『原神』の利益率59%。この化け物から何を盗むべきか
こんにちは!朝日けけ。です。
今日は、エンタメ業界で働くわたしたちにとって「目の上のたんこぶ」であり「憧れの頂点」でもある『原神』について書きたいと思います。
ゲーム業界に限らず、何かモノづくりをしている人なら一度は思ったことがあるはず。
「あいつら、どうなってんだ?」と。
6週間ごとに特大アップデート。クオリティは天井知らず。しかも基本無料。

これを見せつけられると、自分の仕事がちっぽけに見えてきますよね。
でもね、今回もいつも通り、「すごいね」で終わらせたくないんですよね。
この記事では、この怪物がなぜ生まれたのか。という問いについて、
その裏側にある「常識外れの仕組み」を解剖しながら解説していきます。
「6週間の奇跡」なんて魔法は存在しない
まず、誰もが驚くあの更新ペースについてお話しします。
6週間であの物量を作るなんて、普通に考えたら狂気の沙汰ですよね。「スタッフを不眠不休で働かせているに違いない」なんて噂も飛び交いました。
でも、現実はもっと冷静で、ある意味でもっと恐ろしいものだったんです。
実はあれ、6週間で作っているわけではないんですよね。
もっとずっと前から、数ヶ月、あるいは年単位で仕込まれたものが、たまたまそのタイミングで「着地」しているだけなんです。
わかりやすく言うと、回転寿司のようなもの。
目の前で皿が次々と流れてくるから「すごいスピードだ!」と感じる。でも厨房では何時間も前からネタを仕込み、シャリを炊き、複数の職人が分担して握り続けているわけです。
『原神』の場合、複数の開発チームが並行して動いています。
チームAが今のバージョンを作っている間に、チームBは次の次を、チームCはさらにその先を作っている。
あの6週間というサイクルは、スピード勝負の結果ではなく、超巨大なパイプライン管理の賜物なんですよね。
要するに、わたしたちが見ているのは「速さ」ではなく「段取り」の勝利。
これ、AI時代にも通じる話だと思いませんか?
Claude Codeが2025年にどんどん強化され、誰でも数週間でプロダクトを作れるようになりました。コードを書けなくても、アイデアがあれば形にできる時代です。
でも『原神』が教えてくれているのは、プロダクトを「作る」ことと「届け続ける」ことは別物だということ。
一発作って終わりじゃない。何年も先を見据えて、複数のラインを同時に走らせる。その段取り力こそが、持続的な差を生んでいるんだと思います。
ゲーム会社というより、もはや金融機関に近い
次に、お金の話をしますね。
miHoYo(原神を作っている会社)が儲かっているのは知っての通りですが、その中身がちょっと異常なんです。
利益率59%。
これ、ものすごくざっくり言うと、1000円売り上げたら590円が手元に残るということ。
一般的な製造業なら数%、IT企業でも20%あれば優良と言われる世界で、この数字はバグっていますよね。
しかも、よくある売上ランキングサイトの数字は、あくまでスマホ版だけの話。
PCやプレステでの課金を含めると、その規模はさらに膨れ上がります。あの『フォートナイト』と同じレベルの収益を上げているとも言われています。
ただの「人気ゲーム」ではありません。
もはや、潤沢な資金を運用して世界を動かす、巨大な金融システムのような側面すらあるんですよね。
わたしがエンタメ業界で働いていた頃、予算会議で「これだけの投資回収は可能なのか」という議論を何度もしてきました。
普通は、投資に見合ったリターンを慎重に計算する。失敗したら取り返しがつかないから。
でもmiHoYoは、その計算式自体が違うんです。稼いだお金を「守る」のではなく「燃やす」発想で動いている。
それが次のポイントです。
「安く使う」のではなく「高く買って、さらに突っ込む」
よくある誤解に「中国の人件費が安いからできるんだろ?」というものがあります。
これも大きな間違いなんですよね。
実は、彼らの給料はめちゃくちゃ高い。
上海のゲーム業界の平均に比べて、約2倍の給与を支払っているというデータもあります。
お金がない頃のわたしが聞いたら、
履歴書を送りつけていたかもしれません。
彼らがやっているのは「安く済ませる」ことではないんです。
「稼いだ莫大な利益を、惜しみなく人材と開発に再投資する」こと。
ガチャで得た利益を、会社の内部留保にするのではなく、次の「すごいもの」を作るための燃料として燃やし続けている。
この「再投資の覚悟」こそが、クオリティを維持し続ける本当のエンジンなんですよね。
日本のエンタメ企業でよく見る光景があります。
ヒット作が出ると、まず株主還元や内部留保の議論が始まる。「次も当たるかわからないから、リスクヘッジしよう」という発想になりがちですよね。
それ自体は間違っていない。でも結果として、次の大勝負に張れる資金が減っていく。
miHoYoは逆なんです。
ヒットしたら、さらに大きく張る。人材も開発費も、限界まで積み増す。
これは「勝者の戦略」なんですよね。
すでに勝っている側だからこそ取れるリスク。追いかける側には真似しづらい。
でもね、だからこそ考えるべきなのは「自分のスケールでの再投資」だと思うんです。
創業者は「ゲームの次」を見据えて去っていった
さらに驚くべきは、創業者の動きです。
『原神』を作った中心人物である蔡浩宇さんは、CEOを退任して新しい会社を作りました。

そこで何をしているかというと、AIなんですよね。
キャラクターとAIで対話する、まったく新しい体験を作ろうとしています。
これは、今の成功に安住していないことの現れだと思います。
技術を突き詰める「オタクの魂」と、会社を経営する「ビジネスの魂」を意図的に切り離し、それぞれが最大限に暴れられる環境を作ったわけです。
『原神』で満足せず、AIという未知の領域で、物語の作り方そのものを変えようとしている。
彼らの視線は、わたしたちが思っているよりずっと先の未来に向けられています。
これ、わたし自身もすごく考えさせられるんですよね。
会社員時代、目の前のプロジェクトを成功させることで精一杯でした。3年後、5年後のことなんて考える余裕がなかった。
でも蔡浩宇さんは、『原神』が絶好調のタイミングでCEOを降りたんです。
普通なら「もっと稼げるのに、なぜ?」と思うところですよね。でも彼の頭の中では、すでに次のゲームが始まっていたんだと思います。
プレイヤーの「当たり前」を壊してしまった罪
最後に、これが一番悩ましい点なんですが、『原神』はプレイヤーの基準を変えてしまいました。
「3ヶ月に1回のアップデート? 遅くない?」
そんなふうに感じるプレイヤーが増えてしまったんですよね。
かつては十分早かったはずのペースが、今では「怠慢」に見えてしまう。
これは、他のゲーム開発者にとってはたまったものではありません。
『原神』が作り上げた「6週間ごとに新しい世界が広がる」という体験が、業界全体のハードルを極限まで上げてしまった。
これ、ゲーム業界に限った話じゃないと思うんですよね。
NetflixやSpotifyが「いつでも好きなコンテンツを好きなだけ」という体験を作ったことで、テレビの視聴率は落ちました。
Amazonが翌日配送を当たり前にしたことで、「届くまで1週間」が許されなくなった。
圧倒的なプレイヤーが基準を塗り替えると、業界全体がその基準で戦わざるを得なくなるんですよね。
とはいえ、ここで絶望していても始まりません。
わたしたちは何を学ぶべきか
『原神』の凄さは、単なる運やお金の力だけではありません。
数年先を見越した計画、圧倒的な再投資、そして常に次を目指すハングリー精神。
それらが組み合わさった、極めて論理的な「戦略の勝利」なんですよね。
というわけで、わたしたちがここから学ぶべきは、彼らと同じ土俵で戦うことではありません。
まともに殴り合えば死にます。
そうではなく、彼らが「段取り」と「覚悟」で世界を変えたように、わたしたちも自分の規模感の中で、いかに賢く準備し、手持ちのリソースを一点突破で投資できるかを考えるべきだと思うんです。
AI時代、プロダクトは誰でも作れる。4週間で形になる。
でも『原神』との差は、プロダクトを作った後に生まれます。
何年も先を見据えたパイプライン。
稼いだお金を次に張る覚悟。
成功しても次のフィールドに移る決断力。
化け物を羨むのではなく、その思考回路を盗んで、自分の戦い方に活かす。
それが、持たざるわたしたちが生き残るための生存戦略なのだと思います。

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