【読書感想文】過ぎ去っては返らない人生の儚さを感じる絵本作品『あんなに あんなに』作・ヨシタケシンスケ
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ヨシタケシンスケさんの絵本作品。
「あのおもちゃが欲しい!」と駄々をこねていた男の子がいて、母親がしょうがないなぁと買ってあげたにもかかわらず、あんなに欲しいと言っていたおもちゃがすぐに飽きられてポイっと置かれていて、
あんなに ほしがっていたのに もう こんな
という母親のうちなる声であろう一文とともにこの絵本は始まる。
このような感じで、「あんなに○○だったのに 今はこうなった」という昔から現在への移り変わりが描かれている。
描かれているのは子供の成長だったり、母親自身の変わり方でもある。
一瞬で大きく成長していく子供の姿。
その成長とともに、いつの間にか老いている自分の姿。
あんなに楽しいこともあった。
あんなに辛いこともあった。
あんなに嬉しいこともあった。
あんなに悲しいこともあった。
「あんなに あんなに」というリフレインする言葉が、やがて人生を振り返るための前置詞のように思えてくる。
僕は昔、過去とは二種類あると思ったことがある。
過去とは、「過」ぎて「去」る、と書かれるが、その文字通り過ぎて去っていくものが一種類目の過去だ。
しかし、過ぎて去っていくものである過去のなかに、どうしてか絶対に過ぎて去っていかないものがある。
それは、思い出だったり、感覚だったり、感動だったり、言葉にできない類のものであったりするわけだが、全てが移り変わっていく世界のなかで、過ぎて去っていく全ての事象のなかで、過ぎ去らずに積もっていくものもまた、「過去」と呼んで然るべきなのだ。
過ぎ去っていく過去と、過ぎ去っては行かない過去の二種類の過去を抱えて、僕たちは今日という1日を生きている。
そして何気なく過ごしているこの1日は、過ぎて去っていく流れの一つでありながら、決して過ぎ去らない一瞬でもある。諸行は無常であるが、僕たちが存在しているという事実は誰にだって消し去ることのできない宇宙の歴史の一つのピースなのだ。
どうか、1日を大切に。
この1日を「ただの1日」だと思わずに。
「生きていることは あんなに かけがえのないものだったのに」
と死んでから思ってしまわないように。
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