「守ってあげる」が支配に変わった夜の話(タツヤのこと)
「嫌だったら嫌って言えよ」って、あとになってタツヤに言われた。
でも言えなかったんだよ。それが全部だった。
タツヤの話を書く。元カレ②。23歳のときに付き合って、1年4ヶ月続いた。付き合いが長かったせいもあって、書くのをずっと後回しにしてたけど、今日は書けそうな気がするから書く。長くなるかも。
出会いは友人の紹介だった。共通の友達に「いい人がいる」って言われて、5人くらいで飲んだ夜に会った。背が高くて、体格がよくて、声が落ち着いてた。なんか、ちゃんとした大人の人だなって思ったのをおぼえてる。当時のわたしは上京して2年目で、お金もなくて、仕事もうまくいってなくて、毎日なんとなく不安だった。そういうときに「守ってあげる」って言われたら、そりゃ弱るよね。23歳のわたしは一瞬で弱った。
最初の半年は、本当によかった。仕事終わりに迎えに来てくれた。ご飯はいつも出してくれた。「大丈夫か」ってよく聞いてきた。寂しいときに電話したら出てくれた。あの頃のわたしには、それで十分すぎるくらいだった。
変わっていったのは、たぶん付き合って半年くらいから。
最初は小さなことだった。男友達とご飯に行くって言ったら「なんでそいつと?」ってなった。「心配してるだけだから」ってタツヤは言ってたし、わたしもそう思ってた。でも「心配」は少しずつ「禁止」になっていった。男の友達に連絡するのがだめになった。同期の男の子とランチに行っただけで、夜に1時間電話で詰められた。「おまえには俺しかいないだろ」って言葉を、最初はロマンチックなものとして受け取ってたわたしが、本当にバカだったと思う。
セックスのことも書く。
タツヤは最初、すごく丁寧だった。確認してくれたし、痛くないかって聞いてくれた。だから「この人は信頼できる」って思ってた。でも付き合いが長くなるにつれて、そういう丁寧さが消えていった。
あるとき、仕事でへとへとになって帰った日に、タツヤの家に泊まった。疲れてたし正直その気じゃなかった。「今日は眠い」って言ったのに、後ろから抱きつかれて、そのまま進もうとした。「ちょっと待って」って言ったら「大丈夫だから」って返ってきた。大丈夫って、わたしのせりふだよ。でも押し返す力もなくて、そのままになった。
体を押さえられたまま、腰を後ろから掴まれて、思ったより力が強くて驚いた。ゆっくり奥まで入ってきたとき、頭が白くなった。「嫌」とは言えなかったし、そのうち言えなくなった。彼のものが奥でどくどくしてる感覚があって、体が勝手に反応してた。それが一番混乱した。嫌だったのに、体の奥から熱くなっていく感じがして、気持ちいいのか怖いのかわからなかった。奥まで届くたびに、自分でも引くくらいびしょびしょになってて、声が漏れないように唇を噛んでた。
イってしまった。
それが一番嫌だった。体が正直すぎて、自分が情けなかった。気持ちよかったって思ってしまったことが、ずっと引っかかった。「嫌だった」って思いたかったのに、体が「嫌じゃなかった」って言うから。
終わって、タツヤは「よかった」みたいなことを言って、すぐ寝た。わたしはしばらく天井を見てた。なんか全部嫌になってた。でも泣けなかった。泣いたら余計ぐちゃぐちゃになる気がして。
ゴムはしてなかった。その頃はもう「しなくなってた」。最初はしてたのに、いつの間にかタツヤが「なしの方がいい」って言い出して、わたしも断れないまま流れた。断れなかったっていうより、もう断る気力がなかったのかもしれない。
後日、数万円貸したのもこの頃。「今月ちょっと足りなくて」って言われて、わたし自身も全然余裕がないのに断れなかった。渡したのは3万と2万の2回。返ってこなかった。当時のわたしの口座残高がいくらだったか想像してほしい。笑えない。
別れたのは、わたしが限界になってから。
同期の女の子に愚痴ったら「それって普通じゃなくない?」って言われて、初めて「あ、普通じゃないのかも」って気づいた。自分の中の「普通」がタツヤ基準になってたんだと思う。そこからLINEをブロックして終わらせた。手が震えてたかって聞かれたら、震えてたと思う。着信が来ることわかってたから、ブロックしてすぐ電源切った。
しばらく、知らない男の人と目が合うのが怖かった。電車でちょっと体が当たっただけで、ぞわってした時期があった。タツヤに似た体格の人がいると、動悸がした。あれはなんだったんだろう。今はもうそういうことはないけど、あの時期のわたしはかなりしんどかったと思う。
あの頃のわたし、23歳のわたし、本当にかわいそうだったな、と今なら言える。
でもあの経験がなかったら、タツヤみたいな人の「守ってあげる」が最初から怖く聞こえるようにもならなかったと思う。今のわたしは、付き合う前に「大丈夫か?」を多用する人をちょっと警戒する。
元カレシリーズ、次はカズさんの話を書きます。あの人の話はまた別の重さがある。
(続く)
