このnoteを始めた理由。転職を機に、長年の知識と経験をまとめておきたかった。
来月から、新しい環境でのスタートが決まっています。
転職、というやつです。これまで積み上げてきたものを一度区切りにして、新しい場所に立つ。そのタイミングで、ふと思ったことがありました。
「今までアパレルの現場で見て、感じて、考えてきたことを、どこかに残しておきたい」
それが、このnoteを始めた理由です。
「なんとなく」始まったアパレル人生
正直に言うと、最初からアパレルの仕事をしたかったわけではありませんでした。
なんとなく、流れで入った業界でした。きっかけは、音楽でした。中学生の頃に出会ったある音楽が、自分をブラックミュージックの世界に引き込み、そこから服への興味につながっていった——その詳しい経緯は、また機会があれば別の記事でじっくり書いてみたいと思っています。とにかく、音楽から始まった服への興味が、結局アパレル業界という現場に自分を運んでくれました。
「とりあえずやってみよう」くらいの気持ちで足を踏み入れた世界でした。明確な目標も、壮大なビジョンも、最初は何もありませんでした。
でも、結局そこにどっぷりはまってしまいました。
気づけば、生涯のキャリアになっていた
最初は「いつかは別の道に行くかもしれない」と思っていたはずです。それがいつの間にか、何年も、何十年も、この業界に身を置くことになっていました。
接客の現場に立ち、お客様と向き合い、トレンドの変化を肌で感じ、後輩を育て、シーズンごとに新しいアイテムと向き合う。その繰り返しの中で、いつしか「アパレルが自分の人生そのもの」になっていました。
なんとなく始めたはずの仕事が、生涯のキャリアになる。これは振り返ってみると、自分でも少し不思議な感覚です。
きっと、最初に好きになった「音楽からファッションへ」という原体験が、本物だったということなんだと思います。なんとなく始めたつもりでも、根っこには確かな興味と熱があった。だからこそ、ここまで続けてこられたんだと思います。
現場で積み重ねてきたもの
長年、現場に立ち続けてきて、自分の中に積み重なったものがあります。
お客様一人ひとりの体型や好みに合わせた提案の仕方。シーズンごとのトレンドの読み方。アパレル業界の裏側にある、あまり知られていない構造や事情。困った接客への対応の仕方。そして、ファッションというものが持つ、文化的な背景や歴史の深さ。
これらは、マニュアルに書いてあるようなものではありません。現場で何度も失敗し、お客様との会話の中で学び、長い時間をかけて自分の中に染み込んでいったものです。
こうした知識や経験は、自分一人の中だけに留めておくのは、なんだかもったいないような気がしていました。誰かの役に立つかもしれない。誰かのファッションへの興味を、もう少し深めるきっかけになるかもしれない。
そう思って、このnoteを始めました。
年齢的に、忘れていくことも増えてきた
もうひとつ、正直に書いておきたいことがあります。
年齢を重ねるにつれて、昔は当たり前に覚えていたはずのことを、少しずつ忘れていくようになりました。
このブランドが流行った時の空気感、あの頃のお客様とのやりとり、昔はすぐに出てきた素材の知識や歴史の細かい部分——以前なら何も考えずに口から出てきたことが、ふと「あれ、なんだったかな」と詰まる瞬間が増えてきています。
これは、決して悲観しているわけではありません。歳を重ねれば、誰にでも起こることだと思っています。ただ、忘れていくスピードよりも先に、自分の中にあるものを書き残しておきたい。そう思うようになったのも、このnoteを始めた大きな理由のひとつです。
記憶は、放っておくとどうしても薄れていきます。でも、文章として書き出してしまえば、それはもう自分の頭の中だけのものではなくなります。忘れてしまっても、また読み返せばいい。そう思えることが、地味ですが大きな安心材料になっています。
転職というタイミングだからこそ
転職を機にこのnoteを始めたのには、もうひとつ理由があります。
新しい環境に進む前に、今までの自分が持っていたものを、一度棚卸ししておきたかったんです。
長く同じ場所にいると、自分が積み重ねてきたものの大きさに、案外気づきにくくなります。当たり前にできていることが、実はそれなりの経験の蓄積だったりする。転職というタイミングは、そのことに気づく、ちょうどいい機会になりました。
棚卸しというのは、ただ並べて確認するだけの作業ではありません。何が本当に大事だったのか、何を次に持っていきたいのか、何はもう手放してもいいのか——そういう見直しの作業でもあります。文章にしてまとめていく中で、自分にとって譲れないものが、少しずつはっきりと見えてきました。
文章としてまとめていく作業の中で、自分自身も「自分はこんなことを考えてきたんだな」「こんな経験をしてきたんだな」と、改めて発見することがたくさんありました。アウトプットすることは、自分の頭の中を整理することでもあるんだと、このnoteを通じて実感しています。
この知識を、次世代に繋ぎたい
ここが、このnoteを続けている一番の理由です。
アパレル業界は今、決して簡単な状況にある業界ではありません。ファストファッションの台頭、ECサイトの普及、店舗での購買体験の変化——時代とともに、現場で必要とされる知識やスキルのあり方も変わってきています。
そんな中で、「日本のファッションを知る人間が、販売現場からいなくなっている」という危機感を、現場に立つ人間として強く感じています。
ファッションの歴史、ブランドの背景、素材や仕立ての知識、接客の本質——これらは、誰かが意識的に語り継がなければ、静かに失われていくものです。
このnoteに書いてきた一つひとつの記事は、決して大それたものではありません。でも、こうした小さな知識の蓄積が、次の世代のどこかの誰かに届いて、ファッションをもう少し深く楽しんでもらえるきっかけになったら——そう思いながら、ひとつひとつの記事を書いてきました。
服を売る職業ではなく、ファッションを伝える販売員でいたい
これは、自分がずっと大切にしてきた考え方です。
アパレルの仕事を「服を売る仕事」だと捉えると、どうしても数字や売上の話になっていきます。もちろんそれも仕事として大事な側面です。でも、それだけで終わってしまうと、なんだかこの仕事の本当の面白さを、見失ってしまうような気がしています。
服には、それぞれ背景があります。ブランドが生まれた経緯、デザイナーの思想、その時代の文化、素材が選ばれた理由。そうした背景を知って服を選ぶのと、何も知らずに選ぶのとでは、同じ一着でも、その服を着る意味がまったく違ってくると思っています。
だからこそ、自分は「服を売る人」ではなく「ファッションを伝える人」でありたいと、ずっと思ってきました。お客様に一着の服を売るだけでなく、その服が持つ背景や物語、着ることの楽しさを、少しでも伝えられたら。それが、自分なりの接客の在り方です。
このnoteも、その延長線上にあります。記事を読んでくれた誰かが、「そんな歴史があったんだ」「そういう意味があったんだ」と、ちょっとでもファッションを見る目が変わってくれたら、それ以上に嬉しいことはありません。
新しい環境へ、これまでの蓄積を持って
来月から、新しい環境でのスタートが始まります。
正直に言うと、まだまだ伝えたいことはたくさんあります。書きたいテーマも、話したい話も、まだまだ自分の中に残っています。
ただ、新しい仕事が始まれば、これまでのように記事を書く頻度は、どうしても下がってしまうと思います。それは少し寂しいことでもありますが、仕方のないことでもあると思っています。
それでも、ペースが落ちたとしても、このnoteを完全にやめるつもりはありません。気が向いたとき、時間が取れたときに、これまでと変わらない気持ちで、ひとつひとつの記事を書き続けていきたいと思っています。
場所は変わっても、自分の中にある「ファッションを伝えたい」という気持ちは変わりません。むしろ、このnoteを書き続けてきたことで、その気持ちはより強く、はっきりとしたものになった気がしています。
なんとなく始まったアパレル人生が、結局どっぷりはまって、生涯のキャリアになった。そしてその過程で積み重ねてきた知識や経験を、忘れてしまう前に、こうして文章という形で残し、誰かに届けることができている。
このことを、自分自身、とても誇らしく思っています。
これからも、このnoteを通じて、ファッションの面白さや奥深さを、できるだけ多くの方に伝えていきたいと思っています。新しい環境でも、変わらず「ファッションを伝える人」として、これからも歩いていくつもりです。
更新の頻度は今までより落ちてしまうかもしれませんが、気長に見守っていただけたら嬉しいです。
これまで記事を読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。これからも、よろしくお願いします。
