犬と、目が合う
すれ違う犬に、よく吠えられる。
それは、正直、嫌だ。
でも、たまに違う犬がいる。
じっと、こちらを見てくる犬。
吠えもせず、動きもせず、ただ見つめてくる。
そういう時は、見つめ返す。
不思議そうな目に、こちらも不思議そうな目で応える。
飼い主が困った顔で、リードを引く。
「すみません、こんなこと珍しくて」
それでも、犬は動かない。
見つめ合ったまま、しばらく時間が止まる。
見つめる犬もいれば、正反対の犬もいる。
大型犬は、遠慮がない。
同じ高さだからだろうか。まっすぐ、突進してくる。
これは、嫌いじゃない。
吠えられるのとは、何かが違う。
突進は、真っ向勝負のようなもの。
見つめ合いは、静かな挨拶のようなもの。
同じ「反応」でも、犬によって、こんなに違う。
人間同士では、ここまではっきり感じることは少ない。
犬とは、正直な分だけ、はっきり出る。
低いと、気づかれる。
低いと、試される。
低いと、たまに、見つめ合える。
たぶん犬にとって、車椅子は障害物じゃない。
ただの、低い、正直な相手。
