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十年一剣

『軽度の知的発達の遅れを伴う軽度の自閉スペクトラム症』
5歳の息子の診断名である。

その障害ゆえか、息子は小さな頃から不器用だった。
哺乳瓶からストローに切り替える時、ストローをかじるだけの息子を前に
「『吸う』ってどう教えたらいい?」
2歳の誕生日ではケーキに灯るろうそくを前に
「どうやって『吹く』って教える?」
と妻と一緒に頭を悩ませた。

この春から『年長さん』になった息子に
(何かスポーツをさせたい。不器用な息子でもできるスポーツはないか)
と考えた結果、思いついたのは私自身が長年続けてきた剣道だった。

礼法や体の動かし方が決まっていて、同じ動作を繰り返し繰り返し練習する剣道は、障害からくる集中力のなさや不器用さ、精神的な不安定さをカバーできるのではないか。

最初に見学に行った剣道教室では、息子のあまりの不器用さに指導の先生から「私たちはボランティアで教えているから、一人の子どもにだけ時間をかけられない」と遠回しに入会を断られた。

しかし、そんな息子にも剣道をするチャンスが与えられた。
事情を知って、なお受け入れてくれた置塩剣友会には感謝しかない。

息子の練習日は、剣道有段者なので私も指導補助として参加している。
不器用な子どもでも取り組みやすいように、練習法を工夫する。
『構え』『すり足』『素振り』一番最初に習う事だが、そこにたどり着くための努力が必要な子どももいる。

すり足の練習。足の前後・左右の間隔が一目で分かるようにマーカーを購入
足を『擦る』感覚は雑巾を使って覚えさせる
竹刀は、「右手が青、左手が赤」と色を塗ることでわかりやすく。

剣道教室では、普段の練習にうまく馴染めない子どもたちもいる。
そんな子どもたちが、楽しく遊びながら剣道の基礎的な動きが身につけられる『剣道あそび』を考えた。

布巾を落とさないように!構えた状態ですり足移動

練習が終わって
「楽しかった!」「また剣道行く!」
と笑顔で言う息子を見て、私も少し嬉しくなる。

君が父ちゃんの子どもとして生まれてきたから、剣道が「障害を乗り越えて生きていく力」を身につけさせてくれるものだと気づくことができた。

君と父ちゃんが始めた『剣道あそび』が、障害に悩んでいる子どもたちや、その家族たちの燈になるように少しずつ前に進んでいこう。

十年一剣

焦らなくていい。
時間をかけて磨きかけていこう。
君の道はまだ始まったばかり。


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