ZINE、リトルプレス、自費出版を書店で売りたい人のためのnote
※このnoteは、書店にZINEを置いて欲しい、または書店で販売したいと考えている方々に向けた内容です。ZINEの作り方など、具体的なHOW TOについては記載しておりませんので、ご了承ください。
※2021年に執筆したものですので、対応などが変わっている可能性があります。あらかじめご了承ください。
書店員として働いていると、ZINEやリトルプレス、自費出版物の取り扱いについて、問い合わせや持ち込みを受けることが非常に多くあります。
特に、売り込みが多い書店で働いていた元・書店員が、押さえておくと「ZINEを置いてもらえる確率が高くなる」「しっかりと目を通してもらえる確率が高くなる」といったポイントをお伝えしたいと思います。
小規模の個人店でも、大規模な書店でも、基本的に書店員の仕事は非常に多忙です。ZINEを取り扱っている古書店や独立系書店、中規模の新刊書店も例外ではなく、接客や品出し、事務作業の合間に、個人が作ったZINEの売り込みに対応し、店に合うかどうかを判断しています。
私自身も含めて、書店員の負担をできるだけ減らしたいと思っています。また、お断りの連絡や言葉を少なくすることで、お互いのコミュニケーションの齟齬を減らしたいという思いもあります。このnoteを通じて、その手助けができればと思い、執筆を決意しました。
ZINEやリトルプレスを書店に売り込む前に
前提条件:その出来上がった本は、お店に並ぶことを考えて作りましたか?
スーパーに行ったときを想像してみてください。
店頭に並ぶ野菜やフルーツには、大きさや色味など、ある程度の規格があり、見栄えが重要視されていることがわかります。
これは、一般的に流通する書籍に限らず、ZINEやリトルプレスなどにも同じことが言えると私は考えています。買う(読む・見る)動機となるものであり、青いトマトよりも真っ赤なトマトを手に取る行為と同じようなものです。
もちろん、農家の直売所のように、自分のオンラインストアで販売したり、文学フリマやZINEフェス、コミケ、アートブックフェアなどで本を手売りする場合は、見栄えや規格にこだわる必要はありません。その場合は、味で勝負すれば良いのです。
しかし、前提として販売を目的にするのであれば、書店に並ぶことを意識して作っていただきたいと思います。
デザインや製本、価格設定などについても十分に考慮することが大切です。どんなZINEや本が書店に並んでいるか、そして売り込む前に、作る前にしっかりと調べていただければと思います。
さらに、文章や写真、イラストなどがもちろん面白く、興味深く、楽しいものであることも、当たり前ですが非常に重要です。
そんな前提条件を踏まえて。
▶︎どんな本が売っているかお店で調べましたか?
どんなこともリサーチが大事。
どんなデザイン、どんな写真、どんな文章のものがお店で売られているのか、取り扱いしてもらってるのか。ZINEやリトルプレス、雑誌、書籍を調べるのは大事。
こんな本が作りたいな、ここ部分いいなっていうのが出てくるはずです。
▶︎いきなりZINEや本を作ってないですか?
ZINEを作りたい!って思う人はたくさんいると思うけど、やっぱり最初はいきなりZINEではなく、まずはデザインのベーシックの型を学んだり、ブログを書いてみたりと、スポーツと一緒でひたすらの練習しましょう!
A4サイズの1ページをデザインしたり、見開き2ページのものを作り徐々にステップアップしてくと、より伝わるもの、手に取ってもらえるもの、魅力的なものができると思います。
デザインソフトや印刷の基礎を学ぶのは大事です。
個人的には、デザイナーさんやデザインが出来る人にお願いするという手が1番いいと思います。
▶︎文字はちゃんと読みやすい?
いくらいい文章でも文字サイズが小さかったり、意図がないのに大きいものは読みにくいです。
また、写真の上に乗せた文字が色のせいで読めないことも多いので要注意。
▶︎文字はジャスティファイ(両端揃え)しています?
特にエッセイや小説などの読み物で重要なのは、文字の最後の端を揃える「ジャスティファイ」です。これができていない方が本当に多いのですが、せっかく内容が良いのに、読みづらくなってしまうことがあります。実際、よくあることです。
よければ、パワーポイント等で文字を左揃えと両端揃えで試してみてください。
見比べると、左揃えでは文字の最後がガタガタになってしまっているのに対して、両端揃えでは文字がきれいに整い、非常に読みやすく、また美しいことがわかります。デザイナーやDTP(デスクトップパブリッシング)をやっている方々は、これは当然行っていることですが、文章を作成し、読む上でも非常に重要なポイントです。
▶︎画像データはRGBからCMYKに変換した?色味調整もした?
写真集のZINEを持ってくる方にありがちなのが、画像データをレイアウトして印刷しただけのZINEを作ってくることです。
モニタで見ている時の色味(RGB)をそのまま印刷してしまうと、色味が悪くなってしまうことがあります。印刷用のCMYKに変換しておけば、色味が悪くなることは少なくなります。
さらに、写真が主役である写真集の場合は、CMYKに変換し、仮に印刷した後に、必ず色味を調整(色校正)していただきたいと思います。
加えて、写真集として仕上げるのであれば、紙や印刷方法、トリミング、レイアウトにもきちんとこだわって欲しいです!
▶売るだけの冊数を作りましたか?
売るとなったときに必要なのは、ある程度まとまった在庫です。
書店側がいざ置きたいと思っても、実際に「5冊しか作っていない」と言われると、「本当に売る気があって売り込みに来たのでしょうか?」と思わざるを得ません。
もし、しっかりと売ることを見越して制作するのであれば、最低でも50部程度は作っていただきたいと思います。(刷る冊数については色んな意見があるので、さまざま参考にしてみてください)
もちろん、最初は20部程度で、売れたら増刷という方法もありますが、初めから一定の在庫を用意しておくことが大切です。
書店の仕組みについて勉強しよう
書店、出版業界には独自のルールがあります。
ここで書くのは大変なので、内沼晋太郎さんの「これからの本屋読本」を読むと勉強になるので、ぜひ読んでいただきたいです。
ちなみにnoteで全部読めちゃいます。また、このPodcastもおすすめです。
◆掛け率とは?
小売や流通の世界では「掛け率」という言葉は非常に重要であり、必ずその意味を理解しておかなければなりません。
特に、本屋で本を売りたいと考えている方は、事前にこの言葉について知っておいていただきたいと思います。
簡単に言うと、「掛け率」とは、お店の利益と、商品の作り手・生産者の取り分の割合を指します。
例えば、「60%掛け(6掛け)」という場合、60:40の配分になります。
定価が1,000円(税抜)であれば、お店の利益が400円、制作者の利益が600円ということです。
また、掛け率とともに覚えておきたいのが『上代(じょうだい)』と『下代(げだい)』です。
上代:小売価格(お店で売る販売価格)
下代:卸値(1,000円の6掛けなら、600円)
この下代から、印刷費やデザイン費、配送費、梱包費などが賄われ、その後にようやく利益が出るということを考慮しながら、上代を決定することが重要です。
ちなみに、一般的な書店では、取次という仲卸業者を通して商品が並べられます。その取次経由の書籍の掛け率は約78%とされています。取次を通さない直接取引の場合の一般的な掛け率については、後ほど記載いたします。
◆委託販売 or 買切り(買取)販売とは?
ZINEやリトルプレスなど、直接著者や制作者から仕入れる書籍には、『委託販売』と『買切り販売』の2つの方法があります。
【委託販売とは】
一定期間販売をして、その期間の売れ数を報告してもらい、売上を清算してもらう販売方法。売れ残った本は、最終的に返本(返品)されます。
・委託メリット:
〔制作者側〕売れるかどうかで仕入れを迷っている場合は委託なら置いてもいいかなって思ってもらえる場合がある。多く発注してもらえることもある。
〔お店側〕返本でき、在庫として残るリスクがない。
・委託デメリット:
〔制作者側〕売れなかったら利益にならならない。
〔お店側〕ほぼない。在庫管理をして、売れ数の報告と精算が少し面倒。
【買切り販売】
仕入れ時に、買い取ってもらいお店の在庫として売り切れるまで販売してもらえる販売方法。
・買切りメリット:
〔制作者側〕最初に売上が立つ。返本されることがない。
〔お店側〕買切りの場合、掛け率が委託より好条件になることが多く、利益が増えます。
・買切りデメリット
〔制作者側〕一般的に、委託より5〜10%程度掛け率を下げて委託との差を出す必要がある。仕入れ数を様子見され、少ない数の発注になり展開が平積み、面陳列にならない可能性もあります。
〔お店側〕売れなかった場合、在庫になるリスクがあります。数年間売れ残った場合はロス計上して、破棄する可能性も。
◆委託/買切りの一般的な掛け率
前述の通り、取次から卸された一般的な書籍の掛け率は78%。書店の利益は約2割。
取次から卸された書籍は、一部の書籍/雑誌を除き返本な委託販売となっています。
その一方で、個人が作るZINEやリトルプレスの標準的な掛け率は以下の通りです。
・委託販売:60 〜 70%
・買切販売:50 〜 70%
委託/買切り関係なく、70%ないと書店としては利益少ないし、いくら良い本でも80%と言われると断ってしまうことも多いです。
なので、もし掛け率を決める際は、委託/買切りで5〜10%くらいの差をつけたり、注文冊数によって掛け率を優遇するなどしていくといいとでしょう。
◆送料と振込み手数料について
あまり気にしなくても良いが、頭に置いておきたいのが小さなお金の問題。
送料に関しては、発送元負担というケースが多いです。
お店に送る際は、制作者負担。お店から返本する際は、お店負担。
支払いの際の振込み手数料も、お店によって対応はまちまちだし、相談になると思うが、大きなところだと、制作者が振込み手数料を負担することになるケースがよくあります。
ここに関しても、取引をする際は事前にしっかりと確認をしましょう。
以上が、書店に売り込みをする前の事前知識となります。
ちゃんとした書籍を作り、知識を持ったらいざ売り込みをしてみよう!
書店にZINE、リトルプレスを売り込むには
▶︎アポなし持ち込みはNG? メール問い合わせがいい理由
自分の作った本が刷り上がった時、その熱量のまま書店に置いてもらおうと考える方が多いですが、まず本当にその書店に置いてもらえるかどうか、事前に問い合わせをすることが大切です。
メールで問い合わせをする方が良い理由は、掛け率や買い切りなどの取引条件をテキストで相手に提示できること、またPDFやJPEGデータなどを添付することで、書籍を見てもらうことができるからです。
さらに、メールでのやり取りは相手の時間を奪わず、効率的に進めることができます。
もちろん、実際の本を見てもらい、造本や手触りなどの質感を感じ取ってもらうことも大切ですが、コンテンツのクオリティについては、画面越しでも十分に判断してもらえる部分が多いです。
お店によっては、メールでのやり取りが進んだ後、実物を郵送してくださいとか、お店でお話をさせてください、といった形で話が広がることが多いです。
▶︎どうしても持ち込んで見てもらいたい場合は?
もしメールなどを送らずに直接持ち込みたい場合は、当日でも電話でアポを取ると良いでしょう。飛び込みで訪れると、仕入れの決裁者や担当者が不在で、アルバイトスタッフに預けることになり、そのまま終わってしまうことが多いです。その場合、どんな書籍かを説明する機会さえ得られません。
特に、お客さんが多い土日や、古書店の場合は買い付けで忙しい日などに飛び込みで訪れると、最初の印象がかなり悪くなることがあります。
せめて、訪れる前に「行ってもいいか」を確認するための電話を一度をするといいかもしれません。都合がいい、悪いがわかります。
▶︎営業資料を作ろう!資料に必要な内容は?
メールや電話でやり取りをし、見本誌を送ることになった場合にあると便利なのが、A4サイズ1枚の営業資料です。これがあると、本当に目を通してもらいやすく、PDF化してメールに添付することもできます。
以下の内容を盛り込むと良いでしょう。
ただし、あまり盛りだくさんにしすぎると相手が読みづらくなるので、目を通しやすい程度にまとめることが大切です。
・一般常識的な挨拶文、自己紹介
・取引条件(掛け率、委託or買切り)
・税抜販売価格
・どんな本なのかの概要
・作者、出版レーベルのプロフィール
・連絡先(メールアドレス、TELなど)
※この資料や添え状的なものに簡単でも一筆手書きでコメントが書かれていたら個人的には好感度爆上がりしていました。
▶︎見本誌は惜しみなく
見本誌は、自分をアピールする最大のチャンスです。
もし送っても良いと言われたのであれば、カラーコピーしたゲラではなく、書籍そのものを惜しみなく送りましょう。見本誌を送る際の認識として、大きな書店や郵送で見てもらう場合、送った書籍は返却されないと思った方が良いです。
特に売り込み数多く対応する店舗では、見たものを親切に返却することは非常に難しいです。
もし見本誌を返却してほしい場合は、返却用の切手と住所記載の封筒、または着払いの伝票を同封し、その旨をきちんと伝えましょう。
しかし、もし置いて欲しい書店があるのであれば、返却を気にせず見本誌はどんどん配ることをおすすめします。
送った見本誌は、置いてもらった場合にはサンプルとして店頭に出され、多くの人が手に取って読むことになります。その結果、あなたの本がより多くの人に届けられることになります。
▶︎売り込みは謙虚に
ZINEや写真集、作品集を作った方にありがちなのが、上から目線で自分の作品がいかに優れているのか、良いのかということを押し付けてくる態度です。自信があることは伝わりますが、なるべく謙虚であってほしいと思います。書店側も謙虚な態度で対応しますので、お互いに良い関係を築いていきましょう。
商品やお金のやり取りは気持ちよく行いたいですし、謙虚であることは本当に大切だと思います。
本を見て、本を知り、そしてそのお店のお客さんのことを最もよく理解しているのは、そのお店のスタッフであるということを忘れてはいけません。
最後に
色々と書きましたが、大事なのは「コンテンツ力」と「クオリティ」です。
優れた文章表現の本や、かっこいい写真集、これは!と思う画集、新しい感覚や緻密な取材・コンテンツを盛り込んだ雑誌、リトルプレスなどはお店側は置きたいと思います。
書店に積んである書籍や雑誌を真似しろとか、商業的に作れと言っているわけではありません。しかし、そこにはきちんとした体裁が必要です。
表現としての出版は、臆せずどんどん行って欲しいと思います。自主的な表現物が増えれば、出版業界や書店業界、さらには日本社会の雰囲気や空気も変わっていくと信じています。
このnoteを書こうと思った理由の一つは、自費出版の本をお店で取り扱ってもらうための情報があまりにも少ないと感じたからです。
実際に売り込みに来る方々からもよく言われます。「どうすれば良いのかわからない」と。また、自分も含めて書店員という職業に従事している人たちがもっと楽に仕事をできるようになれば良いと考えています。
そして、売り込みを断るという辛い瞬間を少なくするためにも、作り手たちが一度立ち返り、自分のZINEを見直して欲しいという想いを込めて、このnoteを書きました。
一冊の本になり、それがお店に並び、見知らぬ読者の元へと届くというのは、何にも代えがたい喜びです。ぜひ、興味があればZINEや書籍を作ってみて欲しいと思います。
ZINEに関する本
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