半年間悩まされた耳の異常が一瞬で治った話
去年の夏、急に片方(右)の耳がおかしくなった。何か耳の奥がゴロゴロする。ちょうど水泳のあと、水が耳の中に入ってなかなか抜けないで残っている感じ。自分の声が頭蓋骨に響いているような感覚もある。それが朝起きてから数時間続く。
1週間経っても、10日経っても良くならず、放っておくわけにもいかないので、近くの耳鼻科に行った。
医師の診断では、鼓膜から外の部分には問題がなく、それより奥(耳管)に何か問題がありそうだ、ということだった。
最初に処方されたのは鼻水を抑える薬だったが、効果はなかった。それは私にも予想できた。最近、風邪をひいたこともなかったし、鼻水が出たこともなかったから。
症状は一向に改善せず、より長い時間続くようになった。
次にその耳鼻科クリニックに行くと、別の薬を処方された。すぐ近くにある処方箋受付の薬局で渡された薬は「加味帰脾湯(かみきひとう)」という漢方薬だった。
薬剤師はこの薬がどのようにこの病気に効くのか、説明しづらい様子だった。だが、私は納得していた。
それまでに、私は自分でも、この症状について調べていた。
ネットで自分の症状から当てはまる耳の病気を探していくと、「耳管狭窄症」と「耳管開放症」の二つがあった。どちらも症状は似ているのだが、「耳管開放症」には、ひとつ特徴的なところがあって、それは頭を低くすると、そうしている間は症状がおさまる、というものだ。
私の症状は、まさにそれだった。
先ほどの診察のときも、医師からそういう質問があったのだった。ただし、医師は、病名は何も言わなかった。
そして、「耳管開放症」の治療薬として「加味帰脾湯」があることも、私は調べて知っていた。「耳管開放症」の原因のひとつに「ストレス」があって、この薬はそれを和らげる効果があるらしい。
「加味帰脾湯」を服用し始めたが、効果はなかなか出なかった。漢方薬だから、即効性を期待できないのは、覚悟していたが。
寝ている間は、頭を低くしているからいいのだが、起きて動いていると、ずっと不快な状態が続く。また、聴力が少し落ちているような気もする。痛い病気ではないが、鬱々とした日々が続いた。
1カ月分の薬がなくなりかけ、またクリニックに行った。
症状が変わらないまま続いている旨、告げると、医師は前と同じ薬の処方箋を書く。症状から想定される病気(病名)の説明もなく、生活面でのアドバイスのようなものもない。この薬の服用を続け、様子を見る、というようなことだった。
これらは一年近く前の出来事である。
後になって思うのだが、どうして私は、診察のとき、自分の方から突っ込んで、いろいろ質問しなかったのだろう。
自分で「耳管開放症」と100%決めていて、あえて聞く必要もないと思ったからだろうか。
それもあったと思う。だが、それ以上に、医師とそういうやり取りをする雰囲気がなかった、というのが本音だ。
ここは駅前のビルの中にあるクリニック。
待合室がいつも混んでいるという程ではないが、患者は一定の間隔で途切れることなく来るようだった。
医師はセカセカした人ではないが、患者を捌くのを最優先にしている様子が見え隠れしていた。‥‥‥というのは、気の弱い私の思い込みだったのかもしれない。私が、ありもしない「無言のプレッシャー」を勝手に感じていただけなのかもしれない。どちらにしても、診察時間は、毎回、非常に短いものだった。
そのころ、私はこの「note」というものをよく知らずにいた。登録もしていなかったから、見たこともなかった。
今回、「note」で「耳管開放症」、「耳管狭窄症」を検索すると、多くの方が、このあまりよく聞くことのない病気に悩まされているのを知って驚かされた。中には、10年、20年とこの病気と闘っている方もおられるようだ。
当時、こういったことを知っていたら、もっと真剣にこの病気と向き合い、早めにこのクリニックに見切りをつけ、別の病院に赴いていただろう。
症状が軽くなることもなく、さらに1カ月が過ぎ、またクリニックに行った。耳の異常を感じてから、5カ月が経とうとしていた。
このころになると、私自身、薬をもらいに行くためにこのクリニックに行くという感じだった。‥‥‥そして、実際その通りだった。
診察室に入って、症状が変わらず続いている旨告げると、医者は、
「じゃあ、薬を続けましょう」
と言って、処方箋を書き始めた。そのまま診察が終わりそうだったので、私が、
「何か他の薬はないのですか」
と聞くと、医者は少し困った顔をして、
「他はないんですよ」
と言った。それで診察は終わった。名前を呼ばれて診察室に入ってから、出るまで30秒もかからなかっただろう。
階下の薬局で薬をもらった帰り道、これは治療というより、流れ作業だなと思った。そして、このクリニックに見切りをつける決心をした。
最後にこのクリニックに行ってから半年以上経った今、少し冷静になって振り返ると、物足りなく感じられたあの医師の対応は、人口の多い、患者の多い都市部の病院という性質上、仕方のない面も、多少はあったのかなと思う。
もちろん、「当たり外れ」はあるだろう。‥‥‥専門の医者でも、それぞれ得意分野、不得意分野というものは、程度の差はあれ、あるだろう。医者と患者の相性もある。そういったことを含めての「当たり外れ」という意味だが。
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