POPMARTが直面する、「LABUBUの次」を生む難しさ | ヒットIPの呪い
ラブブの映画化がNetflixとの共同制作で決まっています。キャラクターIPとしてはひとつの頂点です。でもPop Martの株価は22%下落し、Bloombergは米国売上が前年比45%減少と報じました。投資家が見ているのは「ラブブの次がない」という一点です。
「ヒットIPの次は、良いデザインやクオリティさえ作れば生まれる」。そう思っている人は多いかもしれません。でもPop Martの5兆円消失は、それが構造的に間違いであることを証明しました。
なぜ、あれだけの成功を収めた会社から、次のヒットが出てこないのか。これはヒットIPを持つIPホルダーだからこそ生まれる「呪い」とでも呼ぶべき構造です。本記事ではこの問いを、歴史事例と構造分析から紐解きます。
自分のキャラクターを当てたい人も、当てたあとの人も、全員がぶつかる壁の話です。そして突破口もちゃんとあります。このnoteでは「エンタメビジネス実学」シリーズと題して、IPやキャラクター市場の構造を分解しています。ぜひフォローして他の記事も覗いてみてください。
1本目のヒットが、2本目を殺す
わたしがエンタメ企業でエンタメ事業を統括していたとき、この構造を内側から経験しました。
1本目のヒットが出ると、社内の空気が変わります。一番優秀な人材がそのIPに張り付く。予算もマーケティングリソースも集中します。経営会議でもその数字ばかりが話題になる。ROIが最も高い場所にリソースを寄せるのは、教科書通りの正解なんですよね。
でも、その正解を選んだ瞬間に、2本目を育てる環境が消えてしまいます。経験の浅いメンバー、少ない予算、社内の低い注目度。新しいIPが育つ条件の真逆が揃ってしまうんです。

Pop Martの数字がそれを証明しています。The Monsters(ラブブのファミリー)の売上比率は1年で23%から38%に跳ね上がりました。
2位のSkullpandaは35.4億元で、ラブブの4分の1しかありません。これは能力の差ではなく構造の差です。同じ店舗、同じブラインドボックス、同じ価格帯。ラブブの隣にSkullpandaが並んだら、お客さんはラブブを手に取ります。

ヒットIPの呪いの正体は、この「棚の引力」です。ヒットIPが棚を支配するほど、同じ棚に並ぶすべての新IPが「2番目」に見えてしまう構造です。あなたのキャラクターが1本当たったとき、あるいはこれから当てにいくとき、最初の問いは「何を作るか」ではなく「どの棚に置くか」です。この判断を間違えると、Pop Martと同じ罠にはまります。
この罠は、50年前から繰り返されている

Mattel(世界最大級のアメリカの玩具メーカー)のバービーが典型です。40年以上バービーが棚を支配した結果、社内で生まれたどの人形IPも「バービーの隣」で比較されて消えていきました。社外も同じです。

Hasbro(マテルと並びアメリカを代表する、世界最大級の玩具・ゲームおよびエンターテインメント企業)は1985年に対抗IPの「Jem」を投入しましたが、結局バービーと同じ玩具店の同じ棚に並んだ時点で勝敗は決まっていました。初動こそ好調だったものの、バービーの引力圏から抜け出せず2年で撤退しています。社内だろうが社外だろうが、棚が同じなら引力からは逃げられません。

Kodakはデジタルカメラを世界で初めて発明しました。1975年のことです。でもフィルム事業の売上を食うのが怖くて、自社の棚に置けなかった。社内では「フィルムの敵」とすら見なされていました。結果、デジカメという新しい棚はCanonやSonyに奪われ、Kodakは2012年に経営破綻します。

逆に、Appleだけが例外的にうまくやりました。cが絶頂期にiPhoneを出して、自らiPodを殺しています。ジョブズの判断は明快です。
「自分で自分を食わなければ、他の誰かに食われる」。
iPodチームの猛反発を押し切って、古い棚を壊してでも新しい棚を作ることを選んだ。
ここから読み取るべきことは明快です。自分のヒット作と同じ棚に新作を置こうとする限り、規模の大小を問わず全員がこの構造に巻き込まれます。個人クリエイターであっても、です。
「2番目」にならないための分岐点
ここで見落としてはいけないことがあります。

WakukuやToptoyのメイメイは、ラブブと同じブラインドボックス×ソフビフェイスのフォーマットで売れています。また、あの懐かしいモンチッチも、潮流に乗って人気が復活しているそうです。カテゴリが飽きられたわけではありません。Pop Martの「ブランドの棚」が詰まっているだけです。
Wakukuには過去のヒットIPの重力がないんですよね。だから新しいキャラクターが「1番目」としてスタートできる。Pop Martが新キャラを出すと「ラブブ級かどうか」で測られますが、Wakukuなら「これ何?」から始まります。
大手の棚が詰まっているときこそ、小さなプレイヤーにチャンスが来ます。ラブブがいないところで勝負すればいい。ただし条件があります。大手と同じ棚に乗りにいかないこと。自分だけの棚を最初から作ること。「市場が飽きた」と「あのブランドの棚が詰まった」はまったく別の話です。ここを混同すると、チャンスを見逃します。
棚の引力を突破する3つの戦略
では具体的に、自分のキャラクターIPを「誰かのヒットの隣」に置かずに育てるにはどうすればいいか。コレクティブルトイやキャラクターIPの文脈に絞って、3つの突破口を考えてみます。
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