時間は、本当に贅沢です。
横浜の老舗鉄板焼き店でも、忘れられない出来事がありました。
「姫路から来ました」と話すと、担当してくださったシェフが笑って言いました。
「姫路の肉には負けますよ。こっちは場所代が大きいですからね。」
思わず笑ってしまいました。
でも、その言葉には、この仕事を長く続けてきた人だからこその実感が込められていたように思います。
東京でも、大阪でも、福岡でも、横浜でも、美味しい肉をいただきました。
それでも最後に帰ってくるのは播州です。
姫路には、僕が何度も通う小さな鉄板焼き店があります。
店名は書きません。
秘密にしておきたい店だからです。
派手さはありません。
コースでも1万円以下です。
でも、僕にとって一番美味しいシャトーブリアンは、その店にあります。

播州の和牛には、ビールが合う
「肉には赤ワイン。」そう言われても、僕はやっぱりビールを選びます。
播州の和牛は、それだけで完成していると思うからです。
繊細な脂の甘みと旨みを楽しみたい。
ビールは口の中をさっとリセットし、次の一口をまた美味しくしてくれます。
魚も同じです。瀬戸内で揚がったばかりの魚なら、僕はお茶かビールを選びます。
大好きな寿司屋には、マグロがありません。
瀬戸内の魚だけで十分美味しいからです。
実は日本酒もあまり得意ではありません。寿司屋でもビール、最後に熱いお茶を飲むと、「ああ、美味しかった」と思える。それが、僕の味覚です。
テロワールは、人の味覚にもある
これは、ワインが悪いという話ではありません。ワインにはテロワールがあります。土地が味を育てるという考え方です。
播州や鳥取で生まれた子牛が、他県で育ち、近江牛や松坂牛、佐賀牛や宮崎牛として出荷されることも少なくありません。
生まれた場所だけではなく、育った土地、水、飼料、そして育てる人。
そのすべてが、牛の味をつくっています。
僕は、人の味覚にもそのテロワールがあると思っています。
フランスにはフランスの味覚があります。
スペインにはスペインの味覚があります。
アメリカにも中国にもその土地で育てられた味覚があります。
そして、日本には日本の味覚があります。
もっと言えば、播州には播州の味覚があります。
繰り返しになりますが、
味覚は、
生まれつきではありません。毎日の食卓が育てるものだと。
食べログで評判の店へ行っても、「なんでここが…」と思うことがあります。友人に「絶対美味しいから!」と勧められても、「うーん…」となることもあります。
きっと、それはどちらが正しい、間違っているという話ではありません。
僕たちが「美味しい」と感じる基準は、それぞれ違うからです。
だから僕は、誰かが決めた「肉には赤、魚には白」「寿司には日本酒」という世間のルールより、自分の舌を信じたいのです。
僕の味覚は、播州で育った
ワインよりビール。その理由は、播州にあります。
僕の味覚は、日本の播州で育ったからです。
・・・・・
あなたの「美味しい」は、どこで育ちましたか?
世間の評判より、自分の舌を信じたい。
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