『きれいだね ―風のあと fragments―』が生まれるまで
『きれいだね ―風のあと fragments―』を読んでくださった皆さま、
本当にありがとうございます。
感想やメッセージをいただくたびに、
この物語についてもう少しだけ言葉にしてみたくなりました。
運と縁とタイミングが違えば、
この人と結婚してたかもしれない
──そう思わせる人があなたにもいませんか?
今の妻との結婚に後悔はない。
むしろ、この人生でよかったと心から思っている。
ただ、“もしも”を思い浮かべる日がある。
その想いは、恋ではなく、たぶん「感謝」に近い。
そんな感情の輪郭を、少しずつ描いていったのが
『きれいだね ―風のあと fragments―』という物語。
この関係をどう名付ければいいのか、ずっと分からなかった。
恋でもなく、友情とも少し違う。
ただ、相手の幸せを願う気持ちは、確かにそこにあった。
その想いを、誰かに説明しようとするたびに、
うまく言葉が見つからなかった。
けれど、言葉にできない想いほど、
人を静かに動かすのかもしれないと思う。
『きれいだね』という言葉には、
真偽のほどは分からないけれど、どこか“伝説のような温度”がある。
夏目漱石の「I love you」をそう訳した、という話を耳にしたとき、
本当かどうかよりも、その感性に強く惹かれた。
きれいな月を見たとき、
遠く離れた誰かと同じ空を共有できる──
いや、共有したいと願う気持ちがある。
心が動いた時も同じ。
その感覚は、きっと誰の心にも残っているものだと思う。
この物語を書きながら、
ようやく名前のない想いに、形を与えられた気がした。
誰かを想うということは、
言葉にできない時間を抱きしめることでもある。
『きれいだね』は、そんな時間の記録です。
触れずに愛した人たちの、
やさしさのあとをただ描きたかった。
もしまだ読まれていない方は、こちらからどうぞ。
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――
八軒
